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コロナ禍デフレ、財政で穴埋めないと総需要戻らず

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【松尾立命館大教授に聞く】竹中・アトキンソンの中小企業淘汰に進むかも

公開日: 2020/09/24 (政治)

Reuters Reuters

角田 裕育 (ジャーナリスト)

 財政支出の重要性を強く提唱してきた松尾匡立命館大学教授に、アベノミクスとそれを継承するとしている菅政権の経済政策について聞いた。(聞き手は角田裕育)     

 ――アベノミクスを新自由主義とは一概に言えないと主張していますね。ケインズ型の政策だと。

松尾 1本目の矢、金融緩和政策はケインズ型だと思います。2本目の財政の拡張が途中から放たれなくなった。政府支出が抑えられていた。その点では、新自由主義的だし、消費税率を8%、さらには10%上げも強行しました。

 アベノミクスは色んな面がりありましたが、徐々に当初とは違う方向に向かった。後になるにつれ、新自由主義的な方向になった。

 アベノミクスが始まった初期の段階では、米国の経済学者のクルーグマンやスティグリッツが唱えたニューケイジアン的なもので、近年の欧米で強まってきた理論です。賃金も上げて物価を上昇させようとか。しかし、消費税を上げたことはそれとは違うわけですから、アベノミクスは中途半端なものです。

松尾匡立命館大学教授

 ――初期のアベノミクスはケインジアン的なものだったけど、後期アベノミクスは新自由主義的ということですか?

松尾 そういう風に言えますね。財政支出も抑えたりした時点で新自由主義的傾向が強まったと思います。現代のケインズ政策の肝の部分を実行していない。

 -―-第二次安倍政権が始まり、アベノミクスを開始してから、「株だけ上げてどうにもなるものか」と思いましたが、効用もあって高卒・大卒者の新規採用も改善された部分がありました。庶民層にもアベノミクスの恩恵を被った人はいました。

松尾 間違いなく、政府支出を最初に拡大したことで良くなった面はあったんですね。「世の中変わった感」を国民に与えたという。それで、「悪夢の民主党政権時代に戻りたくない」という気持ちを植え付けた。

 最初の1年間にガツンとやったと。それが作戦として意図的にそういう順番でやったのか、途中から財務省の力で出来なくなったのかわかりませんけれども、ともかく最初にやって経済浮揚させた作戦は当たったと思います。それで雇用などが改善したのは事実だったと思います。その後は基本的に金融緩和ですので、円安になって輸出は伸び貿易関連の下請け、孫請けもよくなった。

 ――先生は大学で教えていてどうでした? 学生の就職率が改善したとかありませんでした?

松尾 それはもちろんありましたよ(笑) リーマンショックの後の民主党政権時代と比べると、それは非常に楽になったという話で。

 ――正直、教員の側からすると何とか就職を教え子押し込みたいという気持ちがあると思いますが、ホットしたとことはありませんでした?

松尾 それはホッとしましたよ。もちろん。団塊の世代の退職の追い風もあるし、こんなもんかな? と思っていたけれど。

 ――実体経済はコロナの影響で、どう考えても不況です。失業者は増えるし、99%売り上げはなくなったという旅行会社もあるし、何故株価だけ上がるんでしょうか?

松尾 金をばら撒いているからですよ。良くなるという期待感もあるんでしょう。日本だけじゃなくて世界中でやってる話ですが、今株が上がってます。特にアメリカ。このアメリカの株が落ちてくるということになりますと、アメリカにいく資金の流れがなくなって、円高が一層進むかもしれません。今でもコロナ前より4円ぐらい円高ですが、こんなものではすまんだろうなと、そうなると日本の株も落ちることになります。更に景気は落ち込むことになります。

 ――松尾さんは、財政は実はヤバくないということですが。

松尾 ヤバくないです。MMTも普通のケイジアンも言ってるけど、国はお金を刷れる訳ですから。世の中にお金に溢れすぎると物価が上がって大変なことになっちゃうよ(ハイパーインフレーション)とか、円安になっていきますみたいな話ありますけど。今はむしろデフレで・・・。総需要が少なすぎるという状態ですよね。

 コロナが終わっても総需要は停滞したままでいきなり元には戻らない。「またこういうことが起きたらどうしよう」という不安から、貯蓄性向が高くなるでしょう。海外旅行をなかなかしないと思います。

 ーーコロナが終息しても需要は戻らない?

松尾 戻らないでしょうね。企業にしても、不安から設備投資をしないでしょうし。そういう気持ちにはあまりならないと思うんですよね。設備投資需要も少ない。そうするとデフレですよ。政府が沢山支出して埋め合わせれば、そうならないでしょうけど、それをやらなければ、デフレでしょうね。財政出動を十分にしなければ、財政破綻論者の人が考える事態とは正反対の事態にこれからなると思いますけど。

― 菅政権はそれに対してどう出てくるでしょうか? やはり緊縮にするのでしょうか?

松尾 選挙に負けても困りますから、その辺は彼のことですから下手を打たないように対処するのではないでしょうか。

 ただ、東京財団政策研究所(竹中平蔵氏等が歴代理事長)というところが、コロナを機に中小企業を淘汰・再編しようと言いました。これは菅さんのブレーンのデイビット・アトキソン氏も提唱したものです。手厚く保護して(中小企業が)また繁盛していくということは目指さないでしょうね。商店街とか潰れていくのは、大枠として容認すると。むしろ推進すると思います。

― ということは菅政権で失業率は上がるということでしょうか?

松尾 菅政権のせいと言いますか、倒産は今のとこ財政支出で食い止めていますが、何処かで息切れするだろうと。年末位に激増するのではないかというのが、元々言われていた話で、非正規の問題に対しても積極的に手を打たないですし。

― 菅政権は中小企業統廃合をやるでしょうか?

松尾 ご祝儀で支持率が高いうちに選挙をやって議席が安泰なら、世論を気にする必要はないですし、やるでしょう。

 ――松尾先生は日本の代表的なMMT(現代金融理論)論者と思われていますが、違うのですか?

松尾 MMTには金融政策に否定的であったりといった特異な特徴があるので私はMMTではありません。『図解入門ビジネス 最新MMT[現代貨幣理論]がよくわかる本』(望月慎著・秀和システム刊)という本が一番正確です。この著者の望月さんはMMT四天王と呼ばれる人たちの一人で、本業は医療関係者です。このMMT四天王というのは、ネットで活躍する人たちで、本業の経済学者ではないんです。この著作は私に依頼が来たのですが、彼を紹介しました。

 ――望月さんは経済学部に在籍したことはないのですか?

松尾 望月さんはありません。彼には立命館でも論文発表してもらったりしました。学者では大東文化大学の郡司大志教授が研究しています。京大の岡敏弘教授も好意的に研究していて、東京経済大学の岡本英男学長もですね。

 ――今の野党はヒステリックなアベノミクス批判をしているように思います。

松尾 世の中によくある議論は新自由主義派もリベラル派も共通していて、高度経済成長時代のシステムから変えなきゃいけませんよと、これは竹中さんやアトキンソン氏の主張ですし、財界の姿勢です。大衆消費向けの生産をしても日本ではそんなに売れないよ。海外で生産して日本に輸入しろと、日本では高付加価値を生み出せるものが残るのだと。リベラルの経済論客も実は殆ど同じことを言っています。新自由主義の人々が「ゾンビ企業は退場しなければないならない」というのとそっくりな議論をリベラル派の人がしています。

 ――海外移転して日本に輸入するというのは、ユニクロ等がしていることではないですか?

松尾 そうです。日本に生産拠点はいりません。商店街はいりませんと。アトキンソンさんの方針です。リベラル派でも問題設定の仕方が、高度成長時代のやり方から産業構造転換しなきゃいけないというのです。「ゾンビ企業は退場しなきゃいけない」というようなことを基本的に言ってます。そういう立場の人には、政府や日銀がお金を作って経済の苦境を救うことは、根本的解決を避けた弥縫策に見える。後でもっとひどいことになるぞと。アベノミクスにかぎらず、ケインズ政策がみんなそんなふうに見えるわけです。

 ――野党議員は勉強不足に見えます。昨年、先生をブレーンにれいわ新選組が出来ましたが・・・。

松尾 経済についてのご相談に乗っているだけの立場です。れい新にかぎらず、左派・リベラル誰にでも訴えてきたつもりです。山本太郎さんだけが聞いてくれた状態がつづいていましたが、昨年の参議院選挙から積極財政を共産党も言い出しましたし、国民民主党も言い出しました。石垣のり子さんが勝利した宮城選挙区が典型ですが、そうした経済政策を打ち出した選挙区は割と勝って、与党は改憲議席を確保できませんでした。少しは浸透したかなと思います。

 ――積極財政を打ち出したことが勝因と思うのですか?

松尾 接戦で野党が制した選挙区には、そういうところが多かったと思います。

■松尾 匡(まつお・ただす) 立命館大学経済学部教授 理論経済学専攻 日本では数少なくなったマルクス経済学派を堅持しつつ、近代経済学派等の研究にも力を注ぐ。著書に『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店)『ケインズの逆襲ハイエクの慧眼』(PHP新書)など。
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角田 裕育(ジャーナリスト)
1978年神戸市生まれ。大阪のコミュニティ紙記者を経て、2001年からフリー。労働問題・教育問題を得手としている。著書に『セブン-イレブンの真実』(日新報道)『教育委員会の真実』など。
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