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敵基地攻撃、日本の覚悟が問われる

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【編集長インタビュー】「統合幕僚長」を出版した河野前統合幕僚長に聞く

公開日: 2020/10/19 (政治)

撮影・桐島瞬 撮影・桐島瞬

 自衛隊統合幕僚長を過去最長の4年半務めて2019年4月に退官した河野克俊氏がこのほど『統合幕僚長 我がリーダーの心得』(WAC)を出版した。自身の46年の自衛隊人生を回顧したもので、かなり赤裸々に体験を書いている。自衛隊トップによる「自伝」は他になく、現代史的にも非常に興味深い。(聞き手はニュースソクラ編集長、土屋直也)

 
ーー定年延長を重ね4年半も続けた空前絶後の統合幕僚長と聞いていました。さぞエリートくさい話が並ぶのかと思ったら、ずいぶん率直で正直に書いておられますね。

 よいことばかり書いたのでは後輩の役にたたないと考えたからです。漁船と護衛艦あたごが衝突した事故に関しても、ナンバー2が目立ってはならないと、読みようによっては当時の上司批判ととれなくもない内容を記しました。これも教訓を生かしてもらえればという思いからです。

 じっさい私が海自の幕僚長のときの民間船との海難事故のときには指揮を私に集中させたことで、短期間で収拾することができました。

 ーーさぞやエリートと思いきや防衛大の不合格、そして補欠入学から自衛官人生が始まったと記してますね。

 補欠入学のうえ、身体検査でもはねられかけるという、2重の「不合格」からスタートしました。防衛大学1年時代に同級生からも「イモイモ」と言われ、要領が悪くて、無様だったことを書きました。スタート時に同じような悩みを抱える防衛大生や自衛官は少なくないと思うのです。そんなどん底からでも、統合幕僚長になることもあるのだということで、悩んでいる人には希望と自信を持ってもらいたかったのです。

 ーーご自身が変わったのは、司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」を読んでからだと。

 日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を破った連合艦隊参謀の秋山真之氏に憧れて、こんな軍人になれたらいいなという気持ちを抱くようになって、学業にも励めるようになりました。小説の後半の日露戦争部分より、前半の秋山参謀の成長過程に感化を受けたのです。

 もともと、乃木大将が旅順攻略に苦戦した無能な将軍として書かれていると聞かされて興味をもったのです。あの小説では乃木大将はそう描かれていて、そうなのかと思いましたが、自衛隊生活を経て、乃木大将への評価は変わります。いまでは、あそこまで兵士がついていったのだから、人格、識見ともすぐれた将軍だったに違いないと思うようになりました。

 参謀に憧れたのですが、いまは優れた指揮官を育てることこそ大切だと思っています。旧陸軍では参謀が暴走したのですから。

 ーー米国の海軍大学に留学されたときに書いた論文が最優秀賞を取ったのですね。

 留学前に、海幕防衛課に2度勤務し、米海軍との付き合いもでき、自分なりに日米同盟関係はこうあるべきだ、との考えを抱くようになりました。それを論文にしました。安倍政権で実現した安全保障法制を先取りするような内容で、日米の双務性を強化したいという趣旨でした。
 
 もし、現役自衛官がそういう考えをもっていると国内で騒がれたら、当時としては問題視されたかもしれない内容でした。あまりにも先走った内容でしたから。でも英語論文で国内には出回っていなかったので気づかれなかったかも知れません。米国が賞を与え認めてくれたのはうれしかったですね。

 ーー自衛艦旗である旭日旗をめぐって、韓国が国旗以外は掲揚するなと通告し、国際観艦式への参加を取りやめたことがありました。

 外務省のホームページには、いまでも「旭日旗は大漁旗や出産祝いにも使われる意匠だ」と、書かれています。自衛官としての自分はそんな言い訳を使うわけにはいかないと、「旭日旗は海上自衛官にとって誇りの旗であり、降ろすことは絶対にない」と話しました。
 
 我々は自衛隊の旗には常に敬礼してきています。これは国家への忠誠を示すもので、誇りなわけです。いまの日本では誇りと言う言葉が忘れさられているような気がします。

 ーー日韓の軍事面でのつながりはどう再構築していけばいいのでしょう。

 日米豪は連携をとっていますが、日豪間には軍事条約はありません。米国を介して豪とも協力関係が築かれています。韓国とも同様に、協力関係を築いていくのがいい。しかし、唯一の協定である日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は昨年11月に切れるところが、韓国側が米国に言われたこともあって止めるのを停止するとしている状態です。

 いつでも切れるのだという立場ですから実質的にはないも同然です。いまの政権が続いている限りは、再構築への動きは簡単ではないでしょう。

 ーー日中の軍事関係も緊張含みですね。

 ミサイル・核兵器の開発を止めない北朝鮮にも問題はあるのですが、中長期的にみて、日本にとって最大の脅威は中国です。中国は南シナ海、東シナ海での海洋進出が顕著なわけですから。そんななかでも防衛交流ができるといいし、信頼醸成の努力は重ねるべきですが、なかなか難しいでしょう。

 ーー中国を抑止できる防衛力を備えるべきですか。それはどんな中身になるのでしょう。

 防衛力整備というより、米国との同盟をがっちり組んで中国に対抗していくというのが基本です。中国が一番恐れているのは米国の軍事力なわけですから。

 ーー日本の防衛力の中身も空や海が中心にならざる得ないのではないですか。

 いままでは、どうしても陸海空の3つのなかでシェアが固定されていましたが、これからはどういう戦いが想定されるのか、実戦を想して配分を考えていかなければならない。その動きは始まっています。

 ーー敵基地への先制攻撃論に関して年内に一定の結論を出すよう9月11日に安倍首相(当時)が談話を残していったわけですが。

 防衛の常識論として専守防衛では守る力は弱くなる、場合によっては攻撃する能力も必要だと私は思いますが、敵基地攻撃の議論をするほどの覚悟があるのか、日本はまだそこまでの覚悟はできていないのではないか、とは思います。

 敵基地攻撃とは単にミサイルを装備すれば済む話ではなく、敵の情勢に関する情報力を備える必要があります。宇宙も含めた偵察能力やサイバー戦にも備えた力を持たなければなりませんが、そうした準備は一切手がついていないのです。そこまで行くにはカネも時間もまだまだかかるでしょう。

 ーー河野前防衛相は、米英豪加などの5アイズに加わることを検討すべきだと言いましたが。
 
 その枠組みに加わるとしたら、いいとこどりは許されません。「いざ」という時に備えるという覚悟が戦後の日本にはまだないといったら、叱られますかね。

土屋 直也 (ニュースソクラ編集長)

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土屋 直也(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
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