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アベノミクスは「選挙に勝てる政策の羅列」

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【自著を語る】『強権の経済政策』の軽部謙介元時事通信解説委員長(帝京大学教授)に聞く

公開日: 2020/07/06 (政治)

【自著を語る】『強権の経済政策』の軽部謙介元時事通信解説委員長(帝京大学教授)に聞く

土屋 直也 (ニュースソクラ編集長)

 明治以来で最長の政権を維持している安倍首相だが、新型コロナへの対応の切れの悪さといくつものスキャンダルで、政界ではポスト安倍の動きが活発だ。

 そんななか、安倍政権の経済政策を改めて問う『ドキュメント強権の経済政策ーー官僚たちのアベノミクス2』(岩波新書、税込946円)が6月19日に出版された。著者の元時事通信解説委員長で今春から帝京大学教授を務める軽部謙介氏に「アベノミクス」への評価を聞いた。(聞き手はニュースソクラ編集長、土屋直也)

岩波新書、税込1397円、2018年2月刊

 ――2018年の『官僚たちのアベノミクス――異形の経済政策はいかに作られたか 』(岩波新書)の続編と言える新著を出されました。一番気になったのは、第三章の最後にアベノミクスが新自由主義的にみえるが、安倍首相は「瑞穂の国の資本主義」と別のものと主張していると紹介しているところです。

 そこは、執筆する上で一番悩んだところで、アベノミクスの性格がわからないのです。そこで紹介した自民党議員が言うように、金融政策などは新自由主義に基づくマネタリズムにみえますが、賃金引き上げを半ば強制的に企業に求めた点などを安倍首相自身が「(これらは)瑞穂の国の資本主義だ」と語っています。

 政策的にはこれは、リベラルな政策なわけですが、安倍さんは「美しい日本」を唱え、リベラルなわけではないとも主張しています。

 結局のところアベノミクスに柱になる考え方はなく、単純に選挙に勝てる政策を選び取っている究極のポピュリズム経済政策とも受け取れます。政権発足当初に唱えたインフレ率2%などはまったく言わなくなっていますね。

――岩盤規制を打ち砕くなどというところは新自由主義そのものですが。

 「瑞穂の国の資本主義」を主張するなら、それは規制緩和とは逆の方向を示さねばならないはずです。しかし、同時に首相は「岩盤規制を打ち砕くドリルの刃となる」という。
 
 農業についても、日米交渉の結果、牛肉、豚肉を一段と自由化した。農業を見捨てているようで、瑞穂の国の資本主義には思えないのですが。

――本書の冒頭にある福井元日銀総裁が、麻生財務相と会う場面は印象的です。黒田日銀総裁の再任問題について、再任でないなら中曽副総裁の昇格を、再任なら副総裁に中曽氏を留任させよと伝える場面ですね。
 そうした動きが書かれたのは初めてだと思います。福井さんに象徴される日銀OBの多くが雨宮副総裁(当時は理事)にそこまで批判的だったのかと改めて思いました。本当は元財務省の本田さんの総裁就任を阻止するのが狙いだったのでは。

 福井さんは中曽さんが辞めたがっていることも知ったうえで、麻生さんに会っているのだと思います。3年後に黒田さんの任期が来た時に中曽さんは総裁候補として改めて取り沙汰されるでしょう。

――私は福井さんのように柔軟に状況に合わせて政策を変える行政官的な日銀マンと白川さんや山口泰元副総裁のように経済理論に基づく正しい政策を打つということにこだわるエコノミスト派の二つの流れがあって、雨宮さんの手法は福井さんに近いと思っていたのですが。

 私は雨宮氏は両生類でどちらの顔も持っているように思います。OBのなかにも白川さんの下で副総裁だった山口広秀氏のように雨宮さんを評価するひともいます。雨宮さんは3年後の総裁候補の一人になるでしょうから、その資質を問う「雨宮論」をすることは有意義なことに思えます。

――香川財務事務次官が安倍政権が消費税を見送った時に「抗議の辞任をしようかな」と奥さんにメールする場面も印象的でした。

 この本にも書きましたが、彼は英国のチャタムハウス( 王立国際問題研究所)に赴任した後、1997年ごろですが英国流の統治論を論文にまとめます。脱稿したすぐあと、読んでくれないと渡されたことがありました。

 内容は一言でいえば、官邸強化による政治主導の提唱で、当時の感覚で言えば小沢一郎さんが主導していた政治改革でした。彼自身、小沢さんに非常に近かったのです。

 彼が提唱した政治主導が安倍一強を生み出したのに、財務省の事務方トップに立ったときに彼はその制度によって消費税率引き上げ見送りという形で負けます。その無常な感じを紹介しておきたかったのです。

 香川氏が亡くなる1か月ほど前、次官を退任する2,3日前に次官室で彼に会いました。もう立っているのも大変というような容体で、その後すぐに入院しますが、励ますつもりでまた飲み会やろうよというと「生きていたらね」と。そこまで体調が悪いのにそんな返しをする。ユーモアがありました。

――アベノミクスを語る際、政権に対する官僚の忖度の激しさも見逃せないのでは、それで内閣人事局に多くのページを割いたのですか。

 政策遂行力を考える上で内閣人事局がどんな経緯で成立したかを書き残す必要性は感じていました。ただ、忖度は安倍政権以前からあったし、むしろ忖度できてこその官僚だった。また、内閣人事局があったとしても弱い政権なら使いこなせなかったでしょう。

ーー新型コロナウイルス対策で財政が急膨張していますがどう評価していますか。

 日銀は無制限の国債引き受けを宣言し、第二、第三の補正予算、追加の経済対策がまだまだ必要でしょう。問題は経済がある程度正常化したときに、財政再建をどう考えるか。

 10万円を全員に配ったわけですが、必要なかった人をいるでしょう。所得や資産の多い人にまで配る必要はなかったので、事後的に税をかけるなどで戻す仕組みを検討する必要はあるように思います。

 自民党内にもMMT(現代金融理論、財政の膨張を正当化する理論)を信奉する議員グループが誕生し、財政はさらに膨張しやすい状況が出現しています。際限なく財政を膨らませてそれが永遠に続けられると考えるのは安易です。

 気になるのは、新型コロナウイルスによる大不況で、アベノミクスが成功したのか失敗したのか覆い隠されてしまうだろうということです。後から振り返ってアベノミクスは何だったのか、きわめてあいまいな評価になってしまうような気がします。

■軽部謙介(かるべ・けんすけ)1955年生まれ、79年早大卒、時事通信入社。那覇支局、経済部、ワシントン特派員、解説委員長などを経て、2020年4月より帝京大学経済学部教授。著書に「日米コメ交渉」(中公新書、農業ジャーナリスト賞受賞)「検証・経済失政」(岩波書店、共著)「ドキュメント ゼロ金利」(岩波書店)など。
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土屋 直也(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
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