菅内閣の支持率低下が止まらない。
8月28日に行われた毎日新聞の世論調査によると、内閣支持率は26(−4)%で、政権発足以来最低である。不支持率も66(+4)%と支持率よりも40%も高い。
政府のコロナ対策については、「評価する」が14(−5)%、「評価しない」が70(+7)%である。
医療崩壊への不安については、「不安だ」が70(+3)%、「不安はない」が15(−3)%、「どちらとも言えない」が14(±0)%である。
緊急事態宣言の感染防止効果については、「効果あり」が16(−2)%、「効果なし」が64(−1)%、「どちらとも言えない」が20(+3)%である。
政党支持率については、自民党が26(−2)%、立憲民主党が10(±0)%、無党派が42(+3)%である。
かつて参議院自民党の青木幹事長は「内閣支持率と自民党支持率の合計が50%を切ると政権はもたない」と言った。「青木の法則」と呼ばれるものであるが、この世論調査の結果では26+26で52%である。つまり、あと2%下がれば、菅政権退場の号砲が鳴ることになる。
その他のメディアの世論調査でも、内閣支持率は政権発足以来の最低を更新し続けている。自民党総裁選は、9月17日告示、29日投開票で日程が決まったが、菅政権の不振を受けて、来たるべき衆議院選挙では菅首相では戦えないという声が党内で高まっている。
毎日新聞の世論調査で、次の衆議院選比例区の投票先を訪ねたところ、自民党が24%、公明党が4%、立憲民主党が14%、共産党が6%、日本維新の会が8%、国民民主党が2%、社民党が1%、れいわ新撰組が2%、「まだ決めていない」が37%である。浮動層の37%の投票動向次第では、政権交代も可能な数字である。
自民党議員は選挙区に戻ると、コロナ対策をはじめとして菅首相の評判が良くないのに愕然としている。
そのような空気を察して岸田文雄前政調会長が立候補を表明した。菅vs岸田の一騎打ちとなれば、党員・党友票が岸田に流れて、菅が敗北する可能性もある。
岸田が会長を務める派閥、宏池会では、林芳正が総理の座を狙うために、参議院から衆議院に鞍替えしようとしている。その試みが成功すると、岸田から会長が林に交代する可能性があり、岸田にとっては、今回が最後のチャンスとも言えるのである。
高市早苗前総務大臣も立候補の意向を示しているが、先ずは20人の推薦人を集めることができるかどうかが問題である。岸田に加えて第3の候補が出てくれば、対抗馬が競合して、菅が漁夫の利を得ることになる。そこで、菅陣営が推薦人を第3の候補に融通するということも考えられる。
石破茂はまだ態度を明確にしていないが、世論調査では国民の人気は高い。しかし、総裁選で敗北を重ねており、軽々に出馬すると、「勝てない候補」というイメージが定着してしまう。そこで、石破出馬に期待する声が巷間で澎湃として起こってくるのを待っているのである。
石破の弱点は党内で人望がなく、自らの派閥だけでは20人の推薦人を集められないことである。ただ、石破出馬となれば、少なくとも党員・党友レベルでは菅・岸田・石破の三つ巴の戦いとなり、国会議員のみによる決選投票となったときには、その結果にも影響を与えるであろう。
二階幹事長が早々と菅支持を表明したが、それが決定的な意味を持つものではない。二階、安倍前首相、麻生財務大臣が菅内閣の製造責任者であるが、菅内閣支持率の低迷が続けば、「菅では衆議院選は戦えない」という党内の多数の声に抗うことはできなくなる。
アフガニスタンへの自衛隊機の派遣も遅すぎた。邦人やアフガン人の協力者を全員救出する前に米軍が撤退してしまう。その後はどうなるか、皆目見当がつかない。コロナ対策で手一杯で、菅首相にはアフガニスタンのことなど考える余裕もないのであろう。
コロナ対策やワクチン接種も思うように進まず、国民の不満は高まっている。菅内閣支持率が上昇する材料がないのである。東京都などを対象とする緊急事態宣言は、期限の9月12日までに解除される見通しは立っていない。緊急事態宣言下の総裁選になるかもしれない。
総裁選の行方は、ますます見通せないものとなっていく。
あと支持率2%ダウンで菅政権退場のサイン |
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【舛添要一が語る世界と日本(105)】菅不人気に愕然とする自民 菅vs岸田の一騎打ちなら菅敗北も
公開日:
(政治)
Reuters
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舛添 要一(国際政治学者)
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