参議院選挙は、6月22日が公示で、7月10日が投開票である。選挙戦はもう始まっているが、高支持率を享受してきた岸田内閣に少し逆風が吹き始めてきた。
6月10~12日に実施されたNHKの世論調査では、内閣支持率は59(+4)%と内閣発足以来最高になった。不支持率は23(±0)%であった。
ところが、18日に行われた毎日新聞の世論調査では、内閣支持率は48(-5)%と下がっている。逆に不支持率44(+7)%は上がっている。
「物価上昇で家計が苦しくなったと感じるか」という問に対しては、「感じる」が66%、「感じない」が17%である。政府の物価対策については、「評価する」が14%、「評価しない」が62%である。岸田資産所得倍増プランについては、「評価する」が23%、「評価しない」が55%となっている。
また、17~18日に実施された日経新聞の世論調査では、内閣支持率は60(-6)%と減少し、逆に不支持率は32(+9)%で過去最高になっている。これは最近の物価高が影響している。物価上昇について、「許容できない」が64%と、「許容できる」の29%を大きく引き離している。
さらに、17~19日に行われたNHK世論調査では、内閣支持率は55(-4)%と下落、不支持率は25(+2)%と増加している。冒頭に引用した同じNHKの世論調査と比べて、わずか1週間で変化している。鍵は物価である。政府の物価対策については、「評価する」が35%、「評価しない」が56%である。
新型コロナウイルスによるパンデミックは、世界の物流を疎外し、半導体などの部品の供給が減るなど、世界経済に大きな影響を与えてきた。最近の上海のロックダウンが中国のみならず、日本にも深刻な事態をもたらしていることは周知の事実である。
それに加えて、ウクライナの戦争で、ガソリン、光熱費、小麦粉をはじめとする食料品などの価格が高騰し、生活を直撃している。停戦の見通しは全く立っておらず、戦争は長期化しそうで、日本の家計にも大きく響く。
しかも円安である。
1ドルが135円という円安で、原材料など輸入品の価格が高騰し、物価を上げる要因となっている。円安の原因は、内外の金利差である。
アメリカのインフレは40年ぶりの異常な高さである。5月の消費者物価指数は8.6%にも上り、15日、FRBは通常の3倍となる0.75%の利上げを決めた。物価抑制を最優先とする金融引き締めである。
また、ヨーロッパ中央銀行も利上げの方針を固めている。
一方、日本銀行は、17日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和政策の継続を決めた。金融を引き締めると、景気が悪化するという判断である。
5月20日に総務省が公表した2022年4月分の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.5%である。生鮮食料品を除くCPIは2.1%、生鮮食料品及びエネルギーを除くCPIは0.8%である。
CPIが2%を超えれば、日銀が目標とするインフレ・ターゲットに到達するが、今回は、賃金上昇→物価上昇という好循環の結果ではない。
理由は、先述したコロナやウクライナ戦争なのであり、賃金は、この25年間上がっていないのである。この状態で物価のみが上昇していけば、生活が苦しくなるのは当然である。
先の日経新聞の世論調査でも、参院選で重視する政策を尋ねると(複数回答)、景気回復44%、年金・医療・介護が35%、外交・安全保障28%という順になっている。まさに、国民の最大の関心が景気であるが、政府・与党の物価対策については、「評価しない」が69(+8)%で増え、「評価する」は21(-7)%に減っている。
因みに、外交・安全保障への関心の高さはウクライナ戦争が影響しており、防衛費増額という政府方針に賛成が54%、反対は37%である。
また、コロナ対策については、収束に向かっていることもあって、優先順位の7番目であり、これは選挙の争点にはならないだろう。
参院選の投票先を問うと、自民党43%、日本維新の会10%,立憲民主党8%、公明党6%、共産党3%、国民民主党2%であった。この数字を見ると、参院選は与党勝利という結果になりそうである。
しかし、物価上昇に対する国民の不満は高まっており、ウクライナ戦争はプーチン大統領に責任を帰すことができても、わずか3ヶ月で20円も円安になるという事態については政府や日銀の無策に批判が集まるのは当然である。GDPの6割を占める個人消費が伸びない限りは日本経済の再生はないからである。
野党が、消費税減税などの政策でどこまで政府を追い込めるか注目したい。
岸田内閣の高支持率に揺らぎ |
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【舛添要一が語る世界と日本(147)】物価上昇と景気を国民が不安視
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(政治)
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舛添 要一(国際政治学者)
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