新型コロナウイルスの感染がまた拡大している。
最近1週間の平均で、1日の感染者が8万人を超える状況になっている。第7波のピークは今年の夏で、1日に20万人を超える感染者が出ていたので、そのときの約4割の水準である。 専門家は、感染の第8波に入ったという判断を下している。
11月18日には、東京都で1万人を超え、全国でも10万人を超えた。この感染者数が倍増すれば、第7波のレベルに達するということである。
夏の第7波との違いは、季節性のインフルエンザの流行と重なる可能性があることである。南半球のオーストラリアでは、7,8月が冬で寒いが、今年はコロナとインフルの同時流行が起こっている。
そこで、日本でも同じダブル流行になると予想されるのである。
東京都のモニタリング会議は、同時流行の場合、ピーク時の発熱患者数が1日で9万3千人に上ると想定している。その場合、医療が逼迫することが懸念されるが、重症化率が低いために、さほど心配することはないという指摘もある。
現在は、夏に感染者が少なかった北海道、東北、北陸において感染者が多い。理由が2つある。
1つは、換気である。
寒冷地は、夏は冷房がなくても窓を開ければ凌げる。東京などは、部屋を締め切って冷房を強く効かせる。逆に冬になると、寒冷地は暖房のため密閉し、換気が悪くなる。温暖な東京、大阪、福岡などでは換気が十分に行える。
2つ目の理由は、第7波のときに感染が少なかった地域では、感染による免疫の獲得が少なかったと思われる。逆に感染者が多かった所では、多くの人が免疫を持っているようだ。
今は、オミクロン株のBA.5が主流である。私は、10月25日に5回目のワクチン接種を行ったが、そのときに初めてオミクロン株対応のワクチンの接種が実現した。日本政府の打つ手が後手後手で、私のケースで言えば、本来は7月7日に行った4回目の接種の際にそうすべきだったのである。
オミクロン株対応型のワクチン接種は、11月21日現在で、まだ13.3%である。これでは話にならないが、愛知県で42歳の女性がワクチン接種後に急死したケースが報道されると、ますます接種を回避する人が増えてしまう。
このケースでは、アナフィラキシーショックが疑われるのに、アドレナリンの筋肉注射という基本的対処を怠っていた。担当した医師は、この対応法について無知だっという。信じがたい、また許しがたい事例である。
日本では、戸外でのマスク着用は不要になっているが、室内はもちろん、外でもマスクをしている人が圧倒的に多い。一方、欧米ではもうほとんどマスクは目につかないし、カタールで開催されてるサッカーの競技会場でもマスク姿のサポーターは少ない。
ゼロコロナ政策を堅持しているのは中国である。厳しい防疫措置に対して庶民の不満が高まり、都市封鎖が行われた広州では、習近平の強権体制下でありながら、市民が街頭で抗議活動を行う事態にまでなっている。
しかし、感染はじわじわと拡大しており、広州市では、1日の感染者が6千人を超え、中国全体でも2万人を超える状態となっている。このレベルの感染は、4月に上海でロックダウンが行われたとき以来である。
日本は欧米と中国を折衷したような形になっている。コロナ感染が疑われて医療機関を探すと、今は、ほとんどのかかりつけ医が、PCRや抗原検査、そして診療をできるようになっている。圧倒的に多くの患者が無症状、軽症であり、医師は投薬すら行わず、自宅静養を指示するのみである。患者はスマホのアプリで保健所に感染を報告するだけである。
数日後に、患者用のパルスオキシメーターや家族用の抗原検査キットが送られてくるが、完治して問題がなくなってから届く。何の意味もなく、税金の無駄遣いである。
コロナを2類から5類に変えないために、医療現場では不要なことがまだ行われている。保健所をはじめ、既得権を死守しようとする一部の者が行っている愚行である。
国民にとっては、ワクチン接種、医療費などが有料になることが懸念材料で、そうでなくても人気の無い岸田政権は、5類への変更はできないだろう。しかし、5類に変えても、ワクチン接種費用の無料維持は、政策的に可能である。
季節性インフルのほうが致死率が高くなる可能性があるのに、コロナをインフルと同じ5類にしない理由はないのである。私は、7月26日の本コラム(152)でも同じ提案をしたが、政府は今でもまだ動かない。
コロナをなぜ5類にしないのか? 後手に回る岸田政権 |
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【舛添要一が語る世界と日本(169)】新型コロナウイルス第8波へ
新型コロナオミクロン株の3Dイメージ=CC BY-SA /NIAID
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舛添 要一(国際政治学者)
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