東京都の新型コロナウイルス感染者の数がまた増えてきている。
7月9日が224人、10日が243人、11日が206人、12日が206人と4日連続で200人を超えた。13日は119人だったが、これは前日が日曜日で検査数が減ったためだと考えられる。
隣接する神奈川県、埼玉県、千葉県でも東京都と同様に増えており、首都圏全体を一体として考える必要がある。
経済活動の再開とともに感染が再拡大するのは当然とも言えるが、拡大のスピードと規模が予想した以上であり、大きな社会不安となりつつある。
感染拡大の実態は、以下のようにまとめることができる。
第一は、20代、30代の若者が7~8割を占めていることである。
第二は、ホストクラブ、ナイトクラブ、キャバクラなど夜の歓楽街で営業する店から多発していることである。
営業を再開するための条件としてPCR検査を従業員に受けさせた結果、無症状で元気な若者が陽性であることが判明したのである。しかし、感染者が出ると1~2週間は営業を中止せざるをえなくなるので、検査を受けない店も多い。そもそも、自粛要請期間中も秘かに営業していた店が歌舞伎町などにはある。
小池都知事は、検査数を増やしたので、陽性数が増えたのであり、さほど心配する必要はないという姿勢で対応しているが、それでよいのだろうか。陽性の若者が家庭内で祖父母などの高齢者に感染させると、重症化するケースが増えてしまう。
感染者は増えても重症者が少ないので、医療崩壊はないというが、それは今後の高齢者の感染状況次第である。実際に、40代、50代の感染者もじわじわと増えている。
第三は、感染経路不明者が約4割だということである。
それは、市中感染が相当に広がっているということである。陽性でも無症状であれば、本人も周りの人も気がつかない。しかも潜伏期間が2週間と長いことも問題である。
そこで、実態を掴むためには、PCR検査を拡大実施するしかないが、安倍首相が約束した1日2万件の半分にもまだ到達していない。相変わらず、感染研の情報独占体制がPCR検査の増加を妨げている。
医師の上昌広氏によると、医療機関でも保険でPCR検査ができると加藤厚労相が言っていたにもかかわらず、契約書を見ると感染研の積極的疫学調査の業務委託という形になっていたという。そこで、都道府県と医療機関の契約が必要になるのであり、医師と患者が必要と判断すれば簡単に検査できる体制がまだできていないのである。
加藤厚労大臣は、政治家であって国民の代表だなのであり、指導力を発揮して、官僚機構の間違いを正し、自らの責任でこの問題を解決すべきである。最近は、新型コロナウイルス対策全体を西村経済再生大臣が仕切っているようで、何とも不思議な二頭体制である。世界から非常識と嘲笑されているこの体制を作ったのは安倍首相であるが、その本人が全く指導力を発揮していない。
東京都の問題は、感染拡大の危険性を知らせようにも、都民に分かりやすい基準が存在しないことである。その点では、大阪のほうが優れている。
7月12日の大阪府のコロナ感染者は32人、そのうち感染経路不明者が21人だった。
独自の「大阪モデル」では、
①新たな感染者が直近の1週間で120人以上で、その半数が週の後半の3日間に出ている
②感染経路不明者が直近の1週間で前週の2倍以上
③その人数が10人以上
――という三条件を満たせば、黄色信号を点灯することになっており、吉村知事はその通りにした。
東京都の問題は、このような分かりやすい基準がないことであり、「東京アラート」も全く意味がなかった。しかも、基準を東京都の都合のよいように、適当に変えている。これでは都民に警告のしようもないであろう。
菅官房長官は、最近の東京都の感染拡大を「東京問題」と称して、暗に東京都の取り組みを批判したが、小池都知事は「国の問題だ」と反論している。お互いに責任を転嫁したり、また小池都知事の得意のパフォーマンスの材料にされるのは勘弁してほしい。
犠牲になるのは国民であり、都民だからである。
あさましい国と都の責任転嫁合戦 |
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【舛添要一が語る世界と日本(46)】首都圏で急増する新型コロナ感染者、どう対応?
公開日:
(政治)
渋谷(2020年4月)=CC BY-SA /ナギ (nagi)
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舛添 要一(国際政治学者)
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