先週の東京は、3日連続で、一日の感染者が200人を超えるという感染拡大を記録した。
19日には188人、20日には168人と少し減ったが、安心できる数字ではない。20代30代の若者が7~8割であるが、40代、50代にもじわじわと感染が広まりつつある。
この状況を受けて、東京都は、15日に感染状況の警戒レベルを4段階で最も高い「感染が拡大している」に引き上げた。東京都のみならず、神奈川県、埼玉県、千葉県でも感染者が増え、首都圏全体に危険信号が灯り始めている。さらには、大阪をはじめ全国的にも感染が再拡大している。
政府は、観光業界を救済するために8月上旬より実施する予定のGo To Travelキャンペーンを、前倒しで7月22日から開始する計画を立てていた。しかし、東京のみならず、全国に感染者が拡大する状況を前にして、国民から不安の声が上がったのである。
そこで、16日、Go Toキャンペーンから東京を除外することを決めたのであるが、首都圏は一体であり、東京のみというのは論理的ではない。そして、政府が営業自粛を要請すれば休業補償を出すのは当然であるように、Go Toキャンペーンで東京都民を除外するなら、キャンセル料など損害は政府が補填すべきである。
その点について、当初、赤羽国交大臣は補填はしないと明言したが、批判の声が高まったため、20日になって、結局、キャンセル料は政府が支払うことに方針転換した。
東京除外の背景には、小池都知事と首相官邸との不協和音がある。
菅官房長官は、「この問題は圧倒的に東京問題と言っても過言ではないほど東京中心の問題だ」と11日に述べたが、これに対して、13日、小池都知事はGo Toキャンペーンとの整合性がないとして「これは国の問題だ」と反論したのである。
官邸は、これに反感を抱き、東京都が警戒レベルを最高度に引き上げたのを材料にして、東京だけをキャンペーンから外したのである。
問題は、パフォーマンスに終始し、政治家として都民のために成果を上げるという努力を一切しなかった小池都知事である。まさに口先だけで実行を伴わない悪い癖が出た。
15日の記者会見で、小池都知事はGo Toキャンペーン「よ~くお考えを頂きたい」と、「よ~く」を強調して嫌みたっぷりに言ったのである。これが決め手となって、官邸による東京外しとなった。
不利益を被るのは都民である。誰かを悪者にして攻撃し、自分は正義の味方というスタンスのパフォーマンスは彼女の常套手段である。「国と対立してカッコイイ」と思う有権者もいるかもしれないが、損をするのは都民である。
小池都知事が行うべきだったのは、官邸と緊密に連絡を取って、東京除外をしない解決法をさぐることであった。せめて、首都圏の三県や大阪圏を巻き込み、キャンセル料などの損害補填を担保に取ることだった。
赤羽国交大臣は公明党の国会議員である。今の都議会を与党として牛耳ってるのは、素人集団の「都民ファーストの会」ではなく、都議会公明党である。都議会公明党を使って、公明党本部や創価学会と話をつけることもできたはずである。どのチャンネルを使おうが、どんな政治手法を使おうが、都知事の仕事は都民にプラスになることを実現することである。
政治家として、そのような最小限の努力をせずに、記者会見ではったりを言たり、横文字を使ったスローガンを並び立てたりするのも、目立たんがための単なるパフォーマンスである。しかし、具体的な成果がない。
新型コロナウイルスの感染防止と経済活動の維持という2つの課題を解決するのは容易ではない。国との関係を良好に保ちながら、一つ一つ着実に問題を解決していくしかない。
国会議員や大臣を経験した政治家ならば、国の仕組みについて精通してるはずである。政界、官界などで築いてきた人脈を駆使して、結果の出る都政の舵取りをすべきである。口先だけで動くほど世の中は甘くない。
パフォーマンスに終始する都知事、泥を被る都民 |
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【舛添要一が語る世界と日本(47)】GoToキャンペーン、東京外しの背景に小池都知事の失政
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(政治)
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舛添 要一(国際政治学者)
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