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大きなコストをかけずに国民の生活豊かに

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【舛添要一が語る世界と日本(57)】規制緩和、縦割り行政打破の具体例

公開日: 2020/09/29 (政治)

CC BY-SA 代々木公園=CC BY-SA /mrhayata(cropped)

 菅内閣は、行政改革をうたい、縦割り行政の打破、規制緩和を推進するという公約を掲げている。

 縦割り行政打破と規制緩和は、それ自体が目的ではなく、それを行うことによって、国民の生活が便利で豊かになることが肝心である。

 具体的な手段はいくつもある。国家戦略特区というのも、その1つである。

 私は厚労大臣のときに、待機児童問題に取り組んだが、手を打ったら、またすぐに待機児童が増えるというイタチごっこであった。

 都知事時代にも、この問題に取り組んだが、保育施設と保育士の不足が理由である。施設整備については、地価の高い東京では、土地の確保が大きな課題となる。従来の整備費や賃借料の補助などに加えて、新たな試みとして、私は公園に目をつけた。

 緑あふれる公園を、保育や高齢者の介護に活用しない手はない。公園の中に保育所や介護老人保健施設などを作ったらどうかというアイデアを、公園担当職員に提案すると、公園の本来の目的に反するとして同意を得られなかった。

 しかし、公園内には車も入って来ないし、恵まれた自然の中で子どもたちがのびのびと活動するのは悪いことではない。介護が必要な高齢者にとっても同様である。

 そこで、私は、国家戦略特区を活用することにしたのである。政府と協議して、2015年に法改正をして、「都市公園内の保育所設置特例」を設け、特例的に公園内に保育所を設置することができるようにした。

 そして、荒川区と連携して都立汐入公園での保育所(定員162名)整備を全国に先駆けて提案した。さらに、世田谷区では都立祖師谷公園(定員約80人)、都立蘆花恒春園(定員96人)、品川区では品川区立西大井広場公園(定員100人)を提案した。

 現在、「にじの森保育園」(都立汐入公園)、「茶々そしがやこうえん保育園」(祖師谷公園)、「まちのこども園」(代々木公園)、「MIWA木場公園保育園(木場公園)」などが開設され、今後とも増えていくと思われる(蘆花恒春園については、土壌汚染対策法で定める基準以上の鉛などが検出されたため、工事が中断)。これらが、私が国家戦略特区を活用して実現した待機児童減らし政策である。

 都知事時代には、都市計画にも規制緩和の手法を導入した。

 品川駅周辺の再開発を開始したが、2015年5月には、「品川シーズンテラス」がオープンした。これは、全国で初めて下水道事業において立体都市計画制度を活用したものである。

 立体都市計画制度とは、道路、河川、公園等の都市施設を整備する際に必要な範囲を立体的に定めることで、道路法や建築基準法で定められた建築制限を除外することが可能となる制度である。

 道路について言えば、道路の上下空間に建物を建設することが可能になる。これが立体道路であり、この例が虎ノ門ヒルズで、道路の上に高層ビルが建てられている。

 品川シーズンテラスは、道路ではなく、下水道処理を行う芝浦水再生センターの上部空間を利用して整備された業務・商業ビルである。地下には約7万6千㎥の雨天時貯留施設が設置されており、これは東京湾の水質改善に寄与する。

 下水処理を終えた水が東京湾に流れていっても問題はなく、それが葛西臨海公園で海水浴ができるようになった理由である。しかし、集中豪雨などで未処理の水が海に流れ出ると、それが海洋汚染の原因となる。このような雨天時に下水を貯める施設があると、東京湾の汚染防止につながるのである。

 また、下水再生水や下水熱を利用した空調設備が建物全体の冷暖房を賄う。さらには、新たに整備されたオープンスペースは既存の芝浦中央公園と一体で利用できるし、ヒートアイランド現象を緩和する風の道としても活用される。

 まさに、この「新たに整備されたオープンスペース」は、本来は東京都が公共事業として行うべきなのであるが、ビルを建設したデベロッパーがその役割を担うのである。都としては、都民の税金を使わずに、この整備ができれば助かる。そこで、その「お礼」として、規制緩和を使うのである。

 具体的には、たとえば30階までの規制を撤廃して、35階までの高層化を許すのである。業者にすれば、このボーナス5階分で十分に利益を上げることができるので、公共事業を自腹で引き受けても、十分にペイすることになる。これが、規制緩和が富を生み出す仕組みなのである。

 民間企業が公的空間を整備する、それに対して都は容積率緩和というボーナスを与えるというウィン・ウィンの関係である。

 このように、知恵を働かせて、税金を使うことなく都市改造を可能にしようというのが、私の考えであった。

 菅政権も、以上の2つの具体例のように、縦割り行政を打破し、規制を緩和することによって、大きなコストをかけずに、国民の生活を豊かにしてほしいものである。

舛添 要一 (国際政治学者)

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