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研究者と政治家としての経験から考える、日本学術会議

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【舛添要一が語る世界と日本(58)】日本学術会議は廃止したほうがよい

公開日: 2020/10/06 (政治)

CC BY-SA 日本学術会議庁舎=CC BY-SA /Rs1421

 日本学術会議が推薦した新会員候補105人のうち6人の任命を、菅首相が拒否したこと、そしてその拒否理由を明示しないことが問題になっている。

 この問題をどう考えるのか、東大で教鞭をとっていた経験から、また国会議員、閣僚、都知事を歴任した立場から論じてみたい。

 私は、東大助教時代に、この組織とは何の関わりを持ったこともないし、また、自分の研究に何か役に立ったこともない。真面目に学問に取り組んでいる研究者にとって、政府に政策提言することなどは主たる仕事ではないし、時間をとられる雑用にすぎない。

 研究者は、自らの研究の成果で世の中に貢献すべきである。

 それに、このような組織に参加できるのは、功成り名を遂げた教授以上の長老である。講座制の下で、年功序列体制と教授による支配に苦しめられた経験からは、日本学術会議など、その古き封建制の典型のように思われる。

 日本学術会議は、1949年に設立され、総理府の機関となり、2001年には総務省の管轄下に置かれたが、2005年からまた内閣総理大臣の所轄となって、今日に至っている。経費は国の負担で、現在年間約10億円の予算で運営されている。

 日本学術会議法の第2条は、その目的を「科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させること」としている。

 そして、科学政策などについて、政府は学術会議に諮問することができるし、会議は政府に勧告することができると規定されている。

 第3条には、「独立して」職務を行うと規定され、学術会議によって推薦された候補者を内閣総理大臣が任命することになっている(17条、7条)。任命権者は首相なので、菅首相が誰を任命しようが自由だが、学術会議の「推薦に基づいて」ということの事実上の強制力が法的には議論となる。

 日本国憲法第6条は、天皇が、「国会の指名に基いて」内閣総理大臣を、「内閣の指名に基いて」最高裁長官を任命すると規定してある。象徴である天皇が政治的判断をすることは、現憲法の措定するところではない。

 そこで、学術会議会員も同じで、首相が政治的判断を下して、会議の「推薦」を拒否すべきではないという意見もある。それは、実は以前の政府の立場であった。それを今回、変更したわけである。もちろん、「推薦」は「指名」よりも強制力が軽く、首相の政治的判断で拒否してもよいという立場もありうる。

 しかし、問題の本質は、法的解釈論ではない。

 設立当時、日本はGHQによる占領下であったが、戦争の反省から社会の雰囲気は戦争反対一色であり、論壇は進歩的文化人に支配されていた。学術会議もそうであり、たとえば、1954年には核兵器研究拒否の声明を出している。

 今でも基本的にそのような姿勢は変わらず、2017年には軍事研究に関する政府の助成制度を「問題が多い」と批判している。しかし、民事と軍事の線引きは難しく、たとえば炭素繊維、センサーなどを例にとれば、そのことはよく分かるはずである。

 さらには、今回の新型コロナウイルスについても経験していることだが、科学的、疫学的、医学的現象について、専門家によって見解が異なっていることは周知の通りである。まして、政治的意見となると、様々な立場の学者がいるのは当然である。それを、組織として1つの見解にまとめて公表することには無理がある。

 多様な意見が自由に表明できるのが民主主義である。今回、菅首相によって拒否された6人の学者は、すべて社会科学系である。私は東大法学部政治学科卒で、母校で政治学を講じたが、たとえば自民党研究は研究テーマである。研究の過程で自民党批判につながるような見解を公にすることはある。自民党政権から見てそれは愉快でないとなれば、学術会議の会員にはなれないということになってしまう。

 私は、会員になどなる気はないが、研究内容にまで介入されるのは不愉快である。その意味で、今回の菅首相の拒否は良くない。もう少し太っ腹で政権反対派を数名加えるくらいの余裕がほしかった。

 しかし、もっと根本的な問題は、首相が所轄するような組織に、自由が大事な学者が入るべきではないということである。私は、日本学術会議は廃止すべきだと思っている。そもそも、政治学や法学のような人文科学系の学者が入ること自体がおかしいのである。

 学術会議の会員は特別職国家公務員であり、年間4兆円にのぼる国の研究開発予算の配分という利権にも関わっている。そのような点も考慮して、この組織のあり方を根本的に問い直さなければならない。

 政治家の立場で言えば、助言を求めたいときには、優秀な学者個人に話を聞けば済む話である。わたしは、厚労大臣のときに複数の感染症学者の意見を徴した。その上で、自らの責任で政策を決定した。日本学術会議の見解を聞くなどということは考えたことがない。

 この組織の存廃について、検討されるべきである。

舛添 要一 (国際政治学者)

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