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なぜ国産ワクチンを開発できなかったのか

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【舛添要一が語る世界と日本(84)】日本の深刻なワクチン敗戦

公開日: 2021/04/06 (政治)

CC BY CC BY /ShebleyCL

 新型コロナウイルスの感染が全国的に拡大し、大阪府、兵庫県、宮城県を対象に、4月5日から5月5日まで蔓延防止等重点措置が実行に移された。

 状況は緊急事態宣言を発令するくらいに深刻になっており、この措置で効果があるかどうかは疑わしい。

 25日に始まった聖火リレーは順調に進んでいるが、大阪府は大阪市での実施を中止することにした。このような状況下で、事態を好転させる切り札がワクチンである。

 ところが、その接種の進行は遅々としている。日本でコロナ・ワクチンを接種したのは医療関係者など110万人のみであり、人口の1%にも満たない。成人で少なくとも1回は接種した人の比率はアメリカでは30%超、イギリスは40%超、イスラエルに至っては60%超、遅れている欧州大陸でもドイツが10%を超えている。まさに、日本はG7の中で最悪である。

 高齢者は4月12日から接種を始めるというが、すべての高齢者が2回の接種を完了するのは7月以降になるのではないか。

 このような接種ペースでは、7月の東京五輪の際には、日本はまだ集団免疫とはほど遠い状況であろう。しかも、世界中でワクチンの争奪戦が激化しており、製造元から予定通りに供給されるかどうかも不明である。

 接種が進んでいるのは、英米などワクチン開発の先進国であり、それは国産ワクチンを潤沢に確保できるからである。

 今回のワクチン開発が異常なスピードで成功したのは、新技術のおかげである。

 ファイザーやモデルナは、メッセンジャーRNAを活用してウイルスの遺伝子情報を使い、病原体タンパクを人工的に大量生産する手法を開発した。ワクチン開発には、7~8年が必要とされているが、今回は画期的な手法でスピードアップされたのである。

 なぜ、日本で開発が遅れているのか。極論すれば、わが国の惨状は、スマホ全盛時代にまだガラケーを使っているようなものである。

 第一に研究開発予算も研究者も不足していることである。

 ワクチン開発には安全性が確保された実験室が必要だが、最高レベルの安全性が確保されているP4レベルは国立感染症研究所にしかない。これまた、感染研の独占状態で既得権益の上にあぐらをかいている。

 少なくとも、P4レベルの研究室が3つは必要である。周辺住民が反対するのなら、住民のいない僻地に設置すればすむ話である。

 研究者の数も約300人であり、アメリカCDCの50分の1である。また、予算もアメリカの10分1である。これでは、全く話にならない。そこで、2020年度予算の第一次補正で100億円、第二次補正で1400億円、第三次予算で1200億円が計上されているが、合計しても2700億円である。長期的視点に立って、国家の安全保障政策の一環としての予算措置が必要である。

 第二に、日本のみでは十分な治験ができないことが問題である。

 よく知られた例だと、アビガンがある。インフルエンザ治療薬として開発された薬であるが、コロナ治療にも効果があるとして、海外では広く活用された。しかし、国内治験数が足りず、承認されていない。厚労省が回収してしまったのか、開業医が入手できない状況になっている。

 このような例を考えると、ワクチン開発についても、たとえばインドやブラジルなど海外と国際協力を進め、治験の数を確保せねばならない。海外での治験も法的には可能となっている。

 第三は、副反応による事故の場合の対応、免責体制を整備することである。

 これまでワクチン接種などの副反応で、厚労省の担当課長が刑事訴追されるケースがあり、厚労省もワクチンの承認に過剰に慎重になっている。今回のコロナの場合、ワクチンを製造するメーカーは免責とされるが、官僚についてはそうなっていない。これも重要な検討課題である。

 第四に、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ社以外でも、有効なワクチンは輸入して、接種のスピードを上げねばならない。

 ジョンソン&ジョンソンのワクチンは一回の接種で済む。ワクチンの専門家によれば、中国のワクチンも十分に安全で効果があるそうだ。

 政府は、東京五輪を開催したいのならば、国産ワクチンがなくても、イスラエルやチリのように外交努力を展開して、ワクチン確保を進めねばならない。

 コロナ感染第4波の到来にもかかわらず、ワクチン接種の迅速化もできないようでは、政府失格である。

舛添 要一 (国際政治学者)

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