7月4日の都議会選挙の結果は、事前の予想とは大きく違っていた。私も含め、ほぼ全ての専門家の予測が外れたのである。
その最大のものは、自民党と公明党で過半数に届かなかったことである。そして、都民ファーストが盛り返し、議席は減らしたものの、第2党の地位を確保したことである。
獲得議席数は、都民31(−14)、自民33(+8)、公明23(±0)、共産19(+1)、立民15(+7)、維新1(±0)、生活者ネットワーク1(±0)、無所属4(−1)である。
自公は合計で56議席であり、過半数(総議席が127なので64議席)には8議席不足している。
投票率は42.39%と、過去2番目の低さであった。これに助けられたのが公明党で、当落線上の候補がギリギリで滑り込んでいる。
北多摩三区では、354票差での勝利である。コロナ禍で創価学会員を全国から動員できなかったことも厳しい選挙となった一因であるが、雨の影響などで低投票率となったことで、最後は組織力を発揮できたのである。
さらに言えば、都民ファーストの会から自民党に鞍替えしたことは、有権者に好意的には受け取られなかったようである。
「都民」は激減すると言われていたが、小池都知事の入院・静養、最終日での応援入りといったメディア戦略で目立つことになり、政党そのものの知名度も上がることになった。自民党は小池に裏切られたとほぞをかんでいるだろうが、そんなことなど彼女は気にもかけない。
立憲民主党と共産党は議席を上積みしたが、両党間の選挙協力が功を奏した。その典型が武蔵野市であり、菅直人元首相に推される立民の新人が圧勝している。
これに対して、自民党は複数候補を立てて失敗している。
目黒区や品川区では2人が共倒れ、大田区では3人中2人が落選している。過信せずに候補者調整をしていれば、3議席は増えている。自民党には、公明党のような候補棲み分け技術がない。無党派層の票が流れてこないと、自民党に複数候補は無理であり、足腰の弱体化を感じざるをえない。
1人区については、千代田区で都議会自民党のドン、内田茂前議員の女婿が女優の弟の「都民」候補に破れている。
逆に中央区では自民党候補が「都民」候補に勝っている。青梅市と昭島市では、「都民」候補が自民候補に大勝し、小金井市では無所属の新人が自民と「都民」の候補に勝った。島部は自民候補が共産候補に勝っている。武蔵野市は、先述したように立民候補が、自民と「都民」に圧勝している。
島部を除く1人区(6区)は、2017年は「都民」が、2013年は自民が全勝し、2009年は民主党が5勝している。しかし、今回はばらけている。それは、どの政党、どの候補にも風が吹かなかったということである。
このことは、風が吹けば無党派がその風に乗って動くということであり、今回はあまり動いていない。出口調査によると、「都民」が無党派の票を最も多く獲得しており、自民党には風が吹いていないのである。
その理由は、菅政権のコロナ対策の失敗、そして東京五輪開催強硬方針が都民の厳しい批判を浴びていることにある。東京都のコロナ感染状況の悪化は、小池都知事の舵取りの失敗にあるが、入院騒ぎで上手くその批判をかわしてしまった。
また、五輪については、彼女はあえて明言を避けている。逃げの戦術である。
コロナ感染は首都圏では拡大し続けている。23日は東京五輪の開会式である。感染状況次第では緊急事態宣言の再発令が必要になる。そのような状況下で「安全・安心」の大会運営ができるのだろうか。
菅首相は、五輪成功をバネにして衆議院選に臨み、大勝するというシナリオを描いているが、それが上手く行くかどうかは分からない。
都議選の結果は、菅戦略の見直しを自民党に求めているようである。「菅では選挙は戦えない」という声も高まっている。都議選は、いつものように国政の前哨戦となったようである。
1月24日の山形県知事選、3月21日の千葉県知事選、4月25日の国会補選(衆院北海道2区、参院長野、参院広島)、6月20日の静岡県知事選と自民党は全敗している。日本の政治が大きな地殻変動を起こす可能性を感じざるをえない。
因みに、今回、都議会選挙で女性が41人当選したが、これは過去最多であり、全議席の約3分の1を占めている。これもまた、新しい時代の兆しかもしれない。
意外だった都議選の自民敗北 地殻変動を感じる |
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【舛添要一が語る世界と日本(97)】都議選はやっぱり国政選挙の前哨戦
公開日:
(政治)
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舛添 要一(国際政治学者)
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