今週の7月23日には東京五輪が始まる。緊急事態宣言下である。
海外から選手団が続々と来日しているが、選手やスタッフの中からも陽性者が出るなど、水際対策の不備やバブル方式の抜け穴が指摘されている。
しかも無観客開催となったために、五輪運営の財政面の問題が深刻化するとともに、盛り上がりに欠ける大会となってしまった。
コロナ対策については、ワクチン供給不足から自治体や職場で予約をキャンセルするような事態となっている。また、酒類を提供する店との取引停止を酒類販売事業者に要請するなど、強引な手法が厳しく批判されている。
そのような状況下で、菅内閣の支持率は下げ続けており、ほぼ全てのマスコミの世論調査で、昨年9月の内閣発足以来最低を記録している。
7月9~11日に調査したNHKと読売新聞を見ると、内閣支持率・不支持率は、前者が33・46%、後者が37・53%であり、いずれも支持率は最低である。
次いで9~12日に行われた時事通信社の調査では、29.3・49.8%であり、支持率が20%台に下がったことが大きな話題となった。一般的に、30%台は黃信号、20%台は赤い信号が政権に灯ったこと意味するからである。
さらに、17日に行われた毎日新聞の調査では、30・62%であり、これも厳しい評価である。
また、17,18日に行われた朝日新聞と共同通信社の調査では、前者が31・49%、後者が35.9・49.8%である。両者とも過去最低の支持率である。
なぜここまで支持率が続落するのか。
それは、東京をはじめ全国で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないからである。
東京は、感染者が連日1000人を超える状況である。そのような状況にもかかわらず、ワクチン接種にブレーキがかかってしまっている。感染が拡大している大都市でその影響が大きく、住民の不満を呼んでいる。
読売新聞の世論調査であるが、対象を東京都民に限ると、支持率・不支持率は28%・63%であり、都民は菅内閣にレッドカードを突きつけている。
政府のコロナ対策については、評価24(全国28)%、ワクチン接種対応については、評価31(全国36)%、五輪については、中止50(全国41)%と、都民の菅政権評価は極めて厳しい。
この点を菅首相は認識していないのではないか。
典型的な例はワクチン接種である。
菅首相は、一日の摂取回数が「100万回を超えた」とか「130万回にも達した」とか記者会見で豪語するが、接種できなくて困っている住民が大都市にはたくさんいる。高齢者の次に順番が来る世代の接種予約が順調に行かず、遅れてしまっている。また開業医からも、ワクチンが届かず予約をキャンセルせざるをえなくなっているとの不満が寄せられている。
これが都会の住民の実態であり、菅首相に「ワクチン接種は順調だ」と言われると反発するしかなくなる。役人が上げてくるデータだけを使って記者会見をしても、現実に困っている有権者の心には響かない。
マクロの視点のみでは現実が見えない。国民は、ミクロの視点で日常生活を送っているのである。その有権者の実情は、市町村議会議員から国会議員まで自民党の政治家が選挙区の日常活動で見ているはずであり、それが首相官邸にまで届いていないことは問題である。
安倍長期政権の下で、野党が非力になり、何が起こっても政権を失うことはないという奢りが民意に対する感度を下げることになっているのではないか。来たるべき衆議院選挙は、自民党にとっては厳しい戦いとなることを覚悟しておいたほうがよい。
国民は菅内閣にレッドカード |
あとで読む |
【舛添要一が語る世界と日本(99)】支持率低下が止まらないのに、危機感薄い菅政権
公開日:
(政治)
![]() |
舛添 要一(国際政治学者)
|
![]() |
舛添 要一(国際政治学者) の 最新の記事(全て見る)
|