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推進の日経も「決定プロセス丁寧さ欠く」

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【論調比較・原発政策の大転換】朝日、毎日、東京は「拙速」「議論なし」批判

公開日: 2023/01/17 (政治)

CC BY-SA CC BY-SA /つ

◎産経は「運転60年」の原則維持を批判
◎道新、新潟日報は具体的に批判

 岸田文雄政権が原発政策の転換へ舵を切った。脱炭素社会への政府の司令塔である「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」(議長=岸田首相)が2022年12月22日にまとめた「GX実現に向けた基本方針」の中で、原発の積極活用を前面に打ち出した。最長60年としてきた運転期間を延長するとともに、これまで「想定していない」と明言してきた原発の新増設・リプレース(建て替え)にゴーサインを出したのだ。

 国論を二分するテーマであり、参院選では争点にならなかったのが、実質4カ月ほどの議論で、あっさりと大方針を転換したことに、「なし崩し的」との批判も絶えない。

 大手紙の論調は例によって原発推進と脱原発に2分されるが、推進側の論には国民理解への認識で温度差も見える。また、原発立地地域の実情を踏まえ慎重な見解を示す地方紙もある。

 GX実行会議が決めたのは、正式には「基本方針案」で、意見公募(パブリックコメント)を経て、23年2月に「基本方針」として閣議決定し、関連法案を通常国会に提出する。

 原発の政策転換のポイントは2つ。第1は、原発の運転期間の延長で、東京電力福島第1原発事故を教訓に、原則40年、20年延長でき、最長60年と定めたルールを変える。60年という基本は維持しつつ、再稼働に必要な審査などで長期停止した期間を運転期間から除外できるようにした。仮に5年間停止した場合は、運転開始から65年まで運転できるようになる。

 第2に、原発の新増設・リプレースについて、「将来にわたって原子力を活用するため、建設に取り組む」と明記した。ただ、まったくの新規立地は現実には困難で、廃炉になる原発の建て替えを想定し、「次世代革新炉」と呼ばれる、現行の原発の改良型を開発する方針だ。

 方針転換の議論は、官邸と経済産業省(資源エネルギー庁)が二人三脚で推し進めた。経産省の総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の原子力小委員会が露払い役を担い、首相の指示を織り込みながらGX実行会議でまとめていくという形だ。

 岸田首相は「原発の最大限の活用」との発言にとどめた参院選を終えると、22年7月14日の記者会見で冬に最大9基再稼働との方針を打ち出したのが「号砲」だった。8月24日のGX実行会議の第2回会合で首相は、運転期間の延長、新増設・建て替えの検討を指示。「年末に具体的な結論を出せるよう検討加速」と、期限も年内と区切った。

 経産省の原子力小では7月29日と8月9日の会合で、原発の技術開発に関する「ロードマップ(工程表)」をまとめた。様々な次世代原発を並べているものの、実質的には、普通の水(軽水)を冷却材として使用する現在の「軽水炉」の改良型である「次世代革新炉」(革新軽水炉)を想定し、建て替えを進める方向を示したものだ。

 原発の運転期間延長に関しては9月22日の小委で、経産省が「一つの目安であり、明確な科学的な根拠はない」と、延長の意向を表明。すかさず安全審査を担う原子力規制委員会が10月5日、「エネ庁における検討そのものに、規制委が意見を述べる立場にはない」と、経産省の方針を追認した。

 規制委の事務方である原子力規制庁が、規制委の委員長らの知らないところで経産省と事前の議論のすり合わせをしていたことが、後に明らかになった。元々経産省内にあった規制部門が、福島事故の教訓を踏まえ、規制庁として分離された経緯に照らすと、その独立性に疑念が生じたことは、今後に禍根を残す。ともあれ、経産省が周到に根回しに動いていたということだろう。

 経産省は11月28日の原子力小委で、運転期間延長と新増設・建て替えを盛り込んだ「行動計画」の原案として示し、12月8日の同小委で一部反対意見を押し切って了承を得ると、16日の同調査会基本政策分科会でも了承と、一気に方針を決め、これをもとに22日にGX実行会議が延長と新増設を決めた。

 (この「基本方針」は、原発関係のほか、もう一つの柱として、二酸化炭素(CO2)排出に応じて企業にコスト負担を求める「カーボンプライシング(CP)」を23年度から段階的に導入すること、脱炭素への投資のため国が23年度から10年間に「GX経済移行債」を発行して20兆円を調達することなども盛り込んでいる)

 原発政策は国論を二分するテーマであり、大手紙は概ね、12月22日のGX実行会議、 11月28日の原子力小委に前後して社説(産経新聞は「主張」)を掲載したが、論調は今回も賛否真っ二つに分かれている。

 脱原発の朝日新聞(2022年12月23日)は〈到底認められない。撤回し再検討することを求める〉、毎日新聞(12月23日)も〈再考すべきだ〉と、撤回を求めている。

 批判のポイントは、まず、拙速な決め方だ。

 〈首相が原発推進策の検討を指示したのは8月下旬だ。重大な政策転換にもかかわらず、直前の参院選では建て替えなどの考えは明示しなかった。そして選挙後に一転、急ピッチで検討を進めた。民主的なやり方とはとても言えない〉〈拙速な政策転換は許されない〉(朝日)

 〈将来世代に影響を及ぼす重大な決定が、幅広い議論なしに下された。看過できない。……経済産業省と推進派の専門家が主導し、結論ありきで議論が進められた〉(毎日)

 具体的に、毎日は〈日本は地震リスクが高い〉〈たまり続ける一方の「核のごみ」も、解決のめどが立たない。……数十年間試行錯誤して実現していない〉、〈発電コストの面でも再生可能エネルギーが優位との指摘がある。原発は……巨大な負の遺産となりかねない〉などの懸念を列挙。

 朝日も、延長の安全性、使用済み核燃料の最終処分問題、災害やテロの危険に対応できるかの懸念などを指摘した。

 脱原発の「急先鋒」ともいえる東京新聞は、政府の決定時点での社説はないが、年明けの2023年1月6日に、〈「可能な限り依存度を低減」から「最大限活用」へ。原発の位置付けは一変することになりました。エネルギー政策の根幹を揺さぶるだけでなく、国民の命と暮らしにかかわる重大な方針転換を、いともあっさり決めてしまった首相の“胆力”に、驚きと疑念を禁じえません〉と皮肉り、〈わずか四カ月。熟議なき原発神話の復活〉と批判した。具体的に革新炉への疑問なども指摘している。

 原発立地地域の県紙には、具体的な地元原発の問題に触れた批判的論調が目立つ。

 北海道電力泊原発の地元、北海道新聞の社説(12月23日)は〈泊原発をはじめ、福島第1や日本原子力発電の東海第2(茨城県)では、建設当初に原発の寿命を30~40年と記載した資料が見つかっている。……泊原発の審査は北電の説明不備などで9年以上も続く。新方針では審査期間に比して運転期間が延びるが、その安全性の根拠は明確でない。原発の安易な延命につながらないか、懸念は尽きない〉

 東電柏崎刈羽原発の地元、新潟日報の社説(12月2日)は〈停止期間を除外して運転期間を計算することには、停止中も進行する経年劣化の影響が懸念されるが、その点についても納得できる説明はない。……(柏崎刈羽原発)7号機では長期停止で腐食が進んだとみられる配管に直径6センチの穴も見つかっている。……「最大限活用」を優先し、安全性を巡る論議や施策を後退させることは許されない〉

 これらに対し、原発推進の3紙は、政府の方針転換を支持しつつ、トーンには差が出た。

 産経12月24日は〈原発の積極的な活用を通じ、エネルギーの安定供給や電気料金の抑制を目指すのは当然である。……方針転換を歓迎したい〉と、基本的に評価するのは当然だろう。

 ただ、経産省方針が出たのを受けた12月1日には、60年という運転期間の上限を原則維持したことをやり玉に挙げ、〈原発の運転期間の延長幅が短く限定される可能性が高まっている。……これでは日本の今世紀半ばのエネルギー安全保障が危ぶまれる〉と書いている。

 読売新聞(12月6日)は産経より現実的で、〈長く停滞していた日本の原子力発電を巡る政策が動き出した。原発を将来にわたり活用していくには、計画を着実に具体化することが重要だ〉と歓迎したうえで、〈停止期間を運転年数に算入せず、60年超の稼働を認めるのは現実的な措置だ〉と指摘。〈政府は、これまでの原発政策の遅れを取り戻すべく、行動計画の実現に取り組まなければならない〉と発破をかけている。

 読売、産経は短期決定への懸念には触れないが、同じ原発推進でも、日経新聞(12月25日)はトーンが異なる。

〈政府は原発の新増設の議論を避けてきた。現実を直視し、建設に踏み出すのは評価できる〉、〈原発を含め、あらゆる電源を活用するのは理にかなう〉などと、新方針を支持する一方、〈子孫の代まで影響する重要な政策転換なのに、骨子は経済産業省の会議で9月以降、数回議論しただけで固まった。ネットで中継したとはいえ「いつの間にか決まった」と感じる人は多いだろう〉などと指摘し、〈決定プロセスは丁寧さに欠けた。今後の具体策の肉づけは、国民の理解を十分に得つつ進めてほしい〉と、国民への説明がほとんどない中での方針転換への懸念を示したのが目立った。

 日経は12月2日にも、〈使用済み核燃料の再処理や最終処分地の選定など課題も多い。原発にいつまで、どの程度依存し続けるのかは、なお議論の余地がある〉と言及するなど、読売、産経と比べ、反対論にも気を配っている。

 22年の参院選終了の時点で、政策転換がここまで一気に進むとの見立ては、メディアでも多くはなかった。ほぼ経産省のシナリオ通りに年末の決定に至ったのには、ロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギー価格高騰や電力不足などが「追い風」になった。同時に、安倍晋三元首相の国葬の是非、自民党と旧統一教会との癒着が秋の臨時国会の論戦の中心テーマになった結果、原発・エネルギー政策の大転換への関心が盛り上がりを欠いたのは否めない。

 思い起こせば21年10月の岸田政権発足時、「原子力村」の中心人物である甘利明氏を幹事長に据え、嶋田隆・元経産事務次官を首相政務秘書官に配置したことなどから、原子力回帰シフトとも指摘された。

 統一教会との関係で22年10月に経済財政・再生相を更迭された山際大志郎氏は「甘利氏の一番弟子」と言われる。1カ月近くにわたる、のらりくらりの答弁で、どれだけ無駄に国会の審議時間が費やされたことか。山際氏の国会でのそんな「頑張り」が、結果として原発政策の転換を国民の目から隠す役割を果たしたとすれば、何をかいわんやである。

岸井 雄作 (ジャーナリスト)

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岸井 雄作(ジャーナリスト)
1955年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。毎日新聞で主に経済畑を歩み、旧大蔵省・財務省、旧通商産業省・経済産業省、日銀、証券業界、流通業界、貿易業界、中小企業などを取材。水戸支局長、編集局編集委員などを経てフリー。東京農業大学応用生物科学部非常勤講師。元立教大学経済学部非常勤講師。著書に『ウエディングベルを鳴らしたい』(時事通信社)、『世紀末の日本 9つの大課題』(中経出版=共著)。
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