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各紙そろって菅政権への「痛手」指摘

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【論調比較・大阪都構想否決】維新挫折で、主な関心は政局への影響

公開日: 2020/11/04 (政治)

CC BY-SA CC BY-SA /W7401898

岸井 雄作 (ジャーナリスト)

 地域政党・大阪維新の会が推進してきた「大阪都構想」の是非を問う2度目の大阪市の住民投票(11月1日)は5年前に続き、否決した。

 これ自体は一地方の一ローカルなテーマだが、国政にも影響を与える政治的な意味も持ち、全国的な関心を集めた。大手紙も通常紙面で大きく扱かい、社説でも一斉に論じた。

 大阪都構想は、政令指定都市である大阪市を廃止・分割して、東京23区のような4つの特別区に再編するもので、府と市の「二重行政」を制度的に解消し、広域行政の司令塔を府に一本化し、成長戦略を推進するという狙いだった。

 維新が看板政策に掲げて10年。2015年の住民投票で一度は否決されたが、2019年春の知事・市長の「ダブル辞任・タスキ掛け立候補」での勝利を梃子に、賛成に転じた公明党の協力も得て、再び投票に持ち込んだ。

 しかし、今回も否決されたことで、維新代表の松井一郎大阪市長は「民意をしっかり受け止める」と表明、都構想は幻と消えた。

 特に、2019年の選挙は同時実施の大阪府議選、大坂市議選でも維新が圧勝、公明党の賛成への転身があり、この9月時点のマスコミ各社の世論調査では賛成のパーセンテージが10ポイント程度リードと伝えられ、維新勝利の予想が多かった。しかし、10月12日の告示以降、反対派の追い上げで世論調査でも賛否拮抗の数字が出て、関心が一気に高まった。1カ月で情勢が急転換したという意味も含め、否決という結果に衝撃を受けた人が多かったのは確かだろう。

 ただ、都構想問題は、構想それ自体、言い換えれば地方自治のあり方というのが最大のテーマだが、そのことが全国的な関心を集めたわけではない。それ以上に、否決という結果を受けて大手紙各紙が注目したのは、維新という政党の挫折と、これに絡んだ菅義偉政権、ひいては政局への影響だ。

 そもそも、各紙は都構想自体に冷ややかだった。2019年の維新の勝利を受けた社説(産経は「主張」)も、〈新たな特別区の設置には、庁舎整備やシステムの改修など数百億円のコストがかかるとの試算がある。行政サービスの低下を懸念する声も少なくない〉(読売4月9日)などとして、〈より詳細な議論が必要だ〉(朝日4月8日)など、慎重な対応を求めていた。

 今回の再投票前も、〈住民サービスが低下することへの危惧や、特別区の財政運営を不安視する声もある〉(産経9月4日、https://www.sankei.com/column/news/200904/clm2009040003-n1.html)などの懸念を示し、住民説明会がコロナ禍もあって少ないなど〈一度否決された構想を問い直す理由の説明機会が乏しくはないか〉(東京9月22日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/56981?rct=editorial)、〈府や市には市民の疑問を解消するように説明を尽くす努力が求められる〉(毎日9月7日、https://mainichi.jp/articles/20200907/ddm/005/070/035000c)など、投票に突き進んだ維新への牽制をにじませる論調が目立った。

 ただ、2019年選挙の維新圧勝という「民意」を尊重して、都構想に真っ向反対する主張はなかった。世論調査も、この時点では賛成が優勢だったこともあって、各紙の書きぶりは腰が引けた、当たり障りないという印象だ。

 それが、否決という最終的な「民意」が出たことで、紙面には維新に厳しい活字が躍ることになった。否決の結果を報じた11月2日朝刊の主な解説記事の見出しを見ておこう。

「『大阪都』 旗印失う維新」(朝日2面)
「看板否決 維新大打撃」(毎日3面)
「敗北 維新に打撃」(読売3面)
 東京は、3日朝刊の「こちら特報部」で「維新 かすむ存在意義」「党是にノー『解党が筋』」と書き込んだ。

 いずれの記事も、5年前の否決で〝創業者〟の橋下徹元大阪市長が去り、今回の敗北で松井代表が2023年4月の市長任期満了で政界引退を表明したことで「屋台骨」を失う打撃の大きさを指摘し、関西ローカルから全国展開へという勢いがそがれる可能性などを指摘している。

 さらに、一連の紙面は菅政権への影響について、と酵素という〝本題〟以上に強い関心を示した。

 菅首相が官房長官時代、安倍晋三首相と橋下、松井両氏の4人そろって年末に会食するなど、松井氏と蜜月関係を築いていたのは周知のことで、大坂維新の会を母体とする国政政党「日本維新の会」は憲法改正に前向きなほか、国会で「共謀罪法」など与野党対決の重要法案採決で賛成に回り、逆に維新が取り組む大阪万博誘致などを自民党が後押ししてきた。

 安倍政権時代に、そうした維新との関係強化を主導したのが菅氏だった。今回の住民投票にも、菅首相は「反対」を明言せず、結果が出た後も、報道陣の前で足を止め、「大都市制度の議論に一石を投じた」とエールを送ったほどだ。

 そんな菅政権への今回の結果の影響はどうか。各紙は2、3日朝刊で大ぶりの解説記事を掲載した。

 毎日は3日3面で「維新失速 政権痛手」の大見出しを掲げ、〈自民党関係者は……無派閥で党内基盤が弱い首相にとって、松井氏の引退表明と維新の失策は痛手とみる〉とした。

 読売は3日4面政治面で「維新失速 菅政権にも影」との見出しで、維新が〈野党を分断するうえで貴重な存在となってきた〉と指摘したうえで、その失速が〈政権運営に痛手となりかねない。……派閥に属さない首相にとって、維新は「菅別動隊」といえる存在で、政府高官は「都構想の旗を降ろしても維新の存在意義は依然として大きい」と言い切る〉と書いている。

 産経は2日3面で「首相の政権運営に痛手」と題し、〈国政で維新の勢いがそがれれば、憲法改正や重要法案での共闘も効果が限られ、政権運営上のメリットが薄れる〉と、政権の懸念を代弁。

 朝日は2日2面で「蜜月の菅首相 政権運営に影も」として、〈松井氏が退場することになれば、党運営が混乱する可能性もある。自民党からは、「もし維新が失速すれば、首相の勢いもそがれる」(中堅)という見方も出ている〉と書いた。

 東京も3日の「こちら特報部」のなかで「近い関係 菅政権痛手?」の見出しを立て、他紙と同様に政権への痛手を指摘した。


 「菅別動隊」としての維新の失速に加え、自民党内、自公関係への懸念も各紙指摘している。

 自民党は住民投票に向け、大阪府連が求めた資金支援を党本部から受けられなかったこともあり、〈党内では菅首相と松井氏の盟友関係への批判がくすぶる〉(朝日3日4面)。公明党についても、今回、都構想賛成に転じた背景に、衆院選で関西の公明の現職選挙区に維新が候補を擁立することをちらつかせたことがあるのは周知のこと。今回、賛否分かれた自公両党の関係にも〈しこりを残す結果となった〉(毎日3日3面)ことから、〈次期衆院選に向けた自公選挙協力で遺恨も残りそうだ〉(読売3日4面)との厳しい指摘が目立った。

 2、3日に一斉に載った社説は、こうした政局絡みの分析からは距離を置き、自治制度を中心に論じた。〈再編するメリットとデメリットを明確に示せなかった。その責任は重い〉(毎日3日、https://mainichi.jp/articles/20201103/ddm/005/070/060000c)、〈都構想の分かりにくさに加え、維新の強引ともいえる手法も反発を招いたのではないか〉(産経2日、https://www.sankei.com/column/news/201102/clm2011020002-n1.html)など、維新への評価はそれとして、〈大都市制度のあり方は今後も模索が続く〉(東京3日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/66045?rct=editorial)、〈今回の論戦も踏まえ、行政や都市のあるべき姿を前向きに検討してもらいたい〉(読売3日、https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20201102-OYT1T50253/)と、今後の議論の必要を、各紙、一致して指摘。

 日経(2日、https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65733000R01C20A1SHF000/)などは、横浜市などが要望する特別自治市構想(政令市が道府県から独立し、道府県の権限と税財源を譲り受ける)の検討を求めている。
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岸井 雄作(ジャーナリスト)
1955年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。毎日新聞で主に経済畑を歩み、旧大蔵省・財務省、旧通商産業省・経済産業省、日銀、証券業界、流通業界、貿易業界、中小企業などを取材。水戸支局長、編集局編集委員などを経てフリー。東京農業大学応用生物科学部非常勤講師。元立教大学経済学部非常勤講師。著書に『ウエディングベルを鳴らしたい』(時事通信社)、『世紀末の日本 9つの大課題』(中経出版=共著)。
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