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朝日、毎日は証人喚問要求、東京は「議員辞職に値」

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【論調比較・安倍弁明】読売、産経も「説明不十分」、喚問までは求めず

公開日: 2020/12/27 (政治)

撮影・ソクラ 撮影・ソクラ

 腰を45~90度折り、最低10秒間は頭を下げる。最近の企業などの不祥事の謝罪会見は、そのあたりが相場ではないか。ただ、この人は、会見も、国会質疑も、会釈に毛が生えた程度、時間はものの1秒にも満たなかった。

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭(夕食会)の費用補填(ほてん)問題について、安倍氏が12月25日に国会で弁明、前日の24日の記者会見も含め、公の場で「虚偽答弁」を謝罪した。

 安倍氏本人は25日の国会質疑終了後、「説明責任を果たせたのではないか」と〝幕引き宣言〟したが、証拠を示して疑問を解消するには程遠い内容で、安倍政権支持を貫いてきた読売、産経も疑問点を厳しく指摘している。

 年末が迫り、事態は急展開した。安倍前首相後援会代表の配川博之・公設第一秘書が政治資金規正法違反(不記載)の罪で罰金100万円の略式命令を受け、安倍氏自身は不起訴(嫌疑不十分)となり、東京地検特捜部による捜査が終結した。

 この問題で、2019年11月に初めて国会で取り上げられて以来、安倍氏は118回も虚偽の答弁をしていたとされ、このことを国会、ひいては国民にどう説明するかが焦点になったが、自民党は虚偽答弁の舞台になった衆参予算委員会での証人喚問はおろか、参考人招致も拒否し、25日の衆参両院の議院運営委員会での質疑にとどめることで押し切った。野党の求めを受け、「公開」だけは認めた。

 安倍氏は、その前日夕、検察の処分を受け記者会見を開き、議運委での弁明とセットで説明責任を果たしたと宣言したのは前述の通り。この順番になったのは、委員会での一問一答の質疑を受け、そこで残った疑問を改めて記者に問い質されるのを嫌ったのだろうか。

 大手6紙全紙が25、26日と2日連続で、社説(産経は「主張」)で取り上げたほか、連日大きく紙面で扱った。

 25日朝刊は日経を除きすべて1面トップで安倍氏不起訴と記者会見を報じたが、見出しは不起訴、謝罪など事実関係が中心だが、朝日と東京が1面の見出しに「議員辞職せず」と書いたのが目立った。

 26日朝刊は扱い、見出しがかなりバラついた。1面を比べてみよう(日経は1面に載せず)。

 朝日(トップ)=核心答えず/補填の詳細不明/事実と違う答弁謝罪
 東京(トップ)=「118回ウソ」証拠なき弁明/「後援会が契約」認める/答弁修正 議員辞職は拒否
 毎日(左肩3段見出し)=国会答弁を訂正/「道義的責任を痛感」産経(左肩3段見出し)=「国民にお詫び」/衆参議運委で答弁訂正
 読売(ハラ3段見出し)=「答弁 事実反した」/衆参議運委で謝罪

 この日の紙面は、新型コロナの変異種の国内初確認、菅義偉首相の会見、吉川貴盛元農相事務所の家宅捜索などがあったのが、扱いに差が出た一因だが、8年に及ぶ安部氏との距離感も微妙に反映していると見て取れる。

 大きなテーマの節目で、しばしばみられる編集幹部が囲みで書く「論文」は朝日の坂尻顕吾政治部長が1面、産経の佐々木美恵編集局次長兼政治部長が3面に、それぞれ書いているが、正反対のトーン。坂尻氏は〈事実に反する答弁は、衆参両院で少なくとも118回を数える。安倍氏はその責任の取り方について議員辞職を否定した。国のトップを担った政治家の出処進退としてそれが適切かどうかは、今後も問われる〉と議員辞職も考えるべきだとの立場。

 これに対し、佐々木氏は〈いくつもの成果を挙げ、国際会議で各国の首脳に頼りにされていた前首相が、指弾される様子を見るのは残念でならない。……安倍氏がその知見を国政で生かし、憲法改正を前進させるために
も、その言葉通り信頼回復の作業を積み重ねてほしい〉と、今後に期待し、激励している。

 社説を読み比べてみよう。これは、個人のコラムでない「社論」だから、読売はもちろん、産経を含め、疑問は解消されていないと、全紙が指摘する。

 安部氏の主張は、費用の補填は秘書が独断で行い、自分は知らなかったというものだ。だとすれば、秘書が補填を政治資金収支報告書に記載しなかった理由は何か、また安倍氏はなぜ秘書の言い分をうのみにし、国会であれほど追及されていたにもかかわらず事実関係を厳しく確認しなかったのか――これが最低限の疑問だ。

 親安倍の2紙も、さすがに異例の厳しい書きぶりだ。

 読売26日〈記載の必要性を認識しながら、書かなかった理由について、安倍氏は、当時の秘書との連絡を捜査当局に禁じられており、分からない、と述べるにとどめた。国会での質疑を経ても、不明な点は残っている。……
疑いをかけられた段階で、会計処理の実態を詳細に調べ、真摯に対応していれば、これほどの問題にならなかったのではないか〉

 産経26日〈国会で少なくとも118回以上にわたり、事実と異なる答弁をしてきた。これについて、どの部分をどう訂正するかについての具体的な言及がなかったのは問題だ。……不記載の理由について、多額の補填による利益供与を隠すためではないかとの野党の指摘に、安倍氏は「利益供与をして票を集めようとは私も事務所もつゆほども考えていない」と述べた。これを額面通りに受け止める有権者がどれほどいるだろうか〉

 他の4紙も見ておこう。
 
 朝日26日〈自ら求めて弁明に臨んだというのに、事務所の関与についてろくに調査もしていない様子がうかが
えたのも、不誠実きわまる。ホテルに再発行を求めるなどして明細書を確認することもしていない。そもそもなぜ会の収支を政治資金収支報告書に記載しなかったのか、最初に判断した元秘書からは話も聞けていなかった〉

 毎日26日〈補塡の原資は、自身の預金の中から事務所に預けた「手持ち資金」だという。その額は4年間で約700万円に上る。秘書が独断で支出し、報告すらしないというのは不可解だ。会場となったホテルの明細書については、これまで「発行されていない」と答弁していた。それが今回は、ホテルにはあるものの営業上の秘密があるので公開できないという説明にすり替わった。なぜ秘書が政治資金収支報告書に記載しなかったのかという動機も、明らかになっていない〉

 東京26日〈会計を担当する秘書が安倍氏に事実を伝えなかったためとしているが、問題が取り沙汰された後、安倍氏自身が事実の把握にどれだけ努めたのであろうか。「私が知らない中で行われていた」との説明も、にわかには信じ難い〉

 日経26日〈補塡した資金の出どころや前夜祭の実際の収支について、国会も事実を把握する必要がある〉

 真相解明はもちろんのことながら、虚偽答弁が国会の審議を汚したという点にも厳しい指摘が並ぶ。主なものを挙げるが、中でも読売はなかなか厳しい。

  読売〈安倍氏の挑発的な答弁が、物議を醸すことは多かった。学校法人「森友学園」への土地売却問題では、「私や妻が関係していれば、首相も議員も辞める」と強調した。その後、財務省で、安倍氏の妻に関する記述を削除するという公文書改竄(かいざん)が起きた。軽率な発言が無用な混乱を招き、本来費やすべき政策論議に影響を与えた面は否めない。その損失の大きさを、安倍氏は重く受け止める必要がある〉

 朝日〈行政府の長が1年近くにわたり、結果的にしろ、国会で虚偽答弁を重ねていたという、民主主義の土台を揺るがす事態である。議員辞職にも値する背信だというのに、安倍氏が示した責任の取り方は、後援会などの資金の透明性確保の徹底など。政治家であれば当然で、憲政史上最長を記録した首相経験者の矜持(きょうじ)など少しも感じられない。〉

 毎日〈虚偽答弁がまかり通れば、論戦は成り立たなくなる。民主主義の基盤を損なう重大な問題だという認識があるのだろうか〉

 東京〈国会では、政府側が偽りなく誠実に答弁することが大前提だ。説明に誤りがあれば、国会は国政の調査や行政の監視という役割を果たせなくなる。国会で首相が虚偽の答弁を続けたことは、国会を愚弄(ぐろう)し、三権分立を損ない、国民を欺く重大な行為である〉

 国会を愚弄する虚偽答弁であり、真相がなお不明なら、証人喚問で解明するのが自然な流れだが、ここでは途端に書きぶりが割れる。

 朝日が〈通常国会で、ウソをつけば偽証罪に問われる証人喚問を実現し、改めて安倍氏をただす必要がある〉、毎日が〈安倍氏の無理な説明は、新たな疑問を生んでいる。虚偽答弁が問題になっている事柄であるだけに、ウソをつけば偽証罪に問われる証人喚問で真相を解明する必要がある〉、東京も〈虚偽の答弁をすれば偽証罪に問われる証人喚問を行い、国会として真相を解明すべきではないか〉と、3紙は明快に喚問を求める。

 これに対し、読売は〈国会での質疑を経ても、不明な点は残っている。真相が分かった段階で、安倍氏は丁寧に説明責任を果たすべきだ〉と書くが、証人喚問を明示的に求めないばかりか、2021年の通常国会で引き続き追及する構えの野党に対し〈今回の不記載は、国政全般を揺るがすような問題とは言えまい。スキャンダルの追及に明け暮れるだけの国会にしてはならない〉とも書いている。もう打ち止めにしたいという安倍氏、与党の本音の代弁をしているかのような書きぶりだ。

 産経は〈疑惑を晴らすべきは安倍氏自身である〉とは書いても、証人喚問に言及せず、日経も〈今後も真相究明と国民への説明の努力を続けていく必要がある〉と書くのみだ。

 議員辞職について、社説ではっきり言及しているのは東京のみだ。23日、検察が安倍氏から事情聴取したことを受けた社説で「議員辞職にも値する」と題して〈そもそも真実を知る努力はしたのか。それを怠り、事実と異なる答弁を国会で繰り返したなら、その罪は重いと言わざるを得ない。これだけでも議員辞職に値しよう〉と書き、26日も、改めて〈議員辞職を含めて責任の取り方を熟慮すべきではないか〉と、促した。

 東京同様に安倍氏の責任を厳しく追及してきた朝日は〈さまざまな疑念に答えることが、国会議員を続ける大前提だと心すべきだ〉と書き、「安倍氏の『責任』曖昧」(毎日26日3面見出し)と批判的に解説している毎日と同様、辞職を含めた責任の取り方は証人喚問を経たうえで、というスタンスといえるだろう。

 一方、産経は〈国会議員として有権者の負託に応えるには、どこまで行動で責任を果たせるかにかかっている〉(26日)、〈今後の政治活動に期待するためには、安倍氏が今回の問題への謝罪の実を身をもって示せるかにかかっている〉(25日)と、一見厳しい表現だが、議員辞職は求めない立場と読める。

 さらに、読売は〈安倍氏は記者会見で「道義的責任を痛感している。初心に立ち返り、職責を果たす」と述べた。政治の信頼を失墜させた事実を、安倍氏は重く受け止めるべきだ〉(25日)と書く程度で、責任の取り方に正面から言及していない。

 自民党内から、安倍氏の議員辞職や離党の声は聞こえてこない。「安倍一強」時代は終わったはずだが、呪縛はまだ解けていない。

岸井 雄作 (ジャーナリスト)

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岸井 雄作(ジャーナリスト)
1955年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。毎日新聞で主に経済畑を歩み、旧大蔵省・財務省、旧通商産業省・経済産業省、日銀、証券業界、流通業界、貿易業界、中小企業などを取材。水戸支局長、編集局編集委員などを経てフリー。著書に『ウエディングベルを鳴らしたい』(時事通信社)、『世紀末の日本 9つの大課題』(中経出版=共著)。
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