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強権手法、「あえて挑んだ」と評価の読売、分断生んだと毎日

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【論調比較・安倍退陣】「成果」は安保法制とアベノミクスで一致、評価は割れる

公開日: 2020/08/29 (政治)

Reuters Reuters

岸井 雄作 (ジャーナリスト)

 安倍晋三首相の突然の辞任表明に、大手紙は一斉に、1面の編集幹部の囲みの署名記事(通称「論文」)や社説で論じた。

 安倍政権の「レガシー」(遺産)と評価するかは別にして、「実行したこと」は、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使を可能とする安保法制、テロ等準備罪(共謀罪)の制定と、アベノミクスと称される経済政策だ。

 前の3件は、国民の知る権利、憲法9条などとの関係で反対も根強く、強行採決で成立し、内閣支持率は一時低下したが、その後回復という経緯をたどった。支持率回復の大きな要因が、アベノミクス、つまり経済状況の改善あるいは良好さだった。

 辞任表明を受けた各紙の論調も、勢い、まずこれらの評価ということになるが、読売・産経と朝日・毎日・東京で大きく割れたのは、ふだんの論調からも当然だろう。

 安倍政権を支持してきた読売と産経は、これらを「実績」として評価する。

 読売社説は「長期政権の功績大きい」と中見出しを立て、真っ先に経済を挙げ、〈経済再生を最優先に掲げ、大胆な金融緩和や積極的な財政出動によって、景気を回復軌道に乗せた〉と評価した。

 同時に〈日米同盟を基軸として政策を見直したことも評価されよう。集団的自衛権の限定的な行使を容認し、安保関連法を成立させた〉など安保を中心とした業績を並べる。読売のようなニュアンスが、安倍政権の肯定的評価のコンセンサスといえるだろう。

 産経「主張」(社説に相当)も、「多くの仕事成し遂げた」との中見出しで書くが、経済より、もっぱら安保に焦点を当て、〈第2次内閣では、前の民主党政権が不安定にした同盟国米国との関係を立て直した。安全保障環境の悪化に備えるため憲法解釈を見直し、集団的自衛権の限定行使を容認する安全保障関連法を制定した〉などと列挙した。

 そのほか、〈202年ぶりの譲位による天皇陛下の御代(みよ)替わりを支えた〉と言及するあたりは産経らしさといえる。

 一方、安倍政権に批判的な朝日、毎日、東京はいずれも辛口だ。

 朝日社説は、〈巨大与党の「数の力」を頼んで、集団的自衛権行使に一部道を開く安全保障法制や特定秘密保護法、「共謀罪」法など、世論の賛否が割れた法律を強引に成立させた〉と強引さを批判。

 安保・外交でも〈「戦後日本外交の総決算」をスローガンに取り組んだ北方領土交渉は暗礁に乗り上げ、拉致問題も前進はみられなかった〉と、成果の乏しさを指摘。

 経済についても〈株高が進み、企業収益や雇用の改善につながったことも事実である。ただ、賃金は伸び悩み、国民が広く恩恵を実感できる状況ではない〉と冷ややかだ。

 毎日社説も〈安全保障法制や特定秘密保護法制は、国論を二分したが、選挙で得た与党の数の力で押し切った〉と強引さを指摘、〈沖縄県の米軍基地移設問題も県側との対立は深まっている〉と、沖縄問題にも言及した。

 東京社説も〈国論を二分する法律を、野党や国民の反対を押し切って次々と成立させてきた。歴代内閣が違憲としてきた「集団的自衛権の行使」を、一内閣の判断で一転容認し、他国同士の戦争への参加を可能にする安全保障関連法の成立も強行した〉と疑念を示した。
 
 今回の辞任表明を〈「安倍政治」を転換する機会でもある〉と書いている。

 朝日、毎日、東京は、そろって森友学園、加計学園の疑惑や、桜を見る会の私物化問題などにも言及し、〈一強に起因する弊害〉(東京)などと批判している。

 一方、読売はこれらの問題には一言も言及せず、産経は〈政権後期には「モリ・カケ」問題などを追及されたが、総じて安定した国政運営だった〉と、ことさら矮小化するような書きぶりだ。

 コロナ禍の中での退陣であり、「投げ出し」の印象を消すことに安倍首相と政権が腐心したことは、28日の会見にもにじみ出ていたが、安倍政治を肯定的に評価する向きも含め、この間のコロナ対策を中心とする政権の「行き詰まり感」についての認識は、さすがに、ほぼ共通だ。

 朝日は〈首相が旗を振っても広がらないPCR検査、世論と乖離(かいり)したアベノマスクの配布、感染が再燃するなかでの「Go To トラベル」の見切り発車……。多くの国民の目に、政権の対応は後手後手、迷走と映った〉と指摘。

 毎日も〈野党は憲法53条の規定に基づいて臨時国会召集を要求した。しかし、与党は応じず、閉会中審査への首相の出席も認めなかった。感染が地方にも拡大し、国民の不安が高まる中で、首相は約70日間、コロナ問題を巡る記者会見を開かなかった〉と厳しく書いた。

 読売も、前記のように首相をさんざ評価した後に、〈だが、今年に入り、新型コロナの流行への対応は、ちぐはぐだったと言わざるを得ない。2次にわたる大規模な補正予算で様々な給付措置を実現したものの、煩雑な手続きや、支給の遅れに批判が集中した。マスクの一律配付や、首相が寛ぐ動画の配信に、違和感を覚えた人は多い〉と、具体的に問題を書き連ねた。

 各紙、〈感染症対策の実行急務〉(読売)など、当面のコロナ対応を強く求めるのは当然だ。

 その中で、産経は〈コロナ禍という国難は続いている〉と言及しつつ、安倍政権が〝積み残した〟憲法改正など産経の宿願ともいえるテーマに次期政権が取り組むよう求めたのが目立った。

 政策、あるいはスキャンダルの議論はそれとして、安倍首相・安倍内閣の手法が、時代の要請だったみるか、時代を傷つけたとみるか。これこそが安倍政治の評価の最大のポイントなのかもしれない。

 この点について、各紙の「論文」の中から2つ紹介したい。

 読売の橋本五郎特別編集委員は1、2面「総括 安倍政権」で、アベノミクス、トランプ米大統領との関係を梃子にした国際政治での存在感などを評価したうえで、〈長い期間、支持率が50%以上を維持し、長期政権を可能にした背景として……国論を二分するような課題に敢えて挑戦したことにあるように私には思われる〉とする。

 そのうえで、安保法制など〈為政者が必要だとして断固として立ち向かえば、ある程度国民は支持するのである。その「断固さ」次第に薄れていってしまったことが求心力の低下につながったと思われてならない〉と惜しむ。

 ただし、この評価は安倍首相へのもののようで、後継政権には〈安倍長期政権の功罪を踏まえた政権運営をしてほしい〉と求めるのにとどめた。こうした手法も、首相の個性によるところが大きいということだろう。

 これに対し、毎日の小松浩主筆が、「次に進む道 探る時」と題して書いた中で、安倍政治の本質の一つが「マッチョ的な強さ」であり、〈その「強い政治」は、敵か味方かを二分する風潮を社会に持ち込むことにもなった〉と分析する。
 
 日本に限らず、「トランプ政治」など世界の潮流も踏まえてのものだろう。そのうえで〈分断の傷を修復し、融和を取り戻すことは、次の時代の最も優先される課題でなければならない〉と指摘する。

 「安倍時代」にギスギス感ともいえる空気があったのなら、それが変わるのか。後継首相選びのポイントの一つになる。
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岸井 雄作(ジャーナリスト)
1955年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。毎日新聞で主に経済畑を歩み、旧大蔵省・財務省、旧通商産業省・経済産業省、日銀、証券業界、流通業界、貿易業界、中小企業などを取材。水戸支局長、編集局編集委員などを経てフリー。東京農業大学応用生物科学部非常勤講師。元立教大学経済学部非常勤講師。著書に『ウエディングベルを鳴らしたい』(時事通信社)、『世紀末の日本 9つの大課題』(中経出版=共著)。
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