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読売は一貫して政府擁護、産経は「感染症専門家だけの会議残せ」、毎日など「経済優先」を危惧

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【論調比較・専門家会議廃止】批判封じや経済優先などの疑念消えず

公開日: 2020/07/17 (政治)

2月に開かれた専門家会議=官邸HPより 2月に開かれた専門家会議=官邸HPより

岸井 雄作 (ジャーナリスト)

 新型コロナウイルスの感染症をめぐり、科学と政治の関係が改めて問われている。政府が新型コロナ対策で様々な提言してきた専門家会議を唐突に廃止して新たな「分科会」を設置したが、批判封じや経済優先などの疑念も絶えない。大手紙各紙もこの問題を様々に論じているが、専門家の見解を政治がどう受け止め、政策に生かしていくか、議論は続く。

 政府は7月3日、2月から医学的見地から助言を行ってきた専門家会議を廃止し、新型コロナ対応の特別措置法に基づく新たな「新型コロナウイルス感染症対策分科会」を設置した。

 専門家会議は6月24日、日本記者クラブで記者会見し、会議のあり方をまとめた提言を発表した。専門家会議の法的位置づけが明確ではなかったことを踏まえ、「本来の役割以上の期待と疑義の両方が生じた」と総括し、政府に会議の役割の明確化などを求めた。脇田隆宇座長が「国の政策や感染症対策は専門家会議が決めているというイメージが作られ、あるいは作ってしまった側面もあった」と述べたのは、「役割への疑義」への反省だった。

 専門家会議は、2月、政府の対策本部の下に「医学的な見地からの助言」を得るため、公明党の要望を受けて設置。初期には「この1~2週間の動向が瀬戸際」(2月24日)など海外からのウイルス流入を防ぐ水際対策を訴え、3月19日には「爆発的に患者が急増するという懸念」を指摘した。政府が習近平中国国家主席の国賓来日や東京オリンピックをにらんで、それらの延期が決まるまで強力な対策をためらう中で、専門家の立場で国民に向け危機感を訴えた。4月7日に政府が緊急事態宣言を出すにあたっては、「人と人との接触の8割減」「新しい行動様式」など基軸となる提言を次々と打ち出し、存在感を示した。

 もちろん、ウイルスの性格など未解明なことが多い中、専門家といえども状況分析・対応策は手探りで、例えば当初のPCR検査抑制の是非や「接触8割減」の効果などは今後の検証が必要だろう。

 一方、政府は、提言を取り入れることが多かったが、3月に全国一斉休校を実施した際は専門家会議には相談せず安倍晋三首相が独断で決定。アベノマスク配布もしかり。首相会見に専門家会議の尾身茂副座長が同席し補足説明するなど、専門家の権威を頼る一方、徐々に政策スタンスを経済優先に移し、感染拡大阻止を重視する専門家会議との距離が広がりはじめた。「市民に答えるだけでなく、対策をとる必要があると考えた」(脇田座長)というように、政府の方針のあいまいさが専門家会議の「前のめり」の発信を招いた面がある。

 専門家会議の提言発表の会見のさなか、西村康稔経済再生相が別に会見して専門家会議廃止を発表し、そのことを会見場で知らされた尾身副座長が「聞いていない」と困惑の表情を浮かべたのは、政府が専門家会議の提言を警戒していたことを暗示している。

 尾身氏は新設の分科会の会長に就き、7月1日の国会質疑で「専門家会議を発展的に移行するのは知っていた。西村大臣が同じ時間に会見したということについて驚いたということ」と釈明したが、西村経済再生相には与党内からも「専門家会議廃止に相談がなかった」との批判が噴出し、「『廃止』という言葉は強すぎた。発展的に移行していく」(6月28日の会見)と釈明に追われた。

 7月6日、新設の「分科会」が初会合を開催した。専門家会議メンバー8人のほか、現場の医師や保健所の代表、知事会やマスコミの代表、経済の専門家など幅広い人材を集めたのが専門家会議との最大の違い。「感染拡大防止策と社会経済活動の両立を持続させることが重要な課題だ」と西村経済再生相が語ったように、早速、10日からのイベント参加者数の上限緩和(1000人から5000人に)を予定通り実施することなどを承認した。

 他方、尾身会長は、夜の街など感染拡大の中心になっている場所や人への重点的な検査を進めることや保健所の機能強化などを提案し「もう時間が無くなってきた。政府と都道府県の強いリーダーシップをお願いしたい」と、専門家の立場で訴えた。

 この問題の報道スタンスは大手紙の間でも違いが出ている。

 専門家会議廃止→分科会の唐突感も含め、「廃止発表」と専門家会議の「提言発表」が重なった6月25日朝刊で、朝日は1面左肩で「廃止」の本記と「提言当日 『政府急きょ発表』」と書き、3面で「政治と科学 問われる距離」と、専門家会議の提言を詳述し、政府批判を含む提言を政権が警戒していたと報じた。

 日経は1面本記のほか、中の面で「専門家の助言、あり方課題」と比較的大振りの解説記事を載せ、発足当初から専門家会議と政府のズレを指摘。26日朝刊4面(政治面)でも「方針『逸脱』封じ 権限明確に/廃止の専門家会議とは溝」との見出しの解説記事で、改めて専門家会議との溝が広がっていった経緯を時系列で振り返り、専門家が政府方針から逸脱しないようにするのが分科会への改組の狙いだと強調した。

 25日朝刊は事実関係を書いた程度だった毎日は、分科会の初会合を報じた7月7日朝刊では1面本記を受け、4面に「『感染対策と経済』両輪/官邸主導へ『幅広く』」と大型の検証記事を掲載し、政府が経済重視にかじを切り、厳しい感染症対策を発信し続ける専門家会議への不満から、〈分科会の新設によって、主導権を確保したい考えだ〉と書いた。

 産経も7日に分科会について「幅広い専門家 議論拡散懸念」の見出しで、〈専門家の分野は幅広く、議論が拡散する可能性があるだけに政策決定過程の透明化が求められる〉とくぎを刺し、特に〈感染症の専門家の意見が埋没し、見えにくくなる可能性もある。……感染症対策と経済の両立には、国民の理解は欠かせない。国民が納得する「落としどころ」を模索するのに、政府は一層苦心することになりそうだ〉と警告するなど、日ごろの安部政権支持とは趣を異にした解説を掲載した。

 日ごろ産経とともに安倍政権支持の読売は6月25日朝刊1面で「廃止」を主に、専門家会議が政府主導の情報発信を提言したことを書き、2面の関連記事では専門家会議の「前のめり」の反省に絞って書き込み、7月7日朝刊も2面で検査拡充などその日の分科会の議論を淡々と書いたのに続けて、「法的根拠明確に」との2段見出しで〈専門家会議ではあいまいだった法的根拠も明確化し、メンバーの専門的な知見を政府の対応に生かす体制を整えた〉と、政府の対応を評価し、他紙とは際立った違いを見せた。ちなみに、新設の「分科会」には南砂読売新聞東京本社常務が加わっていることと、こうした報道スタンスは無関係ではないだろう。

 社説でも各紙は論じた。

 まず、専門家会議にこの間の取り組みを、基本的に評価する点では一致する。

 朝日(6月26日)〈専門家会議は、3密の回避、人との接触8割減、新しい生活様式などを提唱し、対策の中心的役割を担ってきた。感染拡大への危機感を背景にたびたび会見に臨み、時間をかけて質問に答え、メンバーらはSNSも使って情報を発信してきた。その姿勢と試みは高く評価できる〉

 東京(27日)〈三密の回避や、人との接触八割減、感染予防のための「新しい生活様式」などの提言は、政府の対策で重要な役割を果たしてきた〉

 読売(7月7日)〈専門家会議は、流行の初期にクラスター(感染集団)対策を優先する方針を示すなど一定の成果を上げたと言える〉

 専門家会議の「前のめり」「踏み込みすぎ」についても、むしろ政府の問題との指摘が多い。

〈専門家会議が前に出過ぎだとの批判は確かにあった。だが、その責任の多くを負うのは政府の側というべきだ。……安倍首相も西村担当相も、国会や会見で方針を聞かれるたびに「専門家の意見を踏まえ」を繰り返し、自らの言葉で説明し、理解を得ようという姿勢を欠いた〉(朝日)

〈主体的に提言を繰り返したのは、感染拡大への危機感からだ。踏み込みすぎとの批判はあったが、そもそも政府がコロナ対策で本来の役割を果たせていなかったことに問題がある。この4カ月余りを振り返ると、政府が専門家会議を都合よく扱ってきた面は否めない〉(毎日27日)

〈二月末、専門家の意見を聞かずに決めた全国一斉休校などに批判が出ると、政府はその後、判断の責任を専門家に押し付けるような態度を繰り返した。政府自ら政策を決め、国民と共有しようという姿勢は、そこにはうかがえない〉(東京)

 一番厳しいのが産経(6月30日)で、〈問題はむしろ、誰が意思決定をしているのか分からないと指摘された安倍晋三政権の方であろう。進むべき道を決定するのも、責任を負うのも、政治家の職責で行われるべきである〉と指摘した。

 読売も、〈専門家が前面に立ったのは、政府が水際対策や給付金事業などで省庁間や自治体との調整に追われ、国民とのコミュニケーションが疎かになったためだろう〉と、政権を庇いつつも問題を指摘した。

 では、分科会への改組自体はどう見るのだろう。専門家の意見を踏まえ、政府(政治)が総合的に判断するのは当然だが、専門家会議を廃止することを含めた組織の在り方や情報発信はどうあるべきか、ということになる。

〈改組することに異を唱えるものではない。だが……こんな粗雑で強引な進め方をして、次の感染の波を乗り切り、社会経済活動との両立を図れるのか、疑問を禁じ得ない〉(朝日)、〈感染症対策は経済状況との微妙なバランスが必要になる。……今回の廃止に伴い、経済活動を優先するあまり、感染症対策の科学的知見が軽視されることがあってはならない〉(毎日)、〈専門家との溝を残したまま政策を進めても、第二波への備えができるのか疑問だ〉(東京)など、今回の専門家会議廃止の唐突さ、不明朗さへの批判が出るのは当然だろう。

 ただ、そうは言っても、〈政府はそれ(幅広い分野の専門家の見解)を尊重しつつ、最後は自らの判断で施策を決め、責任を引き受ける。そんな関係の構築と覚悟が欠かせない〉(朝日)と、幅広い専門家を集めて意見を聞こうということ自体は、大半が肯定。中でも読売は〈感染防止と経済活動の両立に向けて、多角的な視点を政策に反映させる体制を整えたのは時宜を得ていよう〉と、政府の進め方をここでも全面的に評価する。

 これに対し、分科会に真っ向、異を唱えるのが産経だ。

〈国の方針を決めるときに重要なのは、専門家の意見がきちんと届き、どう反映されたかが見える透明な仕組みにすることだ。政府の方針は逆行していないか。……異なる分野の専門家を集めて議論は深まるか。闘う相手は感染症である。医学や感染拡大に関する専門家の見立ては不可欠であり、単独で存続させるべきだ。経済や危機管理の専門家による分科会も別途設けて意見を聞き、政策決定は政府が行う。それが筋ではないか〉

 感染防止と経済活動の両立に向け、政治が感染症専門家を抑えた格好だが、それは専門家を隠れ蓑にはできないということでもある。感染第2波を見据え、日本の新型コロナ対策はまさしく正念場を迎える。
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岸井 雄作(ジャーナリスト)
1955年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。毎日新聞で主に経済畑を歩み、旧大蔵省・財務省、旧通商産業省・経済産業省、日銀、証券業界、流通業界、貿易業界、中小企業などを取材。水戸支局長、編集局編集委員などを経てフリー。東京農業大学応用生物科学部非常勤講師。元立教大学経済学部非常勤講師。著書に『ウエディングベルを鳴らしたい』(時事通信社)、『世紀末の日本 9つの大課題』(中経出版=共著)。
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