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産経、政権批判に転換

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【論調比較・森友文書改ざん】「安倍一強」の潮目の変化を象徴か

公開日: 2018/03/20 (政治)

Reuters Reuters

長谷川 量一:論調比較 (ジャーナリスト)

 学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の決裁文書改ざんは、朝日新聞の見事なスクープになり、今年の新聞協会賞確実と言われるが、極めて微妙な問題だけに、他の新聞各紙の当初の報道ぶりは、内容を取材でなかなか確認できずに朝日を後追いできなかったこともあり、かなり温度差があった。その中で、安倍政権を支持する産経の報道は、当初は腰が引けた感があったが、改ざんが明確になって以降、厳しい論も展開し、その〝変身〟ぶりが注目されている。それは「安倍一強」の潮目の変化を象徴しているようにも見える。

 最初に朝日が報じたのが3月2日朝刊。1面トップで「森友文書、財務省書き換えか 『特例』などの文言消える」と打った。ただ、この記事で「朝日新聞は文書を確認」と書かれていたが、新旧文書を並べた写真など「ブツ」(改ざん前の文書)が明示されなかったこと、朝日以外のマスコミ各社が事実確認できなかったことから、しばらく他紙の報道も「朝日新聞によると」という苦しいものになった。それだけ厚いベールに包まれたネタだったということでもある。

 その後の他紙の報道ぶりをざっと見ておこう。

 2日夕刊で読売が3面2段見出しの記事で「朝日が報道」として、国会でのやり取りを記事にし、3日朝刊では各紙が、財務省が6日までに報告するとの答弁を中心に書いた。この朝刊の掲載の面と見出しは、毎日が1面3段と2面横凸版付き3段、読売が4面(政治面)2段、産経が5面(同)3段といった扱いで、〝手探り〟といった趣の中でも、読売、産経の消極ぶりが目立った。

 週末をはさんで報道が一気に広がるのが6日夕刊、7日朝刊から。財務省が報告期限の6日に大阪地検の捜査中を理由に「調査は困難」と〝ゼロ回答〟というとぼけた対応をしたことから、与党にも「批判が自身に向かう」との危機感が広がった。財務省は、問題の決裁書を8日に出すと約束、しかし8日には過去に国会に提出したのと同じ文書を再び出すに及んで野党が完全に審議拒否。9日には文書改ざんに関わったともいわれる近畿財務局職員の自殺が発覚、佐川宣寿氏の国税庁長官辞任、12日の書き換え正式発表……と事態は急進展。各紙の扱いも連日のように1面、社会面も動員する〝総力戦〟へと、一気に燃え上がった。

 その過程で、安倍政権への各紙の距離感を反映した報道の〝温度差〟は毎度のことだが、産経の〝ブレ〟が注目された。

 産経が1面で報じたのは8日朝刊の3段見出しで「森友文書写し きょう提出」が最初。夕刊がないことを割り引いても、扱いの冷淡さが目立った。それが、9日朝刊で財務省の以前と同じコピー提出を1面トップで書いてからは「佐川氏辞任」、「書き換え認める」、「14文書書き換え」、「書き換え 理財局指示」「佐川氏証人喚問へ」と14日を除き15日まで1週間で6回1面トップで扱った。

 同じ安倍政権支持の論調が目立つ読売は、1面に出したのは6日夕刊の3段見出しで「調査は困難」と書いたのが最初と、産経よりは先行。以降、連日のように1面に顔は出すが、1面トップで扱ったのは11日朝刊「書き換え求める」が最初で、12日朝刊、夕刊、13日朝刊、夕刊、14日朝刊、夕刊、15日朝刊まで1面トップ8連発。ただ、10日朝刊で佐川辞任を2番手で扱ったのは、米朝首脳会談開催の発表と重なったとはいえ、4紙では唯一のトップ外しだけに、違いが目立った。その後、16日夕刊、17日朝刊もトップで扱った。

 毎日は、1面での扱いは、3日の後、5日夕刊で3段、6日夕刊トップ、7日朝刊3段、7日夕刊トップ、8日朝刊3段、夕刊トップ、9日朝刊3段、10日朝刊トップ、夕刊3段、11日朝刊トップ、12日朝刊3段、夕刊、13日朝刊、夕刊がトップ、14日朝刊3段、夕刊、15日朝刊トップ、夕刊3段、16日朝刊、夕刊トップ――といった具合で、ほぼ連日、朝・夕刊いずれかで1面トップを飾りながら〝連打〟。16日朝刊では「ごみ報告書は虚偽」と、業者の証言をスクープしている。

 紙面の扱いの大小だけでなく、記事の書きぶりも見ておくと、産経は当初、問題の〝火消し〟に努めるような報道ぶりが目立った。初報の3日朝刊で、決済手続きの過程の文書の一つだろうとの政府関係者の見方を書き込み、6日の記事では記事全体の前文で<朝日は5日現在で、書き換え前とする「契約当時の文書」を「入手」したのではなく「確認」したとしており、これが与野党の神経戦の激化を招いている>、本文でも、<政府内には、朝日が文書を「入手」としていないことを疑問視する向きもある>とわざわざ書き、元大蔵官僚の高橋洋一嘉悦大教授の「事実なら…財務省解体がありうる。誤りなら朝日が危機だ」とのコメントまで載せた。

 9日3面で紙面の3分の2を割いた記事でも<財務省の説明では、近畿財務局で決裁に関わった27人にヒアリングしたところ、全員が決裁後の書き換えを否定した>と特記し、自民党の和田政宗参院議員が自身のブログに書いた「朝日新聞さん、まさか文書を取り違えてはいないと思いますが…」とのコメントを引用。高橋教授を再び登場させ、「朝日が、異なる決裁文書を見比べて、書き換えられたと思いこんだのではないか」とのコメントを掲載、見出しに「『朝日は根拠を示して』元大蔵官僚」と見出しにまで取っている。

 このころは、産経が挙げた朝日の記事の「確認」との表現などを材料に、ネットではネトウヨを中心に「朝日の立証責任」を騒ぎ立てる向きがあり、誤報の場合は「最初の謝罪が肝心」(前大阪市長の橋下徹氏)、「社長のクビが飛ぶぐらいじゃ済まないかも」(経済評論家の上念司氏)といった声まであっただけに、そうした流れに乗っての報道にも見える。

 11日にも、1面トップで「書き換え認める」と書きつつ、2面の受けの記事で「『改竄ではなく訂正』 自民幹部『問題なし』冷静」との見出しを立て、<自民党幹部は「改竄ではなく訂正はあったようだ。そのレベルだ」と語った。与党幹部は書き換えについて「少なくとも近畿財務局内部の話とみられ、麻生太郎副総理兼財務相の進退問題には発展しない」と説明する>と書いている。

 その産経も書きぶりを変えたのは、財務省が改ざんを公式に認めたことを報じた13日朝刊。特に目を引いたのが社説に相当する「主張」だ。この13日朝刊で各紙が一斉に社説を掲載する中、産経は「国民への重大な裏切りだ 『信なくば立たず』忘れるな」との見出しを掲げ、極めて明快に、この問題を切っている。

 まず、<安倍晋三政権はこの1年、土地売却や財務省の対応などに問題はないと答えてきた。これを覆す事態である>と、政権の責任を明快に指摘。そもそも公文書の位置づけとして<国などの行政機関の活動の基盤となり、歴史の証しともなるものだ。それを正しく取り扱うことは、民主主義の根幹を成す。だからこそ、偽造や変造は刑法上の罪にあたり、重い罰則が設けられている>と指摘。ちなみに、この日の社説で「民主主義の根幹」との同じ言葉を使うのが、朝日の<民主主義の根幹を掘り崩す行為である>、毎日<民主政治の根幹を揺るがす前代未聞の事態である>。ちなみに、読売は<行政に対する国民の信頼を傷付ける浅はかな行為である>、日経も<行政への信頼を失墜させる行為である>と、2紙は同じ書き方だ。趣旨に大きな違いはないと言うかもしれないが、ここは、産経、朝日、毎日のように、「民主主義の根幹」と、大上段に構える方が収まりがいい。

 さて、産経の「主張」は他の論点についても、<行政内部の問題にとどまらないのは、安倍政権が国会答弁や記者会見で、事実に基づかない説明を続けてきたことである。結果として、政権そのものに対する国民の信頼を傷つけたことを、直視しなければならない><書き換え疑惑が報じられてからの対応が鈍かった点は目を引いた。……巨大与党の数の力が、真摯な解明を不要としたのか>と、政府・与党の対応をバッサリ切り、佐川氏らの証人喚問など国会招致にも<(安倍首相が)信頼回復に向けて「全力を挙げて取り組む」という以上、関係者の国会招致などにも積極的にあたるべきだ><与野党は協力して、国会招致を実現すべきである>と、明快に必要性を指摘。<佐川氏を国税庁長官に起用した麻生氏の責任も重大である。佐川氏への疑問が拡大する中でも「適材適所」と擁護していた><安倍首相には、重大な失政と認識して対処してもらいたい>と、首相、財務相の責任にも言及している。

 もちろん、すべての記事がここまでクリアというわけではなく、1面左肩に掲載した「『最強官庁』の呆れた隠蔽工作 徹底的に膿を出せ」との編集局次長兼政治部長論文では、<検察当局は近畿財務局のパソコンを解析し、上書き前の文書を入手していた。万事休す。財務省は白旗を上げ、文書書き換えを認めた>と書き、「近畿財務局職員27人が書き換え否定」との産経の再三の報道をそれとなく修正したうえで、<公文書改竄が常態化していたのではないかと疑われても仕方あるまい>などと、もっぱら財務省を攻撃。<安倍晋三首相は事態収拾に向け、強い指導力を発揮するとともに国民が納得できるよう真摯に説明すべきだろう。それでも「内閣の責任」を問われるならば、信を問う手もある>とまで書くあたりは、産経らしさというべきだろう。

 それでも、森友問題の本質にかかわる「用語」でも、産経は〝英断〟を下している。

 13日の各紙の見出しを比べると、朝日、毎日、東京が「改ざん」、読売、産経、日経が「書き換え」と表記し、真っ二つに割れた。広辞苑(岩波書店)には、改ざんは「字句などを改めなおすこと。多く不当に改める場合に用いられる」、書き換えは「書き改めること」とある。産経は14日紙面の見出しで「改竄」と表記し始めたのだ。13日の「主張」では<都合の悪いことを隠すため、公文書をこっそりと書き換えるのは改竄というべきである>と、明快に書いている。この点でも、社論の書きぶりに合わせて修正がされた形だ。

 産経のこうした紙面展開をどう受け止めるかは人それぞれだろうが、「安倍一強」のほころび、政界の潮目の変化を象徴しているとは言えるのではないか。
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