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脱原発の河野氏を読売と産経が警戒、東京は「姿勢後退」と牽制

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【論調比較・総裁候補の原子力政策】毎日は「河野・進次郎が脱原発でタッグ」と報道

公開日: 2021/09/23 (政治)

Reuters Reuters

 菅義偉退陣後の新首相を実質的に決める自民党総裁選が9月17日告示され、29日の投開票に向け、連日、4候補の動向、政策が大きく報道されている。政策については、経済、安保、年金、子育てなど多岐にわたり論戦が繰り広げられるが、原子力政策は中でも、各候補の違いが目立つだけでなく、大手紙の報道ぶりも、各紙のスタンスの違いを反映して特徴が出ている。

 原子力政策は、世論調査で人気が高い河野太郎行政改革担当相が「脱原発」を持論とすることから、総裁選でも各候補の主張がぶつかり合う最注目の政策項目といえる。

 河野氏は東日本大震災における東電福島第1原発事故を受け2012年、発起人として超党派議連「原発ゼロの会」設立を主導した筋金入りの脱原発論者。安倍晋三内閣で入閣してからは、発言を控えてきたが、今回の総裁選立候補で注目された。

 立候補の記者会見、告示前後の立会演説会や公開討論会などで「安全が確認された原発を再稼働させるのが現実的だ」と再稼働を容認しつつ、新増設は「現実的ではない」とし、「これから新増設がなくなれば、原子力は順次減っていく」「緩やかに原子力から離脱していくことになる」と述べている。

 併せて、核燃料サイクル(使用済み燃料を再処理し、取り出したウランやプルトニウムを燃料として再利用)について、「なるべく早く手じまいすべきだ」と中止を主張。原発が「トイレのないマンション」といわれるように、処分の見通しが立っていない「核のごみ(高レベル放射性廃棄物)」の最終処分について、議論を本格的に進める考えも示している。

 岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行はいずれも再稼働を容認・積極推進の立場で、「脱原発」とは距離を置く。

 岸田氏は「核燃料サイクルは維持しなければならないと思っている」と断言。各地の原発で使用済み核燃料の保管容量が限界に近づいており、「サイクルを止めたら、今動いている原発すら動かせなくなる」と指摘する。

 2030年度に温室効果ガスの排出「13年度比46%減」を打ち出した政府方針に関し、「原発30基を稼働することを前提とした数字だ」として、「すべての大臣がこれに署名している」と、現役閣僚である河野氏を牽制している。

 高市氏は「太陽光、風力は(出力が)変動する。産業がしっかりと成り立つのか。選択肢として原子力の平和利用は必要だ」と主張し、既存原発の建て替え(リプレース)が「必要だ」と明言。「(安全性が高いとされる)小型原子炉の地下設置や、高レベル放射性廃棄物を出さない核融合炉に研究開発費を投入していくべきだ」と、新技術の国家プロジェクトとしての開発強化を訴えている。

 核燃サイクルは「継続せざるを得ない」との立場で、気候変動問題への対応とエネルギー政策を一元化した「環境エネルギー省」の新設も唱えている。

 野田氏は長男が人工呼吸器着用が必要な「医療ケア児」であることにも触れ、「エネルギーは安定供給が前提だ」として安定的に発電する「ベースロード電源」として原発の維持の姿勢を見せるとともに、「潜在力が高い地熱発電を進める必要がある」と主張している。

 当面の再稼働は河野氏も容認していることから、将来的な「脱原発」をめぐり、核燃サイクルが焦点という構図になったといえ、大手紙も特集記事で取り上げるなどしている。

 河野氏の人気もあって、警戒感を漂わせるのが、原発推進の論調を掲げてきた読売、産経だ。

 産経は9月20日3面の半分近くを使って「総裁選 核燃料再利用が焦点に」との記事を掲載。河野氏の核燃サイクル見直し発言に〈自民党内の原発推進派や電力業界などが警戒感を強める。再処理を止めれば使用済み核燃料の行き場がなくなるため今後の原発の運転に大きな影響を与えるだけでなく、立地自治体や住民の反発にもつながり、慎重な議論が求められている〉と、ストレートに「反河野」といえる書きぶり。

 <2050年脱炭素に向け適切な電源構成を考えた場合、二酸化炭素(CO2)を排出しない原発の有効活用は欠かせない。核のごみを増やさない観点からも核燃料サイクルを回すことは不可欠で、政府には深い議論と国民に対する説明が求められる〉と、核燃サイクル維持を強く訴える。

 読売は16日2面で「『核燃』主張 隔たりも」との見出しの記事を掲載したが、河野、岸田、高市の3氏の主張を紹介する「ニュートラル」な記事。

 読売のスタンスが明確になるのは社説で、この間、関連する2本を立て続けに掲載。17日の「次世代原子炉 脱炭素につながる技術育てよ」は、高温ガス炉をふくむ小型炉(小型モジュール炉=SMR)を取り上げ、〈通常の原発に比べれば建設費の削減が期待できるうえ、小型のため立地も柔軟に選べることから各国で注目されている〉などとして、〈原子力技術の開発には、数十年に及ぶ長期的な計画が不可欠だ。将来を見据え、今から手を打っておく必要がある〉と訴える。

 直接総裁選を論じたものではなく、各候補の主張にも言及していないが、総裁選公示日の掲載である。小型炉を強く訴える高市氏を応援する形になっている。

 22日の「自民党総裁選 経済再生と脱炭素にどう導く」では、河野氏の「脱原発」に〈再生エネは天候などに発電量が左右される。不足分を補う原発や火力発電などの安定的な電源か蓄電池が不可欠だが、電力需給を調整できる大規模蓄電池は開発途上だ。裏付けなく再生エネ100%を掲げるのは危うい〉と批判し、〈岸田氏と高市氏は原子力の技術維持を訴え、次世代の原発である「小型モジュール炉」の開発を唱えている。

 電力の安定供給と脱炭素を両立できる有効な施策について、論議を深めねばならない〉と、岸田、高市両氏の主張にエールを送る。

 同じ原発推進の日経は16日朝刊産業面で「行き詰まる核燃サイクル」と題した大ぶりの記事で、河野氏や岸田氏の主張に触れつつ、再処理工場(青森県六ケ所村)の稼働の見通しが立たない状況を解説。21日朝刊では3面の3分の2をつぶして「原発建て替え是非 争点に/長期活用に温度差/核燃サイクルも論点」と、各候補の主張を中心に解説。16日の記事ともども、解決の方向性が見いだせない現状を伝えるのが主眼で、問題の難しさを浮き彫りにしている。

 脱原発3紙は、もろ手を挙げて河野氏を支持というわけではない。

 最も原発に厳しい東京は、19日朝刊1面で「原発再稼働 全候補容認」との見出しを付け、文中では河野氏が核燃サイクル中止を主張したことに触れつつ、あえて河野氏の脱原発色は見出しに取らなかった。

 これより前、16日の特集面「こちら特報部」は「河野さん『脱・脱原発』なの?」「党内配慮?真意はどこに」と書き、むしろ、河野氏の姿勢の後退を牽制するトーンを前面に出した。

 記事の中で、「立ち居振る舞いを現実的にして、党内の支持を得るため気遣いをしている。……政策をよく見てみると、脱原発は放棄していない。首相になってからかじを切る」とのジャーナリストの鈴木哲夫氏のコメントも紹介している。

 毎日は菅義偉政権が安倍前政権から「脱炭素」に関して、原発の位置づけを軌道修正したとの認識から、河野氏と小泉進次郎環境相の動きをこの間の紙面でも書き込んできた。

 菅首相退任表明前の8月20日朝刊1、3面の「再考 エネルギー㊤」では、菅氏が後ろ盾になり、河野、小泉両氏がタッグを組んだ成果として、(1)6月18日の成長戦略の原発の記述から「最大限活用」という文言削除、(2)同日の「骨太の方針」に初めて「再生可能エネルギー最優先」記述、(3)7月の新しいエネルギー基本計画(エネ基)の素案に、経済界や経済産業省が訴える「原発の新増設」盛り込まず――の経緯を詳述している。

 ちなみに、毎日の山田孝男特別編集委員のコラム「風知草」(9月6日)は〈「週刊文春」9月9日号がすっぱ抜いた「河野(太郎)パワハラ音声」は、今秋の、エネ基の閣議決定に先立って開かれたオンライン会議の一幕である。

 再生可能エネルギー導入目標の表記をめぐり、経産官僚を激しく叱責する河野の怒声が暴かれている。経産省側が文春に音源を提供したことは想像に難くない〉と書いている。

 毎日は16日朝刊8面の大半を使って「『反核燃サイクル』変節なし/河野氏の原子力政策/岸田氏は『維持』主張」との見出しを掲げ、高市氏を含む3紙の主張を詳報しているが、全体として、紙面の占める割合を含め、河野氏の主張に理解を示すトーンになった。

 朝日は16日7面で「核燃サイクル 総裁選争点化も/河野氏の『見直し』発言 自民推進派反発/岸田氏『維持』 高市氏は新技術開発訴え」の記事を載せ、自民党内で原発のリプレース推進を唱える議連の動きが活発化していることにも触れ、「河野氏は現実路線に転換したと言われるが、将来的には原発をゼロにする考えを示し、核燃サイクルも否定している」(稲田朋美議連会長)との河野氏批判を紹介し、総裁選での対立軸を示した。

 総裁選は人間関係を含め、複雑な要素が絡み合って展開していくが、こと原子力政策については、主張の違いがかなり明確になっている。河野氏の脱原発への自民党内の対抗力がどの程度のものか。高市氏が安倍路線継承を訴え、原子力でも「マッチョ」な主張を展開すれば、岸田陣営には安倍前首相時代の経産省人脈を含む政権幹部が参集しているとも伝えられ、投票日に向け、どのような論戦が展開されるか、注視したい。

岸井 雄作 (ジャーナリスト)

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岸井 雄作(ジャーナリスト)
1955年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。毎日新聞で主に経済畑を歩み、旧大蔵省・財務省、旧通商産業省・経済産業省、日銀、証券業界、流通業界、貿易業界、中小企業などを取材。水戸支局長、編集局編集委員などを経てフリー。著書に『ウエディングベルを鳴らしたい』(時事通信社)、『世紀末の日本 9つの大課題』(中経出版=共著)。
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