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菅辞任 読売、産経も「やむを得ない」

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【論調比較・菅退陣】説明を尽くさない姿勢への批判でも一致

公開日: 2021/09/05 (政治)

Reuters Reuters

 菅義偉首相が9月3日、再選を目指していた自民党総裁選への立候補を見送ると表明し、退陣が決まった。新型コロナウイルス対策の不手際で内閣支持率が低迷し、党内の「菅離れ」が急速に進行する中、打開を狙った党役員人事も難航し、〈これほど無残な退陣劇はちょっと思い出せない〉(政治学者の御厨貴氏=朝日4日朝刊オピニオン面)というように、まさに万策尽きた末、自ら身を引く選択をせざるを得なかったものだ。

 大手紙は4日朝刊で一斉に大きく報じ、社説(産経は「主張」)で取り上げ、また日経を除く5紙は1面に主筆や政治部長名の囲み記事(通称「論文」)も掲載した。

 政権支持の論調が目立つ読売、産経も、退陣は〈やむを得ない〉(産経主張)など、当然視する。政権に批判的だった朝日、毎日、東京は安倍晋三前政権との継続性・一体性を踏まえ〈求められるのは、安倍前政権を継承した菅政治の反省と検証だ〉(毎日社説)など、安倍政治を含め総括する必要を指摘している。

 論調の違いは置いて、今回の退陣劇の理由、退陣に至る経緯については、新型コロナ対策の不備で支持率が低下するなか、〈党役員人事を行う方針を唐突に打ち出すなど、政権運営が迷走して批判が高まり、退陣に追い込まれた〉(読売社説)、〈局面打開を狙って人事刷新という奇手を繰り出そうとしたものの、かえって党内の不興を買い、万策尽きてしまった〉(日経社説)との見立ては、各紙共通する。

 菅首相の説明不足も各紙、厳しく指摘する。毎日1面の前田浩智主筆論文「安倍政権からの総括を」は
〈「言葉」も貧弱だった。この1年で顕在化したのは、国民と向き合うことなく、説明を型通りにすませる独善的な姿勢だった。民主社会で重要なのは、政府が市民と課題を共有し、解決に向け協力を得ることである。その際に欠かせないのは政治への信頼であり、リーダーの言葉こそが醸成する力を持つ。冗舌である必要はない。ただ、ペーパーを棒読みするような話法では国民に伝わるはずもなかった〉
 朝日の坂尻顕吾政治部長論文「説明尽くさぬ姿勢 限界に」は3日の退陣表明すら短時間のぶら下がり会見(立ち話)だけだったことなども引き、
〈説明を尽くそうとしない姿勢こそが、菅首相が行き詰った理由を端的に示している〉と、
 東京の高山晶一政治部長論文「国民向かぬ『一強』信失う」も
〈国民の納得を得て政策を進める姿勢に一貫してかけていた〉と断じる。

 読売の村尾新一政治部長論文「説明尽くす姿勢 見えず」は〈能弁でなくとも、時に失敗を率直に認めつつ、経過を包み隠さず丁寧に話す姿勢が必要だった〉、
 産経の佐々木恵美政治部長論文「ワクチン頼み 『言葉』足りぬまま」も〈コロナ有事においては、トップが明確な展望を示して国民に訴え、一丸となって対処するよう鼓舞する発信力、言葉の力がやはり必要だ〉と、〝与党メディア〟といわれる2紙としてはかなり厳しい書きぶりといえるだろう。

 ただし、後述するように、コロナに関する説明不足に限定するのが2紙の特徴でもある。

 菅政治への評価はどうか。デジタル庁創設や携帯電話料金値下げについては読売、産経が成果として高評価するほか、一般記事も含め、各紙、問題点や課題はあるとしつつ、肯定的な書きぶりが多い。これ以外は評価が割れ、また厳しい評価が目立った。

 まず、五輪は事前の世論調査で7~8割が反対し、開催後は半数以上が「開催してよかった」としつつ、菅政権支持率のアップには結びつかなかった。

 これについては、産経主張が〈中止論があった東京五輪・パラリンピックについては、感染防止対策を講じるなど開催を後押しした。五輪やパラ大会が内外から高い評価を得たことは指摘しておきたい〉、
 読売社説も〈1年延期された東京五輪・パラリンピックについては、「安全・安心な大会を実現する」と強調し、中止論を抑えて開催に導いた。……国際社会に対して、開催国としての責任を果たすことができたのは、首相の功績でもあろう〉と、そろって称賛する。

 一方、毎日社説が〈「人類がコロナに打ち勝った証し」とアピールしていた五輪は、感染が収まらず無観客での開催を余儀なくされた。さらに7月下旬からの感染「第5波」で、医療体制は危機的状況となった〉、

 朝日社説は
〈専門家の懸念や閣僚の進言を無視して、東京五輪・パラリンピックを強行した〉、東京政治部長論文も〈緊急事態宣言下で、世論や専門家が強い懸念を示したのに東京五輪を開催〉など、3紙は否定的に書いた。

 3紙は、説明責任を含む政治手法にも切り込む。
〈強権的な手法も反発を招いた。日本学術会議の会員候補6人を任命しなかった問題を巡っても、首相はいまだに理由を明らかにしていない。官房長官時代から、人事権を駆使して省庁を掌握する手法を取り続けてきた。最後までなりふり構わずに人事権を振りかざして物事を動かそうとしたのは、まさに菅政治の本質と限界を露呈したものだった〉(毎日社説)

〈(政治改革は)政策の決定権を、官僚機構から国民に選ばれた政治家に取り戻すのが狙いだが、安倍・菅両政権で弊害も指摘されてきた。その一つが、官僚人事である。新設した内閣人事局を通じて官邸が積極的に関与するようになり、政権中枢の意向に従うものは重用され、従わないものは冷遇されるようになった。その結果、官僚の忖度(そんたく)が横行し、官僚機構の「根腐れ」とも言える状況を招いた〉(東京社説)

〈その本質が端的に表れたのが、政権発足直後の日本学術会議の会員候補6人の任命拒否である。政府に批判的な学者を排除し、その理由をまともに説明することもしない。敵と味方を峻別(しゅんべつ)し、人事権を振りかざして従わせる。質問には正面から答えず、説明責任を軽んじ、国会論戦から逃げる。それは、首相が官房長官として支えた安倍前首相時代から続く政権の体質といってもいい〉(朝日社説)

 学術会議の任命拒否で理由を説明しないことなどは、3紙指摘のように、説明責任を果たさないという、政権の体質といえる問題だが、読売、産経は前述の通り、コロナでの説明不足は指摘しても、政権の体質という問題意識はない。

 自民党の後継総裁選びに向け、菅政権の総括が必要なのは言うまでもない。7年8カ月続いた安倍政権を引き継ぎ、7大派閥中5派相乗りの圧勝で就任した菅総裁・首相は、安倍政権で官房長官という「大番頭」を務めあげ、「安倍政治の継承」を掲げたように、安倍政権からの継続性が宿命でもあった。安倍政権との関係をどう見るかは、菅政権総括の大きなポイントになる。

 朝日、毎日、東京の3紙は、安倍政権と一体に総括すべきだという立場だ。

 中でも最も厳しいのが東京社説だ。安倍、菅の2代の政権を、一体の「安倍・菅政治」と捉え、
〈安倍・菅政治は端的に言えば、国民の代表で構成する国権の最高機関、唯一の立法府である国会を軽視し、国民の声や不安と誠実に向き合おうとせず、説明を尽くそうとしない政治である〉と断じ、学術会議への介入、集団的自衛権の解釈変更などを列挙したうえで、
〈さらに、野党が憲法五三条に基づいて求めた臨時国会の召集も再三拒否してきた。国会を開かず、開いても議論を軽視し、憲法や法律の解釈を、政府の一存で変えてしまう安倍・菅政治は、これを機に終止符を打たね
ばなるまい〉と、批判している。

 朝日社説は〈(総裁選は)1年で行き詰まった菅政権の総括から始めねばならない。……桜を見る会や森友・加計問題など、安倍前政権が残したウミを取り除くことも、政治への信頼を回復するうえで避けて通れない〉と指摘。
 毎日主筆論文も〈派閥の論理で内向きの新首相選びを展開する愚を繰り返してはならない。安倍前政権以降の政治をどう評価するのか。競うべきはそこからである〉とくぎを刺す。

 読売社説は、〈政権が行き詰まったのは、長期化した安倍前政権下で「自民党1強」が進み、首相官邸に権限が集中した結果、多様な意見が届かなくなったことが一因だろう。 「政治とカネ」をめぐる自民党所属議員らの相次ぐ不祥事に、厳しく対処することもなかった。……総裁選では、国民の信頼をいかに回復し、コロナ禍を収束に導くことができるかが問われよう〉と、安倍政権での官邸への権限集中などの問題点を珍しく指摘している。

 これに対し、産経主張は安倍政権のマイナス面には一切触れず、総裁選について〈コロナ対策をめぐって菅政権や自民党が失った国民の信頼を取り戻せるかが最大の課題となる。「ポスト菅」は長期政権を担うリーダーを選んでほしい〉など、抽象的な期待を書くにとどまっている。

 自民党総裁で新しい「表紙」が決まる。表紙や看板を変えるだけでは意味がないと誰しもが言う。野党側の表紙もまだ鮮明ではない。菅首相がコロナ対策に専念しても、続く総選挙までに医療ひっ迫の状況が大きく改善するとは考えにくい。国民には命の選択になる。

岸井 雄作 (ジャーナリスト)

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岸井 雄作(ジャーナリスト)
1955年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。毎日新聞で主に経済畑を歩み、旧大蔵省・財務省、旧通商産業省・経済産業省、日銀、証券業界、流通業界、貿易業界、中小企業などを取材。水戸支局長、編集局編集委員などを経てフリー。東京農業大学応用生物科学部非常勤講師。元立教大学経済学部非常勤講師。著書に『ウエディングベルを鳴らしたい』(時事通信社)、『世紀末の日本 9つの大課題』(中経出版=共著)。
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