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読売、産経、日経は「政府広報」紙面も、社説は全紙が菅首相を批判

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【論調比較・菅首相会見】「説明責任を果たせ」と全紙が

公開日: 2020/12/08 (政治)

Reuters Reuters

岸井 雄作 (ジャーナリスト)

 菅義偉首相の2か月半ぶりの記者会見への評価が芳しくない。

 12月5日に臨時国会の会期末にあたって、国会閉幕の際に行われる恒例のもので、実質的に審議を終えた12月4日夕に行われた。ベトナムなどを訪れた海外での会見を除くと、国内では首相就任直後の9月16日以来。

 折から、新型コロナウイルスの感染拡大の最中であり、安倍晋三前首相の「桜を見る会」前夜祭の費用補填問題などもあって、大いに注目されたが、ほとんどが用意された原稿を読むばかりだったことも含め、人々の心に刺さるようなものではなかった。

 会見は最初に菅首相が発言し、質疑も行われた。

 首相の発言は8日に決定する追加経済対策が中心で、2050年温室効果ガス排出の実質ゼロに向け、技術革新などに投資する企業を支援する2兆円基金を創設するほか、▽デジタル関連予算1兆円超▽営業時間短縮などの新型コロナ対策で地方創生交付金1.5兆円▽ひとり親世帯などへの臨時特別給付金年内支給▽2022年度から不妊治療に公的保険適用など、政権の取り組みをアピール。

 質疑ではGo Toトラベル事業の継続、日本学術会議会員の任命拒否、桜を見る会などの問題について聞かれたが、従来からの国会答弁などの内容を繰り返すにとどまった。

 大手紙の扱いは、大飯原発(福井県)の設置許可取り消し判決という大ニュースと被ったこともあったが、政権へのスタンスの違いで1面は大きく割れたが、社説では菅首相に厳しい指摘で全紙の足並みがそろった。

 会見翌日朝刊1面トップで、会見を扱ったのは大手6紙のうち3紙。大飯原発は、いずれも3段見出しで、2番手または3番手の扱いだった。

 読売=環境投資2兆円基金/コロナ時短対策1.5兆円/ひとり親世帯給付歳支給

 産経=温室ガスゼロ2兆円基金/コロナ時短支援へ1.5兆円/携帯値下げ「改革これから」

 日経=脱炭素支援2兆円基金/デジタル化1兆円/「グリーンは成長の源泉」

 一方、朝日、毎日は大飯原発を大きく凸版見出しを張ってトップで扱い、会見は2番手。

 朝日=「脱炭素へ2兆円基金」/コロナ給付金1.5兆円増

 毎日=桜問題 具体的言及なし/「国会答弁に責任」

 毎日は、「桜」をメインに書き、見出しもこれに絞り、会見記事の後ろに、同じ日に安倍氏が国会内で、検察捜査に「誠実に対応する」と述べた記事をくっつけたが、首相会見記事の中ではコロナ対策などにも触れ、2兆円基金は2面で大きめに扱った。

 朝日は記事の中身は基金など首相の訴えが中心。「桜」は文末に一言触れた程度だが、会見記事の後ろに、毎日と同様に安倍氏発言の記事を付けた。

 さらに、東京に至っては協同労働法成立をトップにする独自の1面を制作し、大飯原発が2番手、「安倍氏秘書を略式起訴検討」を腹に抱え、首相会見は3面左肩3段見出しの地味な扱い。

 東京=「コロナ対応」「学術会議」「桜を見る会」 持論繰り返す

 政権が発信したいことを素直にトップ記事にしたのが読売など3紙で、2兆円基金、時短支援(地方交付金)など文言もほぼそろった。むろん、重要な中身を国民に知らせること自体は重要で、トップ扱いも「あり」だ。ただし、紙面全体の展開のなかで内容をどう評価するかが重要なのはもちろん、トップで首相の主張をそのまま書くこと自体に、新聞界ではしばしば「政府広報」などと陰口を叩く。

 ちなみに、3紙が最大のニュースとした基金については、1日の「成長戦略会議」(議長・加藤勝信官房長官)がまとめた菅政権初となる実行計画で、脱炭素化に向けた「基金創設」は表明済みで、報道もされており、金額が首相会見の〝目玉〟として温存されたことになる。

 朝日、毎日の紙面は、3紙と逆の意味で、意識的な作り方だ。「桜」や学術会議について、「この会見で説明責任を果たしたことにはならない」と、紙面でくぎを刺すということだ。東京は首相の発言に新味無しということで、こういう判断も「あり」ではあるが、いくら何でも扱いが小さすぎる感じは否めない。

 ちなみに4日夜のテレビニュースは押しなべて、感染拡大がトップで、首相会見はその後だった。逆に言えば、国民の関心が感染拡大にあるのは間違いないわけで、首相の発言が、感染拡大に苦しむ人、困っている人などの心に響く内容、表現ではなかったため、テレビの放送順では後回しにされたということだろう。

 大飯原発については、いずれもトップか2番手ということで、1面に値する大ニュースだとの認識は共通ながら、トップにした朝日と毎日が脱原発、原発維持派の読売など3紙がトップにしなかったのは、スタンスの反映だろう。ただ、新聞は特に「歴史の証言者」「歴史の記録者」の責任があるということに留意が必要だ。

 ニュース価値判断は絶対的なものでなく、その日のニュースの中から相対的に扱いが決まるが、この判決が後世、「歴史的判決」と語り継がれることになる可能性もあるという意味で、本来、1面トップで大きく扱うのが自然だろう。読売を除く5紙が、即日、社説で取り上げたのも、事の重大さの反映だ。

 首相会見に関する1面以外の紙面展開は、朝日が3面右半分で「説明責任 背向ける首相」、毎日も2面左6割をつぶして「説明つくされず国会幕」と、国会論戦から会見までを総括して政権批判を展開。

 一方、読売は3面で「首相 『2本柱』前面/温暖化対策とデジタル化」の見出しで菅政権の意向を丁寧に書き込み、産経も「経済成長へ大型基金」などとして菅政権の狙いを解説するなど、1面に準じて、政権へのスタンスの差を反映した紙面展開だった。

 ただし、6社一斉に5日朝刊に即日掲載した社説(産経は「主張」)になると、様相が変わる。

 政権に批判的な3紙が、学術会議任命拒否問題、桜を見る会前夜祭、さらに自民党の吉川貴盛衆院議員が安倍前内閣の農相時代、鶏卵生産大手企業側から現金200万円を受領した疑惑などでの説明責任を果たしていないとして批判するのは当然だろう。

 朝日https://digital.asahi.com/articles/DA3S14720219.html?iref=pc_rensai_long_16_article〈自らが推し進める政策の狙いを丁寧に説明し、国民の理解を得ようという姿勢も、政治の信頼回復に向け、安倍前政権の「負の遺産」を清算しようという決意もうかがえなかった。……説明責任を軽んじ、論戦から逃げ回る姿勢は、前政権から続く宿痾(しゅくあ)のようだ〉

 毎日https://mainichi.jp/articles/20201205/ddm/005/070/081000c〈野党の質問に直接答えず、自分に都合のいい話ばかりを並べ立てて、問題点をはぐらかした安倍氏とスタイルは違う。とはいうものの、「議論封じ」という点では菅首相も同じだろう〉

 東京https://www.Tokyo-np.co.jp/article/72560?rct=ediTorial〈政府側が正しく、誠実に答弁することは正しい法案審議や、三権分立が機能するための大前提だ。虚偽答弁が繰り返される状況は当然、放置するわけにはいかない〉

 特に、国民が注視するコロナ対策について、朝日が〈感染拡大を受けた「Go To トラベル」の見直しは後手に回り、内容も小出しで不十分だった。首相はきのうの記者会見で「極めて警戒すべき状況」「強い危機感をもって対応している」と語ったが、その言葉と実際の施策の間には大きな乖離(かいり)がある。これでは国民の不安は拭えない。……疑問に応える具体的な説明は、首相の口からついぞ聞かれなかった〉と指摘。

 毎日も〈コロナ対策では、ワクチン接種に備えた改正予防接種法が全会一致で成立したが、それだけでよかったのか。……「GoToトラベル」については国会議論が乏しいまま、政府は期限を来年6月まで延長する方針だという〉と、疑問を投げかける。

 こうした3紙の指摘は想定通りといえるが、「与党メディア」の役回りの読売と産経も、意外なほど手厳しい言葉を連ねる。

 読売https://www.yomiuri.co.jp/ediTorial/20201204-OYT1T50265は、通常1日2本の社説を1本だけの大振りで掲載。読売らしく憲法改正問題などにも言及しているが、メインはコロナなど。

 政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長が「個人の努力に頼るステージは過ぎた」と述べているとこなどを引き合いに、〈これ以上の蔓延を防ぐため、観光支援策「Go To トラベル」の見直しも躊躇すべきではない〉〈国が移動を推奨する一方で、自治体が自粛を求める構図は、違和感が拭えない。そもそも「Go To」事業は、感染収束後に始める予定だったのではないか〉〈政府は医療現場の実情を重く受けとめてほしい〉と、後手後手の対応を指弾。

 併せて、菅政権の国民への情報発信についても、〈国民に危機への対処方針を十分に発信してきたとは言えない。国難とも言われる状況を克服するには、行政のトップが自らの言葉で、明確な指針とメッセージを出す必要がある。積極的に訴える機会を増やしてもらいたい〉と批判している。

 読売は学術会議についても〈首相の任命は「形式的」で、実際には推薦通り決まるとした過去の政府答弁との食い違いは、依然として説明していない。政府と自民党は、安全保障政策に批判的な学術会議の提言を問題視し、体制を見直そうとしているが、会議のあり方と任命拒否は別の問題だろう。首相は判断の理由を明らかにせねばならない〉と、一刀両断ともいえる書きぶりだ。

 産経https://www.sankei.com/column/news/201205/clm2012050001-n1.htmlも、〈首相は会見で「極めて警戒すべき状況が続いている。強い危機感をもって対応している」と語った。だが、その覚悟が十分に伝わったとは言えない〉と、国民の心に響かない首相の語りぶりにいら立ちを隠さない。

 具体的にGo To延長などを批判し、〈政治のリーダーが、国民に移動の抑制に重点を置いて呼びかけるべき時期なのに、首相の言動はそうなっていない。……首相は会見で、今は移動を抑えようという明確なメッセージを発信すべきだった。君子は豹変してもよいのである〉と書く。産経としては精いっぱいの表現だろう。

 日経https://www.nikkei.com/article/DGXMZO67024510U0A201C2SHF000も内閣発足後初の国会論戦をふりかえり、〈首相や閣僚は準備した応答要領を読む場面が目立ち……やや迫力に欠けた。……コロナ禍などの難局にどう対応しようとしているのかを国民にもっと訴えていく姿勢が必要だ〉と注文している。

 菅首相の歯切れの悪さもあって、内閣支持率は各調査で下落傾向が続き、共同通信の調査(5、6日実施)で11月から12.7ポイント急落した。なお50.3%と過半数の支持を得ているが、コロナウイルス対策を「評価しない」が55.5%に達し、感染対策と経済のどちらを優先すべきかで76.2%が感染対策を挙げていることなど、政府のコロナ対応への不満、批判が支持率を押し下げているのは明らかだ。

 その中でも特に不評なのがGo Toだ。なぜ、ここまで固執するのか。諸説語られるが、会見翌日の同じ5日朝刊の毎日のコラム「時の在りか」で、伊藤智永記者が「来年夏、コロナが流行していても東京オリンピックはやる。その予行演習が国民総動員で行われているんじゃないか」との見方を紹介、〈私たちは本当の目的を知らされず、目先の割引(実は税金)につられ、「コロナ五輪」大演習に命がけで協力させられているのか〉と書いている。そうであれば、得心が行くが、恐ろしくもある。
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岸井 雄作(ジャーナリスト)
1955年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。毎日新聞で主に経済畑を歩み、旧大蔵省・財務省、旧通商産業省・経済産業省、日銀、証券業界、流通業界、貿易業界、中小企業などを取材。水戸支局長、編集局編集委員などを経てフリー。東京農業大学応用生物科学部非常勤講師。元立教大学経済学部非常勤講師。著書に『ウエディングベルを鳴らしたい』(時事通信社)、『世紀末の日本 9つの大課題』(中経出版=共著)。
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