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コメ輸入制度の闇 米国偏重が多額の税金無駄遣いに

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【農を考える】ミニマムアクセス米 47%を米国産に割り当てたが21年度は失敗

公開日: 2022/05/17 (政治)

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山田 優 (農業ジャーナリスト)

 日本政府は、年間に76万7000トンのコメを、海外から買い入れる。世界貿易機関(WTO)の場で、海外産地に輸入機会提供の義務を負っているからだ。不思議なことに、毎年、47%に相当する36万トンのコメは米国からの買い付け分だ。農水省は意図的な買い入れ操作を否定するが、2021年度末の輸入米入札で、明らかな米国産優遇の操作が丸見えになった。米国のコメに対する不明朗な肩入れは、数百億円規模の財政負担が伴う可能性がある。納税者や農家に対する説明責任がある。

▽シェア確保に焦る農水省

 「農水省は入札がうまくいかないから焦っていると思う」
 コメ輸入に関わる商社担当者の一人は、2022年3月の入札の最中、同省の慌てぶりを冷ややかに見ていた。例年、年度末になると、輸入を担当する同省が、入札作業で輸入先や数量を操作して、米国産の年間契約数量を36万トンにきっちりと積み上げるのが習わしになってきた。

 その慣例が、21年度は崩れた。米国産の買い入れ数量は34万5000トンにとどまり、シェアは45%。わずか「2%」の違いだが、目標に届かなかったのは異例だ。

 日本政府は1990年代の国際貿易交渉でコメの部分開放を受け入れた。一定数量を対象に関税を下げ、コメ輸入機会の提供(ミニマムアクセス・MA)を続けてきた。ほとんどを国家貿易と呼ばれる農水省の入札によって調達し、民間に売却する。2000年度以降は、毎年76万7000トンを輸入する。

 同省は、21年度も米国産47%達成の目標を明らかにめざしていた。最終盤の入札状況を振り返ってみよう。

 22年3月1日に開かれた入札が終わった時点で、米国産は30万3000トンまで積み上がっていた。

 残りの入札で5万7000トンを契約すれば目標の36万トンに届くところにこぎ着けた同省は、最終回を予定していた同11日の第13回入札で、米国産限定で5万7000トンぴったりを指定し、一気に達成をめざした。ところが、この日の入札条件に合って落札できたのは4万3000トン弱。残りの1万4000トン分を買うことに失敗した。

 そこで米国産に限定し1万4000トンを買い入れる入札を、急きょ3月中に2回設定したが、いずれも応札がゼロで失敗した。

 最終的に米国産限定をあきらめた同省は、31日に対象を広げて第16回入札を実施。タイ産1万4000トンが落札された。

 年間総量の76万7000トンは契約することができたものの、そのうち米国産は34万5000トンで、シェアが45%にとどまった。

 最後の最後に米国産の入札が失敗したのは、対象のカリフォルニア米が干ばつで品薄となり、価格が歴史的水準まで高騰したからだ。同省が2月末時点で買い入れた米国産は1トン当たり17万円ほど。商社担当者は「輸送費などを加えると、最低でも1トン当たり20万円以下で応札することは難しい。この値段だと国産コシヒカリ並みの高値になってしまう」と応札しなかった理由を説明している。

 日本政府は公式には米国産のシェアを約束しているとの見方を否定している。「(米国産のシェアを約束した)密約は存在しない。これまで結果としてそうなっただけ」(三野敏克農水省農産局企画課長)というのが公式説明で、国会でも同様の答弁を繰り返してきた。WTOでは、特定の国に対する政治的な優遇や差別を禁じているからだ。

 しかし、過去の実績や36万トンに向け強引な入札を繰り返した3月の対応を見ても、同省が米国産のシェア47%を維持しようとしているのは明白だ。

▽うるさ型の米国にあめ玉

 米国優遇は、長年にわたる日本政府による対米配慮に尽きる。米国がコメ市場のいっそうの開放を迫らないよう、うるさ型の米国のコメ業界にしゃぶらせてきたあめ玉だ。

 このあめ玉には重い財政負担が伴うことを忘れてはいけない。

 MA米の用途で米の種類まで問われるのは、主食、加工、援助向けの21万トン(2020米穀年度実績)に限られる。50万トン以上が振り向けられる飼料原料用途は、米国産であろうと、タイ産であろうと違いはない。

 すでに30万トン以上の米国産を確保していた21年度末の時点で、3回連続で高値の米国産限定の入札をしたのは、米国産を買うことだけが目的になっているからだ。

 契約した米国産とタイ産の間には1トン当たり10万円以上の価格差がある。安値でしか売れない大量の飼料原料向けに高値の米国産を買えば、MA米の収支は膨大な赤字になる。

 同省の公開資料から計算すると、21年度のMA米買い入れ契約金額は約800億円で過去最高水準になる見込みだ。売却額から買い入れ額と管理費を差し引いたMA米損益で、過去最大の赤字を記録した2015年度の505億円を超える可能性もありそうだ。多額の赤字は、農水省予算から繰り入れて精算する。MA米輸入の裏で続く対米配慮は、回り回って日本の納税者と農家の首を絞めている。
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山田 優(農業ジャーナリスト)
農学博士。1955年生まれ。日本農業新聞記者出身で海外農業を担当してきた。著書に『亡国の密約』(共著、新潮社、2016年)、『農業問題の基層とは何か』(共著、ミネルヴァ書房、2014年)、『緊迫アジアの米――相次ぐ輸出規制』(筑波書房、2005年)などがある。
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