• tw
  • mail

カテゴリー

 ニュースカテゴリー

  • TOP
  • 独自記事
  • IT/メディア
  • ビジネス
  • ソサエティ
  • スポーツ/芸術
  • マーケット
  • ワールド
  • 政治
  • 気象/科学
  • コロナ(国内)
  • コロナ(国外)
  • ニュース一覧

種苗法改正の真の争点 作物の多様性

あとで読む

【農を考える】批判多かった種苗法成立、21年4月に施行へ

公開日: 2020/12/15 (政治)

Reuters Reuters

山田 優 (農業ジャーナリスト)

 種苗法が12月初めの参院本会議で可決され、成立した。21年4月から施行される。政府は優良品種の海外流出防止と育成者権の強化を改正の目的に掲げる。一方、自家増殖制限で農家が高い苗を買わされるという懸念から改正反対の声も根強い。

 しかし、種苗を巡る対立軸は、海外流出や農家経営の圧迫ではない。多様性を失わせてきた現在の農業をどう立て直すかが、本来の争点になるべきだ。

▽反対派も自己批判を

 コシヒカリに代表される大規模なブランド信仰は、一部の売れる「商品」への集中を招いた。農家が地元に適した種苗の育ての親となり、地域の消費者がその多様性を楽しみ、支える。今回の法改正には、こうした豊かな多様性を築き上げるという視点がまったく欠けている。反対する側にも、多様性を失ったことへの自己批判の姿勢が見えない。

 福岡県糸島市の「百姓」宇根豊さん(70)は、20歳代のころ稲作の農業改良普及員として、ある町でコメ検査に立ち会った。農家が栽培しているコメは56品種あって、当時の宇根さんは「品種を奨励品種に統一しましょう」と指導した。品種の数が多いと検査や保管、流通が煩雑になり、普及員として栽培指導もしにくかったのが理由だったと自戒を込めて語る。

 調べてみると、同地域のコメは半世紀の間に3品種まで絞り込まれた。いずれも「売れるコメ」として栽培が奨励されている品種である。行政や農協が旗を振り、大半の農家が従った。稲作はもちろん、野菜や果実でも似たような経緯をたどり、作物の多様性は全国で失われた。

 消費者もテレビやネットで流れる「〇〇がおいしい」という評判に飛びつき、足元で栽培されてきた特徴ある品種が消えていくのを見殺しにした。

 消費者ニーズを追い求め、コシヒカリを頂点とした良質米作りに勤しんできた産地が今直面しているのは、深刻なコメ余りと、未曽有の減反の必要性だ。コメ消費の減少に歯止めが掛からない。均一で質が高ければ売れるという大量消費の神話は、とっくに過ぎ去っている。

▽モノカルチャーの弊害

 コメやミカン、イチゴなどの農産物では、全国一律から県域でのブランド化戦略に転じたが、少数の限定された品種に絞り込むという手法そのものは、多様性とはほど遠い。均一なコモディティー(商品)の場合、際限のない価格競争に追い込まれるのが常だ。

 今、種苗制度を見直すのであれば、モノカルチャーに毒された農業のあり方にメスを入れるべきだ。雑多な作物や品種が併存すれば、地域の生物多様性にもプラスとなり、威力を増す気象災害への抵抗力もつくだろう。コメの消費減に歯止めが掛かるかどうかは分からないものの、地域の伝統料理と結びつけるなど新たな工夫の余地が出てくるだろう。

 種苗法改正の狙いは品種育成者の権利を強化し、農家の自家増殖を制限。優良品種の海外流出を防ぐというものだ。それぞれの項目には批判も多い。だが、育成者権が強調されたことで、農家などが「育種」に関心を持つ可能性はある。

 農業と生物多様性に詳しい宇根さんは言う。

 「種苗法改正が広く議論されたことは良かった。百姓が自らの権利として育種を利用し、農の姿を変えていく原動力になれば良い」
続報リクエストマイリストに追加

以下の記事がお勧めです

  • 【農を考える】 大減産時代に突入 米農家は耐えられるのか

  • 【農を考える】 露骨な選挙対策 トランプ氏が巨額農業補助金

  • 山田 優のバックナンバー

  • 福島の処理水問題 中韓台で激しい反発

  • ワクチン接種でも日本は後進国

  • トヨタとスバルが新型スポーツカー発売へ

  • 2009年の新型インフル・ワクチン輸入でも技官が嘘つき抵抗

  • プロフィール
  • 最近の投稿
avator
山田 優(農業ジャーナリスト)
農学博士。1955年生まれ。日本農業新聞記者出身で海外農業を担当してきた。著書に『亡国の密約』(共著、新潮社、2016年)、『農業問題の基層とは何か』(共著、ミネルヴァ書房、2014年)、『緊迫アジアの米――相次ぐ輸出規制』(筑波書房、2005年)などがある。
avator
山田 優(農業ジャーナリスト) の 最新の記事(全て見る)
  • 【農を考える】農務省予算の7割が食料支援、日本は厚労、農水省間に壁 -- 2021年4月1日
  • 【農を考える】農水省、食料安保リスクにパンデミックを追加 -- 2021年3月26日
  • 【農を考える】有機農地比率、現在の8%を25%へ引き上げ -- 2021年2月12日
Tweet
LINEで送る

メニュー

    文字サイズ:

  • 小
  • 中
  • 大
ソクラとは 編集長プロフィール 利用案内 著作権について FAQ 利用規約 プライバシーポリシー 特定商取引法に基づく表示 メーキングソクラ お問い合わせ お知らせ一覧 コラムニストプロフィール

    文字サイズ:

  • 小
  • 中
  • 大
  • 一覧表示を切替
  • ソクラとは
  • 編集長プロフィール
  • 利用案内
  • 著作権について
  • メーキングソクラ
  • お知らせ一覧
  • FAQ
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー
  • 特定商取引法に基づく表示
  • お問い合わせ
  • コラムニストプロフィール

Copyright © News Socra, Ltd. All rights reserved