実際は親子ほどの年齢差があり、母娘と表現したほうが似つかわしくも感じるが、「何としても荒木候補を国会へ」と、小池知事の熱の入れ様は尋常ではない。
▽「おかあさんといっしょ」選挙
7月1日、定例記者会見に臨んだ小池知事は、コロナ再拡大が懸念されるが荒木候補の応援演説を続けるかとの質問に、「応援している」と答えた。密より選挙、ということらしい。実際、小池知事の応援活動は頻繁に行われている。
まず5月28日の事務所開きに小池知事自らが駆けつけた。この選挙事務所、入り口上には左に荒木候補、右に小池知事の顔写真がでかでかと掲げられている。公示前の6月18日の新宿西口街頭演説会では、3年振りに街宣カーの上に立った小池知事が荒木候補を褒めちぎった。

荒木ちはるさんの参院選ポスター
街頭で配布されるチラシの表紙には両者の顔がほぼ同じ大きさで印刷され、中身に目をやれば、小池知事と荒木候補のツーショット写真がご丁寧に2枚も添えられている。
いったいこの選挙は誰の選挙なのかと首を傾げたくなる。まさに「おかあさんといっしょ」選挙を小池知事は展開中なのである。
▽ARAKI? WHO?
なぜそこまで露骨に肩入れをするのか。単純に、荒木候補の知名度が低すぎるからだ。というよりも、都民にしてみれば「小池知事は知っているが、荒木さんって誰?」という程度の認識しか持っていない。都民ファーストの会自体が創設してまだ5年、過去2回の都議選は小池知事の威を借りる、正に小池さんにおんぶに抱っこの選挙だった。そのツケのすべてが今、荒木氏に重くのしかかっているのである。
東京選挙区は全国レベルの知名度を誇る候補者達がしのぎを削っている。新しく参入してきた候補者だけを見ても、元タレントの生稲氏、ベストセラー作家の乙武氏、れいわ新選組の山本氏など多士済々、知名度競争で荒木候補は完全に後塵を拝しているのだ。
だからこその小池知事頼み選挙なのだが、小池知事が前面に出て荒木候補の知名度を上げる作戦がまったく功を奏していないのが現状である。街頭演説に集まる人々は小池知事を目当てに来ているのであって、荒木候補には目もくれない。小池マジックの賞味期限は切れてしまったように見える。
▽崖っぷちの小池さん
6年前、崖から飛び降りる覚悟で都知事選に臨んで圧勝、2年前には再選も果たした小池知事だが、愛弟子の国政選挙で小池知事本人が崖っぷちに立たされている。
小池知事が国政復帰の野望を抱き続けているかは定かでないが、少なくとも側近を国会に送り込み、自らは都知事の座に留まって国政に関与する作戦は捨てていない。作戦の遂行には荒木氏の当選が必須条件である。もし落選ともなれば、作戦そのものが水泡に帰すだけでなく、政治家・小池百合子の価値そのものが大きく毀損されかねない。
良くも悪くもサプライズで聴衆の耳目を集め旋風を巻き起こすのが、政治家小池百合子の十八番である。そこにしか価値がない。ポピュリストの宿命と言っていい。だとすれば、選挙で風を起こせなくなった小池知事に、いったい誰が注目するだろうか。小池知事にとって政治家生命を賭けた正念場が1週間後に迫っている。