8日夜、小池知事もメンバーである五輪の5者会談が開かれ、1都3県の無観客開催が決まった。すったもんだの末の無観客開催に都民・国民は白けきっているが、そんな中、自民党の二階幹事長は同日のCSの番組収録で、小池知事について「国会に戻ってくるならば大いに歓迎だ」と持ち上げた。
二階氏十八番のアドバルーン発言なのか、あるいは対抗勢力に対するブラフなのか、とにかくきな臭い匂いが一気に広がったのは確かである。
ここ数か月、コロナ禍にあって小池氏と二階氏の関係はますます強まっている。何かにつけての二階詣では、どっちを向いて仕事をしているのかと問いただしたくもなるが、今回の発言は両者の連係プレイと捉えるべきであろう。つまり、小池知事の国政復帰を前提とした衆院選の前哨戦がすでに始まっているということである。
▼選挙に強い小池知事、再び
小池知事を巡っては、国政復帰の噂が後を絶たない。本人の口からは一度も漏れてはいないが、誰もがそう考えている。なぜなら、小池氏が都知事になったのは、別に都知事をやりたかったからではなく、国政に反転攻勢を仕掛けるための橋頭堡として利用しているに過ぎないと見透かされているからである。
そもそも小池知事には前科がある。4年前の希望の党騒動はまだ記憶に新しい。あの時は、都知事初当選から1年余りの時期であり、直前の都議選で都民ファーストの会が圧勝したとは言え、自らが衆院選に出馬することはなかった。逆に排除発言で墓穴を掘り、頂点に駆け上がる夢は水泡に帰した。
その消えたはずの希望の明かりが灯ったのは、4日の都議選だ。過労による入院でか弱い姿を印象付けたかと思えば、公務復帰翌日には記者会見を開き「倒れても本望」などと幕末の志士気取りの発言まで飛び出した。
さらに、選挙戦最終日には、自公との暗黙の了解を破って、都ファ候補者20名前後の応援に病み上がりの体を押して駆けつけた。街頭応援はしなかったが、候補の事務所を訪れた。
こうした小池知事の動きが直接の要因かは別にしても、ひと桁にまで落ち込むとの予想もある中、都民ファーストの会は息を吹き返して31議席を確保、楽勝ムードの都議会自民党に冷水を浴びせた。
小池知事の人気は依然として絶大で選挙の強さは折り紙付きとのイメージが再確認される格好になった。
慌てたのは自民党である。秋の衆院選で小池知事が暴れ出したらどうなるかわからない。そんな疑心暗鬼に追い打ちをかけるような、今回の二階発言である。
小池知事は五輪とコロナ対策に黙々と専念しつつ、外堀は二階氏が埋め、雰囲気を醸しだし、国政復帰のお膳立てをする。小池知事の国政復帰のシナリオは、この二人の間では共有されているのだ。
あとは、衆院選の時期までにコロナの感染状況が落ち着いているかどうかである。こればかりは、ワクチン接種の進み具合に依るところが大きい。いかに選挙巧者の小池知事といえども思うに任せないのが悩ましいところだ。
9日の定例会見でも「(4度目の緊急事態宣言を)最後の宣言に」と語気を強めたが、小池氏の願いが果たして通じるかどうかは神のみぞ知るとしか言いようがない。
いずれにしても、小池・二階の“最強”タッグは静かに動き出した。もう後戻りはしないだろう。小池知事は国政復帰に舵を切ったと心得ておかなければならない。