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突然の安倍退場 霞ヶ関の「傍流人事」は消える 

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【鮫島浩の政潮を読む】更迭必至の奈良県警本部長は北村前安保局長の直系

公開日: 2022/07/18 (政治)

安倍元首相の遺影=Reuters 安倍元首相の遺影=Reuters

鮫島 浩 (ジャーナリスト)

 安倍晋三元首相が凶弾に倒れた舞台、奈良県の鬼塚友章・県警本部長(50)は公安・警備畑を歩んできた。内閣情報調査室に勤務した時に当時のトップ、北村滋情報官に引き立てられ、北村氏が国家安全保障局長へ抜擢されると付き従って同局へ転じた。東大法学部出身がひしめくキャリア警察官僚では珍しい九大出身。北村氏を後ろ盾にエリート街道を駆け登ってきたといっていい。

 北村氏は安倍首相秘書官を務め、同じく首相秘書官だった経産省出身の今井尚哉氏と並ぶ安倍最側近として知られる。外務省の指定席と目されていた国家安全保障局長に警察庁出身の北村氏を起用した安倍氏の人事は霞ヶ関を震撼させた。

 安倍政権は人事で官僚機構を掌握した。霞ヶ関主流派である財務省と外務省を遠ざけ、傍流扱いされてきた経産省と警察庁を重用した。そればかりではない。各省庁の本流といわれるエースではなく、そのライバルをあえて登用し、忠誠を誓わせたのだ。北村氏は警察庁長官を務めずに国家安全保障局長に抜擢されたし(菅政権末期に退任)、今井氏は経産事務次官を経ずに首相補佐官として官邸に君臨した。

 安倍政権で事務方トップの官房副長官を務めた杉田和博氏も警察庁長官を務めていない。各省トップを経験していない官僚が官房副長官に就くのは異例だ。警察庁傍流の杉田・北村ラインを重用する安倍官邸に警察庁本流には不満が募っていた。

 中村格警察庁長官も安倍政権で菅義偉官房長官の秘書官を務めた「安倍印」だ。安倍氏と親密な元TBS記者のレイプ事件で逮捕状をもみ消したとして厳しい批判を浴びながら警察トップに登りつめたのは、安倍氏や菅氏の後押しがあったからにほからなない。

 奈良県警の大失態に警察内部からも批判が相次いだ。元警視総監の米村敏朗氏(71)や池田克彦氏(69)が週刊文春の取材に警備上の失態をあからさまに語ったのは、警察内部の不満が噴出したものだろう。中村長官や鬼塚本部長の更迭は避けられないとの見方が強まっている。

 安倍政権は7年8ヶ月に及ぶ歴代最長政権だった。この間に抜擢された官僚たちが各省で要職にとどまり、安倍氏の影響力維持に奔走している。霞ヶ関では「安倍氏の悪口をうっかり漏らすと通報される。首相退任後も亡霊が彷徨っている」とささやかれていた。安倍氏が隠然たる影響力を維持していたのは、各界に張り巡らせた安倍シンパの存在によるものだ。

 その安倍氏が突然の凶弾に倒れ、政界にぽっかり穴が空いた。警察庁にとどまらず、各省から安倍政権の「傍流を抜擢する人事」への不満が一気に噴き出す可能性が高い。中村長官や鬼塚本部長の更迭は「安倍印」一掃の号砲となろう。この余波は官界にとどまらず、政界やマスコミ界にも及ぶのではないか。

 安倍氏に代わって政界に君臨することになるのは岸田政権の後ろ盾である麻生太郎元首相だ。麻生氏は副総理兼財務相の立場から安倍氏の「盟友」として長期政権を支えてきたが、岸田政権発足後は安倍氏が求める「高市早苗幹事長、萩生田光一官房長官」の人事をを拒み、安倍氏の政敵で岸田派ナンバー2の林芳正氏を外相に抜擢し、二人の蜜月関係は終焉していた。

 麻生氏は老舗派閥・宏池会を源流とする麻生派、岸田派、谷垣グループを「大宏池会」として再結集し、安倍氏率いる清和会を凌ぐ最大派閥に躍り出る野望を抱いている。参院選までは党内融和を優先しつつ、参院選後の人事で安倍色を一掃し、唯一のキングメーカーとしての地歩を固めるつもりだった。

 そこで安倍氏という巨像が突然消えた。麻生氏は政局を仕掛けることなく政界のドンの座を固めたといっていい。安倍氏の「国葬」は安倍支持層への礼節を尽くすものに過ぎず、ほとぼりが覚めれば安倍色一層を進め、大宏池会体制を盤石にしていくだろう。安倍氏悲願の憲法改正よりも、岸田政権で復権した財務省の悲願である消費税増税に政権のエネルギーを注ぐのではないか。
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鮫島 浩(ジャーナリスト)
京大法卒、1994年朝日新聞、99年政治部。2012年特別報道部デスク、翌年「手抜き除染」報道で新聞協会賞を受賞。2014年に福島原発を巡る「吉田調書」報道で解任。2021年退社してウェッブメディア「SAMEJIMA TIMES]を創刊。著書に2022年5月勘発刊の『朝日新聞政治部』(講談社)
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