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TPP合意、結構守られた農業

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昨年4月のオバマ訪日が転機に

公開日: 2015/10/08 (政治)

Reuters Reuters

山本 耕也 (農業ジャーナリスト)

 ホエイって知っていました? 長年農政に携わってきたベテランでさえ初めて聞いたという乳製品の一品目だが、ニュージーランドにとっては重要関心品目で、わが国の脱脂粉乳と競合する可能性の高い代物である。ヨーグルトをしばらく置いておくと上に水のような液体が溜まってくるが、それがホエイだ。

 このほどまとまったTPPの交渉過程で日本は、乳製品について脱脂粉乳とバターについてのみ対象を絞る戦略を取り、結果、関税の削減・撤廃は行わず、生乳換算で七万㌧の枠を新たに設けるだけでこらえ切った。これは協定発効後6年目から実施される。件のホエイだが、関税撤廃は21年目と長期の移行期間が設けられた。

 キズは軽微とまで言わないが、概ね「よくやった」とされているのが、今回のTPP交渉、特に農業分野での結果に対する評価のようだ。ホエイを持ち出すのも、ある意味での余裕なのかもしれない。

 政治レベルでTPPへの参加が検討されだしたのは5年前。民主党政権下でのことだったが、わずか1%の例外しか認めない、関税削減率99%を目指すというのだから、国内ではまともに相手にされないほどで、もちろん農業分野は官民挙げて大反対であった。

 2013年2月、政権に返り咲いた安倍首相はオバマ大統領との日米首脳会談に臨み、例外なき関税化がTPP交渉参加への前提条件ではないことを確認する。こうしてわが国はTPP交渉に突入していくのだが、旗振り役を任じたのは経産省である。一時は農水省さえなぎ倒さんばかりの対応で、内閣官房にもはじめのうちは農水省=悪玉とする見方が広まっていたほどだ。

 しかし、参加国はそれぞれ社会構造が大きく異なっている。米国にしてもカナダにしても、それぞれに弱みを持つのは日本と同じだ。TPP交渉スタート時の4カ国であるチリ、ペルー、シンガポール、ニュージーランドならまだしも、1%の例外水準が交渉の落としどころにはなりそうもないことに日本政府も気づき始める。また、それでは国内が収まる筈もなく、政権も持たないと見て取ったのだろう。政府部内には一枚岩になろうとする雰囲気が醸成され、農業を支えきるとまで言わないまでも、守らなければならないギリギリの線についての認識が共有されていくようになった。

 その間、日米二国間での個別交渉では、米国は関税撤廃を要求するだけ。例外措置が認めらず進退に窮するわが国にとって転機の一つとなったのが、昨年4月のオバマ大統領の来日だ。甘利TPP相がフロマン通商代表と死闘の交渉を続け、コメの輸入枠などを米国に飲ませて、交渉の先行きに明るさを見出していく。

 そのフロマン代表だが、強引なだけのこれまでの米国型のネゴシエイターとは少し違うようだ。11カ国の担当閣僚を米国本土でも奥深いアトランタまで呼び出しておいて、普通なら3日で終わる会合を延ばしに延ばし、粘り勝ち作戦にでた。他国は根気負けも同然。最後の最後までむしり取るようなハードネゴを仕掛け、交渉は都合6日にも及ぶことになった。

 10月9日、安倍政権はTPP合意に伴う対策本部を設置した。批准審議は来年4月以降となる模様で、それまでに補正予算での国内対策の構築を急がなければならない。これと並行して農政改革にも取り組まなければならない。この5年ほど農政関係者に重くのし掛かり、喉に刺さる小骨のように苛立たせるばかりのTPPが合意したいま、農政改革と国内対策の両面で農業分野の力が改めて試されようとしている。


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