自民党が2012年12月に発表した「憲法改正草案」についてうかがった。(聞き手:ニュースソクラ編集長・土屋直也)
―― 自民党の「改憲」案のどこに反対なのですか?
全体についていえば、自民党は憲法とは何かがわかっていないからです。憲法は、世界の常識に照らせば、神ならぬ人間が国家権力を握るようになったアメリカ独立のときに生まれました。アメリカ独立宣言があって、合衆国憲法ができた。その次がフランスで人権宣言へとつながっていきます。
それ以前は、権力者とは神に等しいものでした。神たる権力者を、支配される側の人間が縛るという考えはありえなかった。縛る必要があるのは不完全な人間の方で、だから民法と刑法は憲法より先に存在したのです。
ところが、アメリカ独立戦争によって、民主国家ができました。ジョージ・ワシントンは、国家の指導者を、血筋などではなく選挙で選ぶという方法を考えました。すると、生身の不完全な人間が権力を扱う、という新しい問題が出てきたのです。神ではなく、不完全な人間が扱っているために、権力は乱用される可能性を常に含む、これをあらかじめどう防いでいくのか、という問題です。権力者を縛るのが憲法なんです。
自民党は、憲法は政治家と公務員が守るべきものだとする部分を改憲草案で変えて、政治家・公務員含め、すべての国民が守らなければいけないものにしたんです。その根幹にあるのは、よりよい社会の目標に向かって国家と国民は協力しなければならない、という考えです。
国家と国民が協力するといっても、国家とは抽象的なものですから、実際には、国家権力を預かっている具体的な人、つまり「権力者と国民の協力」を意味するんです。権力者と国民とでは、権力者の方が強いに決まってますよね。
今でいえば、権力者のトップは安倍首相です。自民党の改憲草案に従えば、安倍首相は弱い国民に対して、「自分にもっと協力しろ」といえるわけですよ。これでは明治憲法や北朝鮮と同じです。
なぜこんな発想が出てくるか、ということを考えてみると、自民党は世襲議員が半数を超えていますから、三百ある小選挙区を生まれついての自分の私有財産(領地)のように思ってるんですよ、きっと。