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再び蘇るのか大阪都構想

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維新の密約暴露でどうでる公明党

公開日: 2018/12/30 (政治)

大阪市役所(中央の白い建物、撮影・幸田氏) 大阪市役所(中央の白い建物、撮影・幸田氏)

幸田 泉 (ジャーナリスト)

 2025年開催の万博誘致に成功した大阪だが、またあのゾンビが蘇ってきた。何度死んでも蘇る「大阪都構想」だ。大阪市は表向き華々しい万博の絵を描きながら、その陰で開催地の大阪市そのものを無くしてしまう都構想が街を徘徊する。

 2018年11月24日に万博開催地が決定した直後から、松井一郎・府知事と吉村洋文・大阪市長は「大阪維新の会」設立の原点だった「大阪都構想」の実現に向けてのスケジュールに言及し、万博と大阪都構想をいっしょくたに推し進める作戦に乗り出した。

 万博の開催予定地は大阪市此花区の人工島。一方で、大阪都構想は大阪市を廃止して特別区に分割し、大阪府に権限と財源を移譲する「大阪市廃止構想」だ。

 大阪市の財政局長や経済局長を歴任した木村收・元大阪市立大教授(地方財政論)は「万博が決まったのは、維新にとって大阪都構想から名誉ある撤退もしくは凍結をする絶好のチャンスだった。万博の準備をしながら大阪都構想を進めるのは、万博という建物を建てながら同時に土台を崩すようなものだ」と指摘する。

 万博決定後も大阪府市両議会の野党会派は「万博と大阪都構想は全く別のもので関係ない」と大阪都構想に反対の立場を変えないため、松井知事と吉村市長は「辞職して出直し選挙をする。2019年春の統一地方選と大阪府知事、大阪市長の選挙を合わせて行う」と選挙で局面を打開する方針を示した。

 2010年の結党以来、選挙をテコに「これが民意」と野党の意見を退けてきたやり方だ。

 大阪都構想がゾンビと言われるようになったのは、2014年に遡る。大阪市を幾つの特別区に分割するのかなどを話し合う「特別区設置協議会」(通称、法定協議会)は、大阪府市両首長と府市両議会の議員で構成されるが、反対意見が多く協定書が出来上がる見通しがないため、松井知事らは野党会派のメンバーを維新議員に入れ替えて、大阪市を五つの特別区に分割する「特別区設置協定書案」を無理矢理に決定した。

 しかし、2014年10月の大阪府市両議会はこの特別区設置協定書案を否決。大阪都構想はここで一旦、死んだ。

 ところが、その年の12月に衆院選の実施が濃厚になると、松井知事と橋下徹・前大阪市長は、公明党に選挙協力しないとして、大阪府内で公明が議席を持つ選挙区に自分たちが出馬すると発信。衆院の議席を守るのと引き換えに、公明は泣く泣く大阪都構想で維新に協力する道を選ぶこととなる。

 2015年3月、前年に否決された特別区設置協定書案が大阪府市両議会に再度、上程され、維新、公明の賛成で可決された。死んだものが蘇ったとして、大阪都構想に「ゾンビ」のあだ名が付いたのがこの時からだ。

 最後の法的手続きとなった2015年5月の住民投票。66%という高い投票率で、70万票対69万票の僅差で反対多数となり、結局、ゾンビは市民の手で葬られた。

 その大阪都構想が今もまだ政治の舞台から消えないのは、大阪都構想そのものは住民投票で決着したが、大阪府市の両首長をまだ「大阪維新の会」が抑えているためだ。松井知事と、橋下前市長の後任の吉村市長は2017年5~6月、大阪都構想の法定協議会の再設置を府市両議会に上程し、維新と公明の賛成で再設置が決まった。

 この時に公明が再設置に賛成したいきさつが、万博決定後に奇しくも明らかになった。2017年4月の時点で、維新と公明党大阪府本部との間では、「大阪府市両議会の5月議会で法定協議会の設置を可決する。法定協議会で慎重かつ丁寧な議論を尽くすことを前提に、今任期中で住民投票を実施する」という2点を合意して文書を取り交わしたというのだ。

 しかもこの合意は「お互いに公にしない」という密約だった。

 2018年11月に万博開催が決まった後、12月に入って松井知事と佐藤茂樹・公明党大阪府本部代表らの会合が持たれ、維新側は2019年4月の統一地方選までに特別区設置協定書をまとめることに協力要請したが、公明側は拒否。怒った松井知事らは「約束違反だ」と「密約」をマスメディアに暴露した。

 公明党大阪府本部の佐藤代表は密約文書の存在を認めながらも、「任期中というのは統一地方選ではなく知事と市長の任期(2019年12月)のことだ」と主張。文書の解釈を巡って互いに非難し合う事態になった。

 「合意書の解釈うんぬんは住民投票の実施時期だけの問題であって些細な事に過ぎない。維新と公明党は、何があっても住民投票の実施に賛成すると密約を交わしていたことの方が大問題だ」

 2018年12月27日、フェイスブックでこう書いたのは自民党の川嶋広稔・大阪市議。確かに、2017年4月の段階では、松井知事や吉村市長は「大阪都構想をバージョンアップして再挑戦する」と述べていただけで、法定協議会も出来ていないのだからどんな特別区設置協定書になるのか白紙状態だった。つまり、維新と公明は「大阪都構想の中身はどうでもいいからとにかく住民投票をもう一度やる」と合意していたことになる。

 川嶋市議は「なぜこのような合意書を密室で交わしたのか、知事にも公明にもしっかり説明してもらいたい」と本質を突く。

 2014年の衆院選挙では維新の脅しに「折れた」公明だが、今回は大阪府知事・大阪市長選挙を前倒しするという話なので、公明の議席とは関係ない。統一地方選と同日に首長選挙を実施すれば、維新の議員候補には追い風だろうが、練りに練って選挙区に配置した公明の議席を脅かすほどの威力はない。

 公明党が「万博を開催する都市を廃止するなんてとんでもない」という筋を通すのか、それともいずれ行われる衆院選挙への影響を考え、またもや維新の無理を通して道理を引っ込めてしまうのか判断が注目される。

 松井知事は大阪都構想の2度目の住民投票について、マスメディアに「(2019年7月の)参院選と同日で住民投票をする」などと目標を述べている。要は、統一地方選や参院選という選挙を軸に、「何となく盛り上がった」という空気の中で住民投票を実施し、大阪都構想の問題点を市民に浸透させずに押し切ってしまおうという意図は見え透いている。

 大阪都構想の2度目の法定協議会は2017年6月から協議が始まったが、未知の世界で混乱するばかりだった最初の法定協議会とは違い、野党会派は大阪都構想の矛盾点を次々に掘り起こして指摘。法定協議会の再設置に賛成した公明会派もかなり具体的に鋭い問題提起をし、大阪都構想がいかに「不良品」かが露呈するばかり。市民の支持も低落し、大阪都構想の協議を続ける市民的メリットは見出せない状況になっていた。

 それを「万博」と「出直し選挙」を使ってまた風を吹かせようというのが維新の戦略だ。しかも、2019年春の知事、市長選挙を正真正銘の「出直し選挙」とした場合は、どちらも年末までの任期は変わらないので、半年ちょっとでまた選挙である。そのため、「大阪都構想の民意を問う出直し選挙」と見せながら、吉村市長が知事に鞍替えし、松井知事は国政に鞍替えするとも言われている。
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幸田 泉(ジャーナリスト)
立命館大学理工学部卒業。1989年に大手新聞に入社。大阪本社社会部で大阪府警、大阪地検など担当。東京本社社会部では警察庁などを担当。2012年から2年間、記者職を離れて大阪本社販売局に勤務。2014年に退社し、販売局での体験をベースに書いた『小説・新聞社販売局』(2015年9月、講談社)がその赤裸々さゆえにベストセラーに。大阪市から府に22の高校が無償で移管された件での住民訴訟を書いた『大阪市の教育と財産を守れ』(2022年5月、アイエス・エヌ)も出版。
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