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人民解放軍に軍事だけで太刀打ちできるか

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軍事費、中国はすでに日本の3倍

公開日: 2017/03/31 (政治)

Reuters Reuters

土屋 直也 (ニュースソクラ編集長)

 国会は今週、過去最大の2017年度予算案を参院で可決し、成立させた。安倍政権は強調しないが、予算の特徴のひとつは軍事費が伸ばされている点だ。

 安倍首相は3月22日まで独仏伊ベルギーの欧州4カ国を訪問した。国内では少ない軍事増強に関する発言が目立った。

 たとえば、最初の訪問国、ドイツでの首脳会談の後での記者会見で安倍首相は「10年間、毎年1%ずつ削っていた防衛費を、私が政権について以来5年間ずっと増やし続けている」と、軍事に熱心なことをアピールした。ドイツ人記者の質問に答えた。

 確かに、軍拡は安倍政権の重要な特徴のひとつだが、国内で首相自身が宣伝することはあまりない。タカ派色を打ち消すことの方が支持率確保の上では上策とみているからだろう。

 欧州で安倍首相が饒舌だったのは、米国が欧州に対して軍事費増強を迫っていて、関心の高い案件だからだろう。米国は欧州諸国にGDP(国内総生産)の2%まで軍事費を引きあがるよう求めている。トランプ大統領は欧州が安全保障を米国に依存しすぎていると考えており、もともと米欧間の約束だった、GDP2%支出を迫っている。

 日本が在日米軍の駐留経費の7割も負担していることもあって、他国に負担を押し付けることを目指しているトランプ政権からもまだ、表立った軍事費増加を迫られてはいない。しかし、GDP2%がグローバル基準になりかねないことは欧州をみていると明らかだ。

 ご存知のように、日本はGDP1%が長らく防衛費の上限とされてきている。日本の軽武装路線を象徴する数字だ。いまも防衛費はGDPの0.9%以下にとどまっており、2%に引き揚げるということは、今5兆円の防衛費を10兆円に倍増させることを意味する。

 5年連続で軍事費は増加し、2017年度は0.8%の増加となっているが、自衛隊からは最大の軍事的脅威である中国と比べればかわいいものだという声が聞こえてくる。確かに中国の軍事費増加は2年連続で7%台の伸びを示している。それ以前は二桁増加が続いていた。中国の軍事費の総額は、2017年度で1兆200億元(16兆8000億円)と日本の3倍を上回る。

 軍事費をすさまじい勢いで増やしていることに加え、中国は仮想敵をロシアから米国に切り替え、人民解放軍を再編している。具体的には陸軍を減らし、海軍、空軍を強化している。そのために陸軍軍人の30万人削減を決めている。これからは、太平洋が戦場だというのが人民解放軍の想定だ。

 この動きは米軍と共同歩調をとるのが基本戦略の自衛隊にとっては大きな問題で、北海道の防衛力を減らし、東シナ海から台湾までの海域の防衛力強化を目指している。しかし、中国ほどドラマチックな再編はできていないのが実情だ。実際、尖閣列島周辺の空域は事実上、中国空軍の実効支配が強まっている。

 陸上自衛隊は尖閣列島を奪われた場合に備えて上陸部隊を整備しているが、制空権を取られていた場合には陸海部隊だけで奪還は困難というのは軍事常識である。

 状況に適格な危機感を持つ必要はあるが、軍拡に軍拡で応じようというのは無理だ。人民解放軍は中国内で発言力が強い。特に習近平政権になってからの発言力を増している。軍事が最優先になっている中国と、装備力で伍していくだけの軍事費を負担していくことなど、とうてい日本にはできない。

 問題は、軍事以外の外交力を磨いていくことなのだろう。安倍政権は国内では目立たぬように軍事拡大を進めてきた。その戦術が正しいのか、じっくり議論する必要がある。
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土屋 直也(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
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