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菅政権は続かない 安倍首相の再々登板も

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【内田樹氏に聞く】「不本意ながら五輪中止」の演出をするだろう

公開日: 2021/05/10 (政治)

内田樹氏(撮影・角田) 内田樹氏(撮影・角田)

 内田樹氏に今後の政局についてインタビューした。先の衆参両議院の補選で野党に3連敗を喫した菅内閣は最早、解散前に退陣危機に晒されていると内田氏は見ている。

 しかし、後任となる自民党総裁人事がいないという。そこで、驚くような総裁人事で次期総選挙を戦うしか自民党はないのではないかという。それは、「安倍総理再登板」だと言う。そして、超タカ派的政策を打ち出し、野党に勝負を挑むのではないかという。(聞き手は角田裕育)

                   ・・・

― 今回自民党候補が、補選で三連敗しました。どう見ますか?

内田 自民党の地方組織が弱くなっていることが大きいと思います。昔は地方議会から国会議員になるというキャリアパスがありました。県会議員から総理になった竹下登が典型です。でも、いつの間にか、地方議会から国政に出て来るという道筋が痩せ細って来ました。

 党執行部が「一本釣り」をしてきた候補者を、縁もゆかりもない選挙区から立候補させるという党営選挙が支配的なスタイルになりました。

 この候補者たちは執行部の「オーディション」に通ったというだけで、個人的には何の組織的基盤も持っていないので、執行部から「次は公認しない」と言われたら、自動的に失職することになります。だから、絶対に執行部に逆らわないのです。安倍政権はそういう「イエスマン議員」をかき集めて国会議員団を編制し、上意下達の党組織を作ろうとしました。そして、それに成功しました。

 その結果、自民党はトップダウンの「安倍一強」の組織になったわけですけれども、その代償として、地方議員から国政へという道がなくなりました。地方議員の中には強い後援会組織を持っていて、仮に党公認が得られなくても当選できるという人もいます。

 でも、そういうインディペンデントな議員は別に党執行部にへつらう必要がありません。自分の立場を通す政治家は上意下達的党組織にとっては邪魔になります。だから、安倍―菅政権は、そういうタイプの地方議員を絶対に国会議員にしませんでした。執行部に逆らうと国政には出られないということを思い知らせることで地方議員を抑え込もうとしました。

 自立的な地方組織を抑え込んで、党執行部が選んだ、「イエスマン」候補者たちを地方に押し込んでいきました。その結果、地方組織はしだいに弱体化し、自民党の国会議員団と自民党の地方組織の間には溝ができました。この間の選挙の連敗も、党中央と地方組織の間で意思疎通ができなくなったことの結果だと思います。

 中選挙区時代には同選挙区内で自民党候補同士が競うということはよくありました。群馬県の中曽根康弘・福田赳雄の「上州戦争」が有名です。その結果、国会議員たちは自分の後援会組織の拡充をはかりました。だから、自民党議員同士が競合すればするほど党組織が強くなるということになったのです。

 でも、小選挙区以降、党執行部のオーディションに通った人を党営選挙で当選させるという仕組みになったせいで、政治家自身に自力でしっかりした後援会組織を作るというインセンティヴが失われました。

―野党も青年組織がないですよね。

内田 野党も同じです。地方議会で経験を積んでから国政に出てゆくというチャンネルがあるのは共産党くらいです。若い人は地方議会から政治経験を積むというのはとても教育的なキャリアパスなんですけれど、野党もテレビに出て知名度がある人を「一本釣り」して、組織のない選挙区に放り込むという自民党と同じことをやろうとしています。

 それでは若い人をじっくり育てるということができません。野党には地方組織が育たないことについての危機感がどれくらいあるんでしょう。僕は地域の野党の集会にときどき呼ばれるんですけれど、平均年齢は70歳くらい。20代、30代の若い人たちを地域の活動に巻き込むための仕組みがありません。

―共産党の実質的な青年組織といえる日本民主青年同盟(民青)も京都大学だと中核派より数が少なく辛うじて残っている状態らしいです。各政党の青年組織は弱くなっています。国民が政治に無関心なのも原因ではないでしょうか?

内田 なんでも「国民の政治的無関心」のせいにしちゃダメですよ。昔からずっと国民は基本的には政治に無関心でした。それをどうやって目覚めさせるのかということが政治にかかわる人間の本務なのです。今はどの政党も地方組織が弱くなっていますが、その最大の原因は地方の人口減少です。

―菅政権はどうなるでしょう? 出鼻をくじかれたという感じですが。

内田 菅首相はもう長くは持たないと思います。でも、「ポスト菅」に人物がいません。岸田さんが後継者としては順当なんでしょうけど、いろいろ横槍が入りそうな気がします。

―二階さんと仲は悪いし、自分のところ(広島県)で落としてしまいましたからね。

内田 自分の派閥の候補者を蹴落とした河井案里のせいで補選に負けるなんて、岸田さんにしたら納得のゆかない話でしょう。

 でも、この時期に県連の会長を引き受けて選挙に負けて、次の選挙では公明党候補を推さなければいけないという「貧乏くじ」を引かされ続けているということは総裁候補としては大きなダメージになります。「運の悪い人のように見える」というのは政治家にとってかなり致命的なことです。

 日露戦争のとき、海軍大臣だった山本権兵衛が、東郷平八郎を連合艦隊司令長官に推薦したときに、明治天皇に推薦理由として「東郷は運のいい男ですから」と言ったという話が広く知られていますけれど、ナポレオンもそうでした。

 指揮官を登用するときに「運がいい」ということを重く見ました。だから、若くても、運のいい軍人をどんどん重用しました。その結果、ナポレオンの軍隊はヨーロッパ最強になりました。「運が悪い」というのは政治家の実力とは関係ないんですけれど、現実にはそれでものごとが決まることがあります。

―私は岸田さんって宏池会の典型のような気がしますね。「政策に強くて政局に弱い」という政治家で、勝負に弱いのでしょう。

内田 たしかに岸田さんは勝負勘があまりよくないです。でも、菅首相のままでは衆院選挙は勝てないでしょう。このまま菅を看板にして選挙したらどうなりますか? 五輪は中止、感染は収束しません。そんな状態で任期満了で総選挙を迎えたら、自民党には勝つ要素が何もないでしょう? 

 議席を減らすことは間違いなくて、問題は「負け幅」をどれくらい抑えることができるかにかかっています。自民党の国会議員たちは自分の議席を守りたいから、とにかく「一票でも増えそうな看板」が欲しいのです。できたら看板を付け替えたいでしょう。

 でも、イエスマンばかりで党を固めてきたから、「ポスト菅」世代にはまったく人材がいません。だから、菅首相が解散のタイミングを見つけられないまま任期満了で総選挙ということになります。それが自民党が一番敗けるシナリオだと思います。

★オリンピックはどうなる?★

―安倍さんも「追い込まれ解散はするな」と菅さんにアドバイスしたそうですが。

内田 でも、「最も負け幅の少ない解散」のタイミングはもう過ぎてしまったんです。五輪かコロナかどちらかについて「菅政権がうまくやったように見える」時点で解散総選挙すべきだったんです。

 だから、三月はじめから四月にかけて、新規感染者が減って、二回目の緊急事態宣言を解除して、第三波がまだ来ないうちのわずかな隙間だけが「コロナは抑えたように見えて」かつ「東京五輪は実施されそうに見える」唯一のタイミングだったのです。

 解散するとしたらそこしかなかったと思います。でも、菅首相は決断できませんでした。バイデン大統領と会談して安定的な日米関係を国民にアピールしてからの方が選挙には有利だと算盤を弾いたからです。

 その政治判断そのものは間違っていません。日本の有権者が首相に期待するのは第一に「アメリカに信頼されていること」だからです。それをアピールしてから解散するつもりだったら、その間に「東京五輪の中止やむなし」と「菅政権はコロナ対策で先進国最下位」というニュースがSNSからあふれ出て、新聞や地上波までに広まってしまいました。

 だから、今は政府は必死になって「五輪は予定通り実施する」と「ワクチン接種は順調に進んでいる」というキャンペーンを展開して、内閣支持率を下支えしているわけです。でも、この二つとも成否がすぐにわかるから、長くは使えません。

 あと100日経てばいやでも五輪開会式の日が来るし、ワクチン接種がいつ受けられるかを全国民は「わがこと」として注視しています。どちらもうやむやにしてごまかすということができません。

 仮に世論の反対を押し切って、強引に東京五輪を開催したとしても、医療危機の中で強行すれば国内の医療崩壊は加速するし、世界中から数万人のアスリートと関係者を東京に集めて、またそれが世界に散らばるわけですから、秋以降には「東京五輪が世界的なパンデミックを引き起こした」という海外からの非難が殺到します。だから、遠からず「五輪中止」を宣言せざるを得ません。

―堪え難きを堪え、忍び難きを忍びみたいな感じでしょうか。

内田 そうですね。「ポツダム宣言受諾」みたいな感じで、外圧に屈して、不本意ながら五輪中止のやむなきに至ったという「演出」をするんだと思います。

 五輪参加予定のアスリートたちが号泣したり、五輪担当大臣や都知事が地団駄踏んで悔しがる、そういう絵柄を電通がもう今から用意していると思いますよ。「臥薪嘗胆」とか「捲土重来」とかいう古くさい四文字熟語をきっと誰かが口走りますよ。

―東京に出張に行った時、チケットを100万、200万円つぎ込んで買って楽しみにしていた人も諦めてましたもん。楽しみにしていた人や選手でも諦めモードだと思います。

内田 もう国民のおおかたは諦めてるでしょう。医療資源がここまで逼迫しているんですから、五輪は誰が考えても無理なんです。

― 選手もまともに練習できてないし、まともな大会にならないでしょうね。

内田 感染症対策で先進国最低の国に、自国のアスリートを送り出すというのは、各国のNOCにしてもかなり勇気の要る決断だと思いますよ。アスリート自身だって、万一コロナに感染して後遺症が残ると以後の選手生命にかかわります。そんなリスクを冒してまで東京には来ないでしょう。

★衆議院解散時期・安倍再登板か?★

―衆議院の解散は秋というのが永田町筋からも聞こえてくる情報ですが。

内田 僕の予測は先ほど申し上げたように、解散のタイミングが見つからないままずるずると任期満了までゆくですね。

―では総選挙前に自民党総裁が入れ替わるという?

内田 総裁の看板は選挙前に付け替えざるを得ないでしょう。それが自民党の得意技なんですから。安倍再登板だってあり得ますよ。

―私もそう思ったんです。岸田さんじゃ無理だし、安倍再登板ぐらいしかないんです。

内田 安倍さんは岸田さんと違って「運が良さそう」に見えますからね。第二次政権だって、検察がしっかり仕事をしていたら、公民権停止は当然で、逮捕投獄だってあり得たはずなのに、病気だと言って世論の同情をかき集めて逃げ切りました。

 2012年の総裁選も、石原幹事長が出馬して、谷垣総裁が降りたせいで、漁夫の利を得て浮かび上がりました。それも第一回投票では石破に負けていたのに、第二回で蘇りました。そのあたりの「悪運の強さ」については自民党国会議員団には期するところがあるんじゃないでしょうか。

―そうですね。二回とも病み上がりでまた復活することもあり得ますね。

内田 病気だという割には診断書も見せなかったしね。そういうふうに全部放り出して逃げ出すタイミングの見はからい方もなかなかのものですよ。

―岸田さんが本当は順当だったはずなんですけど、とてもじゃないけど、勝負弱いしこの前の選挙であんなことになってしまった。しかし、総裁候補のタマがいなさすぎますね。

内田 石破さんはもう無理でしょう。稲田朋美や野田聖子も党内に安定した支持基盤がありません。

―全然、派閥基盤がないですよ。二階さんはロートルすぎますし。

内田 河野太郎も人望ないし。消去法だと、とにかく議席を守りたいという人たちに担がれて安倍再々登板というのはあり得ますよ。

―第三次安倍政権ですか。

内田 可能性としてはあり得ると思う。その場合には、はっきり「極右」の公約を掲げて登場するんじゃないかと思います。「民主主義はもうダメだ。中国を見よ、ロシアを見よ、トルコを見よ!」と強権的・独裁的な政体の方が効率的だし、国際社会でも恐れられるのだと言い切れば、それを歓迎する国民はかなりいますよ。

―そこまで右翼的な政策で行くでしょうか?

内田 それが選挙で一番「負け幅が少ない」方法だと思ったら、やるでしょう。現にそれ過去で6回選挙に勝ってるのですから。安倍さんがそこから得た経験則は「国民を分断して、現政権を支持する国民の利害のみを配慮する」というネポティズム政治をしている方が選挙には勝てるということでした。

 ふつうの為政者は国民の統合を目指すものですけれど、選挙に勝って多数派を制するということだけに限定すれば、国民を分断して、政権に盾突く者にはつねに「ゼロ回答」で応じる方が効果的なんです。

 支持者の利害だけを配慮し、自分を支持しない有権者には「何もやらない」ということを続けていると、野党支持の有権者はしだいに無力感に蝕まれて、政治に絶望するようになります。そして、投票に行かなくなります。投票するのが与党支持者だけになれば、そりゃ選挙には勝ち続けますよ。

―今の世の中、「何処も腐っているんだから、腐っているところに食い込むしかない」と言ったある新聞記者がいますがどうでしょう?

内田 腐っているところに食い込んだら、本人も腐るだけですよ。

―しかし、今の立憲民主党、国民民主党、日本共産党では、外交安全保障等の政策の違いもあります。

内田 そんなのどうでもいいんじゃないですか。だって、昔は「自社さ連立政権」なんてものがあったんですよ。自民党と社会党が連立を組んだんですよ。政策なんてどうだっていい、とにかく政権与党でいたいというのが自民党の本音なんです。

 自民党は歴史的に見ても、政策的一貫性なんかまったくない政党でしょう。そういう与党については何も言わないで、野党に対してだけは「政権交代したいなら全野党の政策は一致すべきだ」と要求するというのは、メディアのダブルスタンダードですよ。

 全野党の政策のすり合わせが終わるまで、政権交代を求めるべきではないなんていうルールを誰が決めたんですか。そんなルールを認めたら、自民党の永久政権が続くだけです。

―連合が色々言ってきますし・・・。共産党との連立には。

内田 連合なんてもう要らないですよ。政策協定するにしても、ざっとでいいんですよ。それよりも一日もはやく政権交代を実現しないと日本は終りですよ。とりあえず政権交代したら、メディアは新政権をめちゃくちゃに叩くでしょう? 

 政権内部で足並みがそろわないから、政府部内から情報だってどんどんリークされます。だから、政権交代すれば、政策決定プロセスについてきわめて透明性の高い政府が出現することは間違いないです。とりあえず「報道の自由度ランキング」ではたちまち世界ベストテンに入りますよ。その一事が実現できるだけでも政権交代する甲斐はあると僕は思いますね。

角田 裕育 (政治経済ジャーナリスト)

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角田 裕育(政治経済ジャーナリスト)
1978年神戸市生まれ。大阪のコミュニティ紙記者を経て、2001年からフリー。労働問題・教育問題を得手としている。著書に『セブン-イレブンの真実』(日新報道)『教育委員会の真実』など。
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