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3・11 支援に現地入りした難民、でも彼らに人権はない

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難民支援協会代表理事・石川えりさんに聞く(上)

公開日: 2015/05/08 (ソサエティ)

難民支援協会代表理事・石川えりさんに聞く(上)

 今年4月18日に地中海のマルタ島近海で起きた密航船沈没事故では、新たな生活を求めてヨーロッパに渡ろうとした700人とも800人とも言われる難民・移民が溺死し、改めて世界の紛争地域を中心とした国々から脱出しようとする人々の数の多さと、その過酷な状況に注目が集まっている。
 ここ数年、年間3万とも4万とも言われる人々が北アフリカからヨーロッパを目指して密航し、その内の約1割近くが命を落としている。それでも北アフリカからヨーロッパへ渡ろうとする難民・移民が減ることはなく、EU各国での受け入れ分担などが話し合われている。
 一方、日本では昨年2014年に難民申請した人の数は約5,000人に対して、過去からの申請者で難民認定されたのはたったの11人。そもそも難民認定の審査に3年~5年はかかるという。しかも、難民申請者の中には生活に困窮してホームレス同然になっている人もいると聞く。
 今回は、そのような状況について日本で難民サポートの活動を行っている、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の事業実施契約パートナーの認定NPO法人難民支援協会の代表理事、石川えりさんに話を聞いた。(聞き手=中島敏)

——難民支援協会の仕事とは具体的にどんな内容なのですか。

 日本に安全を求めてきた難民の人の難民申請をお手伝いするのが基本的な仕事です。ただ難民の人たちは文字通り着の身着のままで日本にやってくるので、まずは日本で生きていけるように助けることも重要な仕事です。
 多くの難民の人が最初は寝る場所もありません。私たちの事務所に宿泊することは出来ないので、そういう時はなるべく寒さを避けて夜を過ごす場所や方法を教え、ほんの少しのお金を渡して送り出します。仕事の中で一番つらいことです。
 彼らは、夜の街を歩き回って時間を潰したり、マンガ喫茶などで夜を過ごすことが多いです。慣れない国で慣れない生活に疲れて、朝になると私達、難民支援協会の事務所に来て簡単な朝食を取り、それから、お世辞にも広くはない事務所の片隅で文字通り床の上で睡眠を取るという人も多いです。私たちは様々な日常品の寄付を受けていて、難民の人に保存食などの食事を提供したり、衣服を提供したり、寝袋なども渡したりします。

——難民のための最後のセーフガードを提供しているということですね。

 そうです。母国では立派なエンジニアやジャーナリストをしていた人たちが、日本ではホームレスになってしまうんです。現在、ホームレス状態にあり、私たちの事務所に住む場所を求めて来て、シェルター待ち登録している人が25人以上います。彼・彼女らの話を聞いて、その辛さや苦しみを受け止めて、出来るだけ気持ちを軽くして、前向きに生きる意欲を持てるようにお手伝いするのも仕事です。
 中には自殺を考えたという話をする人もいます。この人にはしばらくしてからシェルターを紹介できましたが、その時この人は涙を流して喜んでいました。このように様々な状況の人が色々な問題を抱えて相談に来るので、とても対応が難しい仕事です。私達も専門的なカウンセリングの知識と技術を上げるよう努力しています。

——アフリカからの方たちでしょうか、今日もあちらの椅子に座って大勢の人が待っていますね。

 ええ、毎日ああしてここに集まってくるんです。もちろん相談に来ているんですが、他に行くところもないんです。

——子供を連れた女性の方もいますね。

 女性には特有な問題があります。難民の女性には望まない妊娠をする人がかなりいるんです。

——それはお金のために売春をしているということですか。

 いいえ、女性も寝るところが無くて、夜の街を歩きながら同じ国の出身と思われる人に一晩の宿を求めて助けを求めるんです。別に売春するつもりではありません。それでも中には「泊めてあげる」といって自分の家に連れて行った後に、性的関係を強要する男性も多いんです。難民の女性は逃げるところもないので、やむを得ず関係をもって、妊娠してしまうんです。それで、私達は難民の女性に対して避妊の教育や、子育ての教育なども行っています。

——ひどいことですね。

 日本で何とか頑張ろうと思っていた女性が、堕胎不可能になってから妊娠していることに気付いた場合、自分一人でも大変なのに、子どもを産んでどうやって生きていったらいいのか目の前が真っ暗になります。私たちはそういう人に寄り添って、病院への付き添いなどもして、何とか人生を切り開いていくことが出来るよう相談に乗り、サポートし、アドバイスをしています。

——日本政府は一体何をやっているでしょう。世界の他の国と比べたら、大したことのない数の難民申請者の生活をサポートすることもしないんですね。客観的には石川さんの団体は、日本政府にいいように利用されているんじゃないですか?

 そう見えることもあるかもしれないですね。私達としては、何が原因にせよ、日々の生活と難民申請に困っている人達を助けないわけにはいきません。もちろん日本政府に政策提言なども行って、制度的改善を通じて、このような状況を変えていく努力もしています。
 ただ政府とは持ちつ持たれつのような所もあって、難民申請に来た人が寝る場所がない場合など、私たちの事務所を紹介することが多いようです。一方で、難民の人のためのシェルターを、政府が手配してくれることもあります。彼らとしても難民の居所が分からないと、難民申請関係の書類が送れないですし。

  ——他に難民の人の苦労にはどんなことがありますか。

 難民の人たちは、身の危険を感じて取り敢えず一人だけで、家族は母国か難民キャンプに残してくる人がほとんどです。家族と引き離された苦痛は、日本での困難な生活を一層苦しくしています。難民申請しただけでは家族を呼ぶことは出来ませんし、いわゆる「人道的見地からの在留許可」でも基本的に家族を呼ぶことは出来ません。
 先日、私達が働きかけて、政治家の方も協力してくれて、例外的にシリアからの難民で在留許可を持っている人が家族を呼び寄せることが出来ました。空港でご主人と再会した奥さんは涙を流して喜んでいました。そういう時は私達も本当に嬉しいです。

——例外でも「出来る」ということは、法律上、本来は可能なんですね。日本政府が法律を厳しく運用しているということですね。やろうと思えばできることでもやらない、という選択を日本政府がしているということですね。
 日本では基本的人権は守られているものだとばかり思っていましたが、難民の人たちの人権は守られていないんですね。

 その通りです。一方で、難民の人たちに「人権を守ること」について気づかされることもあります。東日本大震災の際に、私達の団体でも何かできないかという話になったんですが、この事務所にくる難民の人たちから「苦しんでいる人の気持ちは自分たちにはよく分かる。ぜひ被災地の瓦礫処理なども含めて助けに行きたい」という声が上がったんです。私達は彼らに背中を押されるような形で、瓦礫処理ボランティア、ボランティアコーディネート、法律相談、女性支援、被災地難民への緊急支援など広範な「東日本大震災支援活動」を行いました。
 バスを手配して難民の人たちと何十人かで瓦礫処理ボランティアに行った際には、先方の住民の人に「ボランティアが来ると聞いてはいたが、肌の色の違う人が来るとは思わなかった」と驚かれました。でも力持ちの人も多いので「大変助かった」ととても感謝していただきました。

——困った時はお互い様、ということですね。難民の人たちに教えられますね。

第1回終
次回は、日本の難民政策を中心に伺います。

中島 敏 (ライター)

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中島 敏(ライター)
東京大学卒業後、旧国家公務員上級職として勤務。米国ブラウン大学経済学大学院留学。その後、米国ワシントンD.C.にて現地コンサルタント会社勤務。約12年間米国に滞在。日本帰国後は米系の経済分析コンサルティング会社にて裁判支援コンサルティングに従事。現在はフリーライターとして活動中。

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