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テレワーク隆盛で東京近郊への移住が始まった

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【内田樹氏に聞く(下)】大連立内閣は悪くないアイデアだが・・・

公開日: 2020/08/03 (政治, ソサエティ)

撮影・角田 撮影・角田

角田 裕育 (政治経済ジャーナリスト)

ーー新型コロナウィルス流行後、東京一極集中は改善されると思いますか?(聞き手は角田裕育)
内田 解消されると思います。テレワーク中心になれば、新幹線で一時間くらいの住環境のよいところに移るでしょう。信州とか房総とか伊豆とか。若い勤め人だと、書斎を持っている人ってまずないでしょう。でも、テレワークをリビングからするということになると、鬱陶しいじゃないですか。お父さんが一日中リビングを占拠してたら。昼間一人で仕事ができる部屋が必須ということになったら、多くの人は家賃の安いところに引っ越すんじゃないですか。

ーー若いお父さんは、本を読まない人が多いですし、書斎がない人が多いんではないですか?
内田 ふだん家に帰るのが10時、11時では、家に帰って本を読むということはできませんから。もう大分前から書斎なんてなくなっているんじゃないですか。

ーー東京は色々利便性があるのではないですか?
内田 東京でないと出来ない仕事をしている人や、刺激が欲しいという人は東京に住み続けるでしょうけれど、東京にいなくてもできる仕事の人はだんだんと離れていくんじゃないですか。

ーー例えばどんな職種や世代でしょうか?
内田 30~40代の、テレワークが出来る規模の会社ですね。大学も多くの大学で後期もオンライン授業になりました。相当長期化すると思います。

ーー教員目線だと来年の大学入試はどうなりますか?
内田 入試中止はあり得ないです。課題を提出させるというのもあるし、オンラインで面接するというのもあるし、オンラインで試験をやることもできると思います。何見ても良い。参考書見ても良いし、辞書見てもいいし、wikipedia見てもいいし、誰かに聞いても構わないという条件で試験をする。自分の手元にある知的なリソースを限られた時間内で活用できる能力を見るというのであれば、それでいいわけです。実際、学術研究する場合は本を読むし、辞書も引くし、人にも聞くし、あるものは全部使うわけです。暗記した情報以外は使えない環境で論文を書くということは実際にはあり得ないんですから。

大学でフランス語を教えているときはカンニングペーパー一枚に限り「持ち込みあり」でした。学力上がりましたよ。だって、教科書を隅から隅まで読んで、必要な情報を抜きさして筆写するんですから。

ーー受験勉強でも「英語の教科書を丸暗記する」という方法が『超勉強法』(野口悠紀雄著・講談社刊)でもあったと思います。
内田 今の入学試験の多くは暗記力の試験ですよね。暗記力ももちろんたいせつな知的能力ではあるけれど、それだけで知力は計れない。

ーー来年、1月から全国共通テストが始まりますが、オンラインで出来るんですか?
内田 全国共通テストはオンラインでは無理でしょう。だって、もう試験問題は出来上がっていますから。それにもともと学術的な能力を見る試験じゃないし。

ーー共通テストは実地されない可能性が強いと言うんですか?
内田 だって、受験生を一か所に集めるという行為が一番危ないんですから。受験生って、少し熱があるぐらいだったら休まないでしょ? 受験生に向かって、「37度あるから今日の試験は諦めろ」と言ったって聞きやしませんよ。

ーー入試中心の教育は変わりますか?
内田 変えるしかないでしょう。オンラインで面接とかなら出来ますし。

ーー暗記中心の受験には批判的なんですか?
内田 そんなことないですよ。暗記中心の受験はある意味フェアですから。それだけしか見ないんだから、受験生にしたら気楽ですよ。

ーーフランスのバカロレア方式に変えたらいいという声がよくありますが。
内田 無理ですよ。作問して採点する側の負荷も考えてほしいですね。できるわけないじゃないですか。

ーー早稲田大学あたりの入試が全問マークシートにしたがったのがわかりますね。しかし、驚きました。大学の教授目線から見ればそんなに変わるんですか?
内田 代わるんじゃないですか、すでに授業は全部オンラインですからね。 
  
▽コロナ後の日本人はどうするか?

ーー日本人は案外こういう時にどうするか、瞬発力があるんじゃないですか? 終戦後もそうですけど。
内田 瞬発力なんかないですよ。ただ現状を受け入れて、諦める。

ーー日本人は諦めると分析してるんですか?
内田 誰かに向かって怒りぶつけるとか、衆知を集めて難問を解決しようとか、そういうことはしないんです。ただ諦める。

ーー敗戦の時は諦めたと分析しているんですか?
内田 そうですよ。「一億総懺悔」で諦めたんじゃないですか。

ーーでは、明治維新はどうなんですか?
内田 諦めたんじゃないですか? 300年間続いた政治体制が崩壊したのに、「ご一新」で済ませて、「じゃあ、次行こう」だったでしょ。

ーーコロナ後に諦めて次、日本人は何を求めるんでしょうか? 明治維新なら近代化という目標がありましたし、終戦後は復興という目標ですが。
内田 コロナ後の日本の国家的な目標なんかないんじゃないですか?

ーー何か身も蓋もないんですが・・・。
内田 「こういう方向に行って、こういう国を作りましょう」ということなら、国民的な合意形成が必要なわけです。そのためには、国のあるべき姿についてのグランドデザインを提示しないといけない。それを考えるのが政治家の仕事ですけれど、今の政治家の中にポストコロナ期の日本のあり方について、広々とした、希望の持てるビジョンを語れる人がいますか? だから、何のヴィジョンもない、何のプランもないままポストコロナ期を迎えることになると思います。

ーーそこで台頭してくる政治勢力とかは、先生の見立てでは何でしょうか?
内田 こういう時ですから、ポピュリスト的な政党が出てくると思いますよ。でも、日本のポピュリストはおおむねが排外主義と新自由主義的な自己責任論ですから。ポストコロナ期に「医療は自己責任でやれ」「高齢者は死ね」とか主張しても、共感得られないでしょう。

ーーヒットラー的カリスマが現れる可能性はあるでしょうか?
内田 ないですね。

ーーこれからの政治・経済はどうなりますか?
内田 人獣共通感染症は経済活動が拡大して、環境破壊が進んだせいで広がるわけですから、感染症を止めようと思うなら、環境破壊を止めないといけない。経済成長を諦めなければいけない。そういう話です。

ーー資本主義の論理でドンドン公共事業なんかをやるのは止めようと?
内田 そうです。定常経済という、江戸時代みたいな経済状況に戻るしかない。バブル崩壊後、急激な人口減と高齢化に対処するために、東京にある限りの資源を一極集中することにした。でも、人口が一極集中したところが感染症には最も弱いことがわかった。だから、地方に人口も資源も分散するしかないと思います。

ーー東京下町の商店も高度成長前はそうだったと聞きますね。競争原理が働かないという・・・。
内田 水野和夫さんの本(記者注:『資本主義の終焉と歴史的危機』[集英社刊]等)を読むと定常経済がどういうものか書いてありますよ。

ーー読んでいます。水野先生の言説は資本主義の終わりの始まりみたいな・・・。資本主義の終わりの始まりに確実に向かっていくんですか?
内田 世界的に定常経済化していくんじゃないですか? それとも環境破壊を続けて、人獣共通感染症のパンデミックを繰り返し経験するか。

ーー世界規模ではどう考えますか?
内田 グローバル資本主義はもう持たないんじゃないかな。現に欧米が「鎖国」しているわけですから。人の出入りがない鎖国状態が21世紀に長期にわたって起きるなんて。

ーー想定外ですよ。正に。
内田 この状態を予測できなかったエコノミストが、この先について正確な予想を出来るはずがないです。

ーー私は国家社会主義経済で乗り切るなんて考えたんですけど。
内田 無理なんじゃないですか。

ーーだって予想できないんですもの。戦争の方がまだ想定出来るんじゃないんですか?アメリカ対北朝鮮の戦争なんか散々シミュレートしてきただろうし。先生も私(神戸市出身)も体験した阪神・淡路大震災で神戸市は散々、地震は想定してきましたが、これは読めません。
内田 こういう時、賢明な統治者なら押さえがきくかもしれないけれど。日本は安倍晋三だし、アメリカはドナルド・トランプですからね。

▽挙国一致内閣は悪くないアイデア
 
ーー安倍政権は持つでしょうか?
内田 持たないでしょう。この国の危機的な状況でまったく指導力を発揮できないんですから。

ーー次は誰になると思いますか?
内田 わかりません。

ーー個人的には菅官房長官じゃないかと思います。
内田 わかりません。政局って、予測不能なんですよ。ぜんぜん論理性がないから。

ーー非現実的な話にしか聞こえないかもしれませんが、野党の一部から流れてくる情報では、立憲民主党の枝野首班で大連立をやろうという人々がいるんですよ。共産党も含むそうです。
内田 国難的状況ですから、大連立・挙国一致内閣というアイデアは悪くないと思いますよ。でも、それだけのスケールの政治工作を仕掛けられるフィクサーがいないでしょう。 (終)
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角田 裕育(政治経済ジャーナリスト)
1978年神戸市生まれ。大阪のコミュニティ紙記者を経て、2001年からフリー。労働問題・教育問題を得手としている。著書に『セブン-イレブンの真実』(日新報道)『教育委員会の真実』など。
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