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オミクロン株はHIVが温床になった?

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【医学者の眼】まだまだ収まっていないHIV流行 日本でも患者微増

公開日: 2021/12/20 (ソサエティ)

HIV患者の連帯のシンボル、赤いリボン=ccbyGary van der Merwe HIV患者の連帯のシンボル、赤いリボン=ccbyGary van der Merwe

中島 正治 (医師、医学博士、元厚労省局長)

 オミクロン株は南アフリカから最初の報告がありました。南ア発となった理由の一つとして考えられるのは、南部アフリカがAIDS発症の原因となるウイルス、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染が非常に多い地域であることです。

 現在も14ー45歳の約20%が陽性という高率です。

 新型コロナウイルスがHIV感染者の体内に入り長期化すると、様々な変異が重なり、今回のオミクロン株のような多数の変異を持った感染性の高い変異株が生じやすくなるとも言われています。いわば、HIVがオミクロン株の温床になっている可能性もあります。

 もともと南アは医療体制等が不十分で新型コロナ感染が生じ、ワクチン接種も十分に進んでいない。そんななかで、HIVの検査、治療もさらに困難になっているようです。

 一方、新型コロナウイルス・ワクチンで成功したmRNAワクチンは、HIVワクチンとしても研究開発が進められています。ぜひ実用化が進むことを期待しますが、こんなところにも新型コロナウイルスとHIVは関連性があるといえます。

 ところで12月1日は世界エイズデーで、我が国でも全国の自治体等で様々なイベントが行われました。しかし、コロナ問題に圧倒され、マスコミでの世界エイズデーの扱いはとても地味でした。

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)によれば、2015年以降2020年までに新規HIV感染者は350万人増加し、エイズ関連の死者は82万人増加しました。いまだに世界的に大きな問題です。

 今やHIV感染は、適切に治療が行われれば死の宣告ではなく、慢性的とはいえ、対処可能な病気となっています。UNAIDSはHIVの新たな感染ゼロ、差別ゼロ、エイズ関連死者ゼロのビジョンを掲げて、様々な国際組織と連携して活動しています。

 世界ではまだHIV感染が拡大し、十分な医療も受けられない地域が多く見られます。そのひとつがオミクロン株が初めて発見された南部アフリカだったわけです。

 HIV感染症は感染者の免疫力の大きな低下をもたらします。また、治療を行っていてもウイルスの増殖を抑制することが主体で、免疫力は基本的に低下したままです。

 したがって、新型コロナウイルス・ワクチンに対する応答も十分得られず、感染しやすく、一旦感染すると免疫力によるウイルス排除が困難で、感染が長期化すると言われています。

 我が国での2020年1年間の動向としては、HIV感染者は750件、AIDS患者は345件であり、合わせた新規報告数は1,095件でした。累積では、HIV感染者22,489件、AIDS患者9,991件で計32,480件となっています。(図1 と図2参照)

 感染者と患者の合計数は、近年減少傾向にあり、特に2020年では大きく減少していますが、これは安心できません。保健所等にける検査・相談件数が2020年は大きく減少しているからです。(図3参照)

 2020年は新型コロナの影響で保健所は疲弊し、HIV感染者もなかなか相談に行けなかった可能性があります。2020年は感染者が減少したのに対し、患者数は2019年よりもやや上昇していることは、その表れかもしれません。

 発見の遅れは、その間の感染拡大の可能性と共に、治療にも影響する可能性があるため、今後の動向が懸念されます。

 HIV・エイズと新型コロナは予想外のところで関連があるようです。

 新型コロナのワクチン接種の推進、HIV対策の推進とHIVワクチンの開発など、医療体制の充実を含め、総合的にグローバルな視点で進めていく必要があります。

 また、HIVばかりか結核、がんや生活習慣病なども含めて、コロナ下といえども早期発見は非常に重要です。安易に先送りせず、適切なタイミングで受診したいものです。
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中島 正治(医師、医学博士、元厚労省局長)
1951年生。76年東大医学部卒。外科診療、医用工学研究を経て、86年厚生省入省。医政局医事課長、大臣官房審議官(医政局、保険局)、健康局長で06年退官。同年、社会保険診療報酬支払基金理事、12年3月まで同特別医療顧問。診療、研究ばかりか行政の経験がある医師はめずらしい。
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