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「あの方息をしていない」 電車内で突然死に遭遇

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【医学者の眼】コロナ下での蘇生術 感染防止に配慮を

公開日: 2021/03/31 (ソサエティ)

CC BY AED=CC BY /Tennen-Gas

中島 正治 (医師、医学博士、元厚労省局長)

 新型コロナウイルスは、変異株の流行などによる新たな波で、欧米諸国など世界中が再度の対応に追われています。我が国でも緊急事態宣言は解除されたものの第4波が始まっており、現状では欧米の数十分の一のレベルとはいえ、グーグル予測では4月下旬には現在の10倍程度まで急増することになっているなど、今後の推移が懸念されます。

 最近のある日の午後、私は折返し始発電車の空いていた席に座りました。向かい側には、山歩きでもしてきたようないで立ちの70代くらいの男性が、リュックサックを横に置きのけ反るような格好で座っており、やや行儀が悪いなと思っていました。

 すると私の隣に私よりも前から座っていた年配の女性が、向かい側の方は息をしていないのではないかと言われました。私もよく見ると、確かに胸も体も全く動いていません。私は医師という職業がら、すぐに近くに行き、声をかけましたが応答はなく、肌は土気色で、脈も触れず、やや冷たくなっていました。瞼を開いて瞳孔を見るとやや散大しており、死亡しているのだろうと考えました。

 近くに駅員さんが見当たらないので駅ホームで目についたSOSボタンを押すと、けたたましくサイレンが鳴り、ほどなく駅員さんが駆け付けました。事情を説明し、周囲の方の協力も得てお年寄りと荷物を駅ホームに移動しましたが、既に手足はやや硬直していました。

 外因によらない予期せぬ急死のことを突然死と言いますが、その原因は心筋梗塞などの心臓病によるものが最も多く、早期に発見されればAED(自動体外式除細動器)などによる救急蘇生が可能なこともあります。

 かつてはマウス・ツー・マウス(口対口)の人工呼吸も試みられていましたが、近年は感染リスクを避ける事や胸骨圧迫でも一定の循環及び呼吸作用が確保されることなどから、一般の方には、AEDと胸骨圧迫法による心肺蘇生が勧められています。

 特に、コロナ下の現在にあっては、コロナ感染も心肺疾患や血栓症など、突然死の要因になることが知られており、救命対象者がコロナ感染者である可能性も考えておく必要があります。

 生前に診断がついていないコロナ関連死については、東京都監察医務院と国立感染症研究所が報告しています。(「生前未診断のCOVID-19関連死の3剖検例」IASR Vol. 42 p34-35: 2021年2月号)

 これによれば、2020年に検案した異常死体の内でコロナ感染者との接触などの疑いのある161例にPCR検査を実施したところ、19例の陽性が確認されたことから、一定の頻度での感染の可能性を想定する必要があるとのことです。

 しかし、救命の可能性がある人については、適切な防護措置をとったうえでAEDや胸骨圧迫法などを行い、医療機関に搬送する必要があります。

 今回のお年寄は、死後硬直の様子からは死後少なくとも1時間程度は乗車していた可能性が考えられます。

 発病時に周囲の人に助けを求められなかったのか、周りの人もマスクをしていて異変に気付きにくかったのかなど疑問が残ります。

 いずれにしろ、体調に異変をきたしているような人が周囲にいた場合には、特に終点・折り返し駅では、ひと声かけて確かめていただくのが良いと思われます。

 私が乗った電車は少し遅れて発車しましたが、私が目的の駅について電車を降りるとき、はじめに隣で声をかけてくれた女性が拍手をしてくれました。私自身は、救命もできず残念で、何も特別のことをしたつもりはなかったのですが、コロナ下での医療者への応援を連想し、何となく温かい気持ちになりました。

 しかしこの拍手は、私にではなくて、よく観察の上指摘していただき、拍手までされた女性ご本人にこそ送られるべきものだと思い、ご協力に感謝いたします。

 どうかお年寄りが無事に、ご家族のもとに戻られることをお祈りいたします。
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中島 正治(医師、医学博士、元厚労省局長)
1951年生。76年東大医学部卒。外科診療、医用工学研究を経て、86年厚生省入省。医政局医事課長、大臣官房審議官(医政局、保険局)、健康局長で06年退官。同年、社会保険診療報酬支払基金理事、12年3月まで同特別医療顧問。診療、研究ばかりか行政の経験がある医師はめずらしい。
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