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感染研が公表した遺伝子分析が示唆すること

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【医学者の眼】新型コロナは遺伝子情報が変異 第3波、第4波の流行も

公開日: 2020/05/03 (ソサエティ)

CC BY CC BY /NIAID(cropped)

中島 正治 (医師、医学博士、元厚労省局長)

 2020年4月27日、国立感染症研究所から新型コロナウイルスのゲノム分子疫学調査の発表がありました。

 様々なコロナ関連情報が氾濫する中、埋もれてしまっているようにも見えますが、重要な点をいくつか含んでいるので紹介しておきたいと思います。

 発表資料は以下のURLに↓
https://www.niid.go.jp/niid/images/research_info/genome-2020_SARS-CoV-MolecularEpidemiology.pdf

 この研究は日本医療研究開発機構(AMED)の研究支援を受けて国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター(黒田誠室長)が医療機関や保健所などの協力の下に行ったものです。新型コロナウイルス感染症患者からの検体のゲノム解析を行い、世界中からの報告を参照しその違いを分析することで、このウイルスの実態と変化・変異、伝搬の様子を解明しようというものです。

 したがって、これは1研究施設でできることではなく、世界中の協力が必要なことから、2006年鳥インフルエンザを契機にスイスに設立され、現在はドイツに本部を置くGISAID(インフルエンザウイルス遺伝子データベース)という組織に情報データベースを設け、世界中の科学者が主体的に運用し、インフルエンザなどのウイルス情報を登録・収集し、国立感染症研究所も含めこれを利用し分析しています。

 今回の武漢での新型ウイルスの速やかな発見も、GISAIDへの速やかな登録とこれまでに蓄積されたデータが参照できた成果ともいえます。

 現在、世界で4511患者、日本では562患者の新型コロナウイルが解読されており、塩基変異を検出し親子関係を分析しネットワーク図などを作成するなどしています。



 新型コロナウイルス(COVID-19)は1本鎖のプラス鎖RNA(リボ核酸)ウイルスで、遺伝子情報は全部で約29,900個の塩基が並んでいる、いわゆる塩基配列でできています。

 変異の速度は1年間でこの中で平均25.9塩基に変異が起こり、2019年末からこれまでの4か月で少なくとも9塩基程度の変異がランダムに発生しています。

 1月初旬に武漢からの新型コロナウイルスにより日本各地でクラスターが発生しましたが、ダイヤモンド・プリンセス号でまん延したウイルスでは武漢のウイルスと比較して1塩基のみに変異がみられ、その後はこのクラスターは終息しました。(第1波)この時点では変異はわずかでした。

 一方、世界では3月初旬から欧州、北米で感染が拡大し、日本でも欧州では武漢のものから変異したウイルスが検出されています。その後、3月中に行動制限が不十分であったこともあり、感染リンク不明の個発例が多数発生し、欧米経由の輸入症例が国内にも拡散しているという状況です。3月の流行が遺伝子解析から欧米からはいってきたものであるのがわかっています。(第2波)

 こうしたことから、海外からさらに変異したウイルスが持ち込まれて第3波、第4波は必然と思われます。

 これまで、マスコミなどでは新型コロナウイルスということで一纏めに扱われてきましたが、実際はウイルスは時々刻々変化しており、各地で起こっている感染拡大も必ずしも同じウイルスによるものとは言えない可能性があります。

 変異したあとのウイルスがどの程度の病原性があり、免疫反応や治療対応性がどのように違うか等はまだ明らかではありませんが、少なくともいえることは、様々な可能性を想定しておく必要があるということだと思われます。

 我が国のコロナ対策については、マスコミなどで様々な批判がありますが、今回の研究でも初期のクラスター対策は上手く行われており、一定の成果が出ていたことが確認されました。一方で、感染経路が明確になっていない欧米からの新たなウイルスに対する対応方針は、今後さらに工夫が必要だということです。

 2015年のノーベル生理学・医学賞を受賞した北里大学の大村智特別栄誉教授が開発に関係しているイベルメクチンや日本初の薬アビガンなど様々な治療薬の可能性が出てきています。一方では社会経済的に外出自粛という経済活動停止も、いつまでも続けていては経済の悪化で不幸になる人が増えそうです。延長される緊急事態宣言をいつまで続けるのか、宣言を維持した場合でも自粛規制の段階的な緩和が議論になりそうです。

 そのような中で、本研究は第3派、第4派の流行が予想されると指摘していて、安易な対応に警鐘を鳴らす重要なエビデンス(根拠)といえます。

 今後ともGISAIDなどを通じた研究を進めるとともに、科学的な根拠に基づき先を見据え、社会的にもバランスのとれた対策を進めてほしいと思います。
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中島 正治(医師、医学博士、元厚労省局長)
1951年生。76年東大医学部卒。外科診療、医用工学研究を経て、86年厚生省入省。医政局医事課長、大臣官房審議官(医政局、保険局)、健康局長で06年退官。同年、社会保険診療報酬支払基金理事、12年3月まで同特別医療顧問。診療、研究ばかりか行政の経験がある医師はめずらしい。
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