• tw
  • mail

カテゴリー

 ニュースカテゴリー

  • TOP
  • 独自記事
  • IT/メディア
  • ビジネス
  • ソサエティ
  • スポーツ/芸術
  • マーケット
  • ワールド
  • 政治
  • 気象/科学
  • コロナ(国内)
  • コロナ(国外)
  • ニュース一覧

地味な扱いのノーベル生理学・医学賞だが 

あとで読む

【医学者の眼】外的刺激メカニズム解明で治療薬の開発に道筋

公開日: 2021/10/12 (ソサエティ)

1600年代ルネ・デカルトの人間機械論でも、足の熱感?が神経を通じて脳で認識されることが記されています。 1600年代ルネ・デカルトの人間機械論でも、足の熱感?が神経を通じて脳で認識されることが記されています。

中島 正治 (医師、医学博士、元厚労省局長)

 2021年ノーベル賞の話題は、物理学賞としては異例の気候変動に関する業績で、真鍋淑郎氏が受賞したことが大きく取り上げられています。

 一方、生理学・医学賞の方は、大方の予想が新型コロナウイルス・ワクチンの開発に貢献したカタリナ・カリコさん他だったのに対して、熱や痛みの感覚器官(レセプター)に関する発見で米国のアーデム・パタプディアン氏とデヴィッド・ジュリアス氏が受賞しました。

 予想を裏切られたためかどうかは分かりませんが、生理学・医学賞のマスコミ報道はとても地味で、まだよく知らない方が多いのではないでしょうか。

 コロナのmRNAワクチンについては、ノーベル委員会はこの手法ががんなど他の医薬の創出にも応用可能なものかどうか、うまく行くようなら医療上での大変革となると思われますので慎重に見ているのではないかと思われます。

 私が奇異に感じたのは、その報道内容です。多くのニュースでは、温度や触覚の受容体(センサー)の発見が、受賞の対象となったなどと書かれているものが見られます。

 私自身も我が国の報道を見て、温痛覚等のセンサーの発見がなぜ今ごろノーベル賞なのかと疑問に思いました。私が医学生であった50年近く前でも、既に皮膚等に温痛覚や触覚の受容体(レセプター)があることは、教科書にも書かれていました。

 したがって、これは報道が正確でないか、分かり易くし過ぎて大事なところが抜け落ちてしまっているのではないかと思いました。

 そこで、ノーベル賞について、当然一番正確に伝えているノーベル財団のホームぺージをみてみました。そこでは授賞理由について、以下のように記されています。

 既に皮膚などに触覚や温度などのセンサーが存在して、それらの刺激が神経を通じて脳に行き、感じることは分かっていましたが、どのようなメカニズムでそれらの刺激が細胞において電気信号になるのかは分かっていませんでした。

温度と痛みはTRPV1、触覚と固有受容感覚(筋肉や関節等の状態)はPIEZO2それぞれのイオンチャンネルの開閉で刺激が電気信号に繋がります
黄色の部分がチャンネル蛋白で、その隙間をイオンが通ります
*図はノーベル財団HPから

 受賞者の2人はそれぞれ独立に、各センサーを構成するタンパク質を同定し、遺伝子操作の手法で温痛覚によって反応してイオンを出し入れするチャンネル(TRPV1)、圧力に反応するチャンネル(PIEZO1,PIEZO2)を発見したと書かれています。

 これによって、人体が外界・外的刺激をどのように受け止めているかが明らかになったわけですが、この発見は痛みの制御や血圧や呼吸などの生理学的な調節、制御にも関わることから、このチャンネルに影響を及ぼすような新たな治療薬の創出などの医療上の伸展も期待されるとしています。

 こうした医学の進歩に基づく、イオンチャンネルや詳細な分子制御を目的とした治療薬は、近年次々に開発されてきていますが、今回の受賞に関連していえば、私個人としては日夜悩まされている過活動膀胱(膀胱の圧力センサーの異常ではないかと私は考えています)の良い薬をぜひ早く作ってほしいと思っています。
続報リクエストマイリストに追加

以下の記事がお勧めです

  • 【医学者の眼】 インフルとコロナ、「ツインデミック」(両方流行)の可能性も

  • 【医学者の眼】 東大リポート デルタ株の感染力が強まるメカニズムを解明

  • 中島 正治のバックナンバー

  • ラガルドECB総裁が豹変 7月利上げを「宣言」

  • 北欧2国のNATO加盟には疑問

  • 北朝鮮へのワクチン外交を期待

  • “習降李昇” 習近平の権力が弱まり、李克強が浮上しているのか? 

  • プロフィール
  • 最近の投稿
avator
中島 正治(医師、医学博士、元厚労省局長)
1951年生。76年東大医学部卒。外科診療、医用工学研究を経て、86年厚生省入省。医政局医事課長、大臣官房審議官(医政局、保険局)、健康局長で06年退官。同年、社会保険診療報酬支払基金理事、12年3月まで同特別医療顧問。診療、研究ばかりか行政の経験がある医師はめずらしい。
avator
中島 正治(医師、医学博士、元厚労省局長) の 最新の記事(全て見る)
  • 【医学者の眼】ハーバード大教授が新著で「地球外文明からの探査機説」  -- 2022年5月6日
  • 【医学者の眼】未開の部分大きく、さらなる治療薬に期待も -- 2022年3月22日
  • 【医学者の眼】無菌飼育や遺伝子組み換えで安全性を確保 -- 2022年2月17日
Tweet
LINEで送る

メニュー

    文字サイズ:

  • 小
  • 中
  • 大
ソクラとは 編集長プロフィール 利用案内 著作権について FAQ 利用規約 プライバシーポリシー 特定商取引法に基づく表示 メーキングソクラ お問い合わせ お知らせ一覧 コラムニストプロフィール

    文字サイズ:

  • 小
  • 中
  • 大
  • 一覧表示を切替
  • ソクラとは
  • 編集長プロフィール
  • 利用案内
  • 著作権について
  • メーキングソクラ
  • お知らせ一覧
  • FAQ
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー
  • 特定商取引法に基づく表示
  • お問い合わせ
  • コラムニストプロフィール

Copyright © News Socra, Ltd. All rights reserved