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新型コロナが透析患者を追い詰める

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【医学者の眼】感染しても入院困難 平均より高い死亡率

公開日: 2021/01/29 (ソサエティ)

人工透析装置=cc0 人工透析装置=cc0

中島 正治 (医師、医学博士、元厚労省局長)

 新型コロナウイルス感染症の第3波による急速な患者増により、感染者の入院治療が困難をきたしており、自宅やホテルでの待機中に急激に悪化して入院できずに死亡する例も、少なくない数が報告されています。ワクチン接種がいまだ開始されていない我が国では、国民の不安が増しています。

 こうした中、マスコミではあまり取り上げられてはいませんが、透析患者のコロナ対応は一層困難な状況となっています。

 我が国の透析患者数は約34万人(2019年12月)で人口対比では世界一多く、人口構造の高齢化等に伴い年間約5000人増加しています。昔であれば入院治療をせざるを得なかった慢性腎不全ですが、現在は就業・社会活動を行っている患者は60歳未満の男性患者では約7割に及びます。

 その大部分は外来透析で、週3回程度通院し4時間程度の透析を行います。

 透析施設は現在約4400箇所あり、透析器は約14万台が稼働しています。

 これまでの地震や風水害などの災害時においても、日本透析医学会、日本透析医会等の連携・協力などで患者の移送や応援により適切に透析医療が提供されてきていました。

 しかし今回のコロナ患者の急増では、状況がやや異なってきているようです。

 当初から、透析医療の対象患者の多くは腎炎、糖尿病、心臓血管疾患などを合併した腎不全状態にあり、コロナ感染の重症化が想定されることから、基本はコロナ感染時は入院治療の対象とされてきました。

 しかし、昨今のコロナ患者の急増により入院治療が困難になるに及んで、透析患者のコロナ感染による入院は一層困難になっています。これは、透析設備を持つコロナ入院施設が一般コロナ対応病院に比べて数が非常に限られているためです。

 当初は透析中のコロナ感染もそれほど多くなく、透析医会などの協力により、何とか入院透析治療が確保されてきましたが、特に今年に入り入院調整が困難となるにつれ外来透析施設での透析継続を余儀なくされるようになってきています。

 こうした状況下で、透析コロナ入院病床の確保の依頼が透析医会から関連施設に最近、頻回に通知されている現状です。

 コロナ感染透析患者は、最近では全国で1週間に100名を超す増加となり、2021年1月21日時点で894人(透析患者全体の0.26%)となっています。この頻度は、人口対比では一般人の感染率と同程度です。

 透析患者は日常生活においても、また透析施設においても衛生環境に特に慎重に対応されていると思われますが、それでも一般と同程度の感染となっているということは、市中感染がそれだけ広まっているということが考えられます。

 コロナ患者の診療を行っていない医療機関の透析施設では、転院困難なコロナ感染患者については、臨時の隔離室やパーティションを設けたり、透析の時間を他の患者とずらせるなどの対応をしていますが、呼吸不全などの重症化に伴って治療が困難になるケースが増加しています。

 こうした厳しい状況を反映してか、現在までに転帰が判明した透析コロナ患者の内99名が死亡しています。死亡率は28.2%(一般患者1.4%)で、40代5.0%(同0.08%)、50代13.1%(同0.3%)、60代22.7%(同1.3%)、70代39.6%(同4.3%)、80代45.6%(同11.5%)と一般患者に比べて著しく高く、高齢者ではSARSやMERS以上で、エボラ出血熱にも迫る結果となっています。症例数はまだそれほど多くはありませんが、特に比較的若い世代での死亡率が一般コロナ患者に比べて数十倍と極めて高いことが注目されます。(日本透析医会・日本透析医学会・日本腎臓学会 新型コロナウイルス感染対策合同委員会「透析患者における累積の新型コロナウイルス感染者の登録数」 (2021年1月21日16時 時点))

 これらの数値からも、重症化し入院を要する透析コロナ患者が相当数生じていることが予想され、今後更に感染者が増大すれば、十分な治療が受けられない透析患者は一層増大することになります。

 今後さらに速やかなワクチン接種やソーシャル・ディスタンス、衛生対策などにより感染拡大をできるだけ防ぐことが必要です。また、透析患者を含めその病態解明と治療方法の開発、PCR等検査体制の充実、入院・治療体制の整備などにおいて、メリハリをつけ真に必要な患者に適切な医療が提供されるよう、医療関係者の協力と政府・自治体の支援によって実現されることが望まれます。
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中島 正治(医師、医学博士、元厚労省局長)
1951年生。76年東大医学部卒。外科診療、医用工学研究を経て、86年厚生省入省。医政局医事課長、大臣官房審議官(医政局、保険局)、健康局長で06年退官。同年、社会保険診療報酬支払基金理事、12年3月まで同特別医療顧問。診療、研究ばかりか行政の経験がある医師はめずらしい。
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