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東大リポート デルタ株の感染力が強まるメカニズムを解明

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【医学者の眼】日本人が多く持つ免疫HLA-A24がかかりにくくしていた

公開日: 2021/08/12 (ソサエティ)

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中島 正治 (医師、医学博士、元厚労省局長)

 さまざまな議論があった東京2020オリンピックは、日本としてはメダル数では好成績を残して終わりましたが、一方で新型コロナ感染はさらなる広がりを見せています。

 今回の第5波は、これまでとはやや違う様相を呈しています。

 ・感染拡大の速度と感染者数が大きいこと。
 ・我が国では感染者数に比べて、重症者や死者数がこれまでと比べて少ないこと。
 ・インドはもとより、日本をはじめ、インドネシアやフィリピン、タイ、マレーシアなどこれまで欧米などに比べて感染が抑えられてきた東アジア、東南アジアの国々においても急拡大を見せていること。

 我が国でのワクチン接種率は2回目を接種済み人口は約33%で、まだ十分とは言えませんが、高齢者については約80%となっており、重症化、死亡に至り易い高齢者を優先して接種した効果が現れていると思われます。一方、接種がまだ進んでいないアジア諸国では医療用酸素不足など医療ひっ迫状況が進んでいます。

 今回の再拡大の原因はデルタ株と呼ばれる、インドで発生したと思われる変異株と考えられています。実際、既に米国では新たに検出される約8割がデルタ株で、日本でも首都圏ではほぼ9割と急増しています。

 それではなぜデルタ株がこのように再拡大をもたらしたのかについては、感染力がこれまでのものよりさらに強い事があげられます。ほぼ水痘(水疱瘡)なみで、少しオーバーかも知れませんが、空気感染と言っても良いほどだとされています。 

 感染力が強くなっていることに関して興味深い研究があります。

 東京大学医科学研究所附属感染症国際研究センターの准教授でシステムウイルス学分野の佐藤氏が主宰する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は2021年6月14日に米国科学雑誌「Cell Host & Microbe」オンライン版に「ウイルスの感染力を高め、日本人に高頻度な細胞性免疫応答から免れるSARS-CoV-2変異の発見」という論文を公開しています。

 発表リリースを基に要約すると、

・新型コロナウイルス・デルタ株のスパイクタンパク質の感染受容体結合部位(ウイルスの表面にあってヒトの細胞にくっつくトゲ)は、ヒトの細胞性免疫を司る「ヒト白血球抗原(HLA)」の一種「HLA-A24」によって認識される。
・この認識されることを利用して、「懸念すべき変異株」に認定されている「カリフォルニア株(B.1.427/429系統)」と「インド株(B.1.617系統;デルタ型)」に共通するスパイクタンパク質の「L452R変異」によって、HLA-A24を介した細胞性免疫につかまりにくくなっている。
・「L452R変異」は、免疫に捕まりにくいだけでなく、細胞にたどりついた後の入り込みが速かったり、増殖が速いなどウイルスの感染力をさらに増強する効果がある。

 人の免疫には抗体による液性免疫とリンパ球などによる抗体を介さない細胞性免疫があります。デルタ株の変異が細胞性免疫のうち、これまで有効に機能していたと思われるアジア人に多く見られるHLA-A24(日本人の約6割をしめる白血球の型。新型コロナウイルスのスパイクタンパクをよく認識できる)を介した部分をすり抜けるために、感染しやすくなっているということです。

 東大の研究は、単にデルタ株の感染力の高さを分析しているだけでなく、日本人がデルタ株以前の新型コロナウイルスに欧米に比べ感染しずらかったのは、このHLA-A24を多く持っていたからではないかと示唆しています。日本はBCG接種国で新型コロナ感染やそれによる死亡が低く抑えられてきた面もあるのかもしれません。

 この発表があった6月頃は、日本はまだ感染が抑えられていましたが、その後予想どおりの感染爆発となってしまいました。

 変異株については、専門家も含め従来株からの「置き代わり」という表現をしますが、実態は感染力の強い変異株の新たな感染者が増え、従来株は減少していっている状況でしょう。置き換わりというよりは、新たなより強力なウイルスによる感染が増大していると考えた方が良いように思えます。

 幸い、コロナワクチン接種はデルタ株においても感染や死につながる重症化の抑制に一定の有効性を持っているようです。速やかにワクチン接種を進めることが、従来の新型コロナへの対応と同様に最もよい対処法と思われます。

 感染力が増しているからと言って、欧米で感染初期のころに取られたような外出禁止をとるようなものではなく、ワクチンパスポートも含め、より実効性のある効率的な方策の知恵を出し、十分な議論を踏まえて社会経済活動を適切に守るべきであると思われます。

 ウイルスはさらに変異することも考えられます。当分の間は様々な試行錯誤を繰り返すしかないようです。
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中島 正治(医師、医学博士、元厚労省局長)
1951年生。76年東大医学部卒。外科診療、医用工学研究を経て、86年厚生省入省。医政局医事課長、大臣官房審議官(医政局、保険局)、健康局長で06年退官。同年、社会保険診療報酬支払基金理事、12年3月まで同特別医療顧問。診療、研究ばかりか行政の経験がある医師はめずらしい。
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