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感染力弱いのにサル痘騒ぎ なぜ

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【医学者の眼】潜伏期間が長く、感染経路も不明 日本の医薬基盤の強化が課題

公開日: 2022/05/30 (ソサエティ, 気象/科学)

Reuters Reuters

中島 正治 (医師、医学博士、元厚労省局長)

 今年の5月以降、猿痘(サル痘)の報道が目立ち、既に約20ケ国、200人以上が報告されています。

 WHOも警鐘を鳴らし、我が国でもいまだ侵入は確認されてはいないものの、厚労省は厳重な注意喚起をしています。

 猿痘とはあまり聞きなれない病気ですが、その名のとおり皮膚に水ぶくれができる病気で、天然痘(痘瘡)と似たウイルスの感染によって起こります。

 猿痘はアフリカ西部の動物に感染し、生息しており、当地を訪れた人などが感染したことがこれまでもありましたが、今回は必ずしも渡航歴がなく、感染経路が分からないケースや男性同性愛者などにみられたことなどが注目されています。

 コロナの次は猿痘かと心配になるのは分かりますが、まだ200人程度です。発疹分泌物に接触するか感染者の飛沫に長時間さらされる等がなければ感染しないなど、感染力は必ずしも強くないので、パンデミックのようなことにはなりそうもありません。その割に世界中の反応はとても大きく、不思議に思われます。

 今回の猿痘について懸念されることを調べてみたところ、以下のような点が問題と思われます。
 
 経路不明の市中感染が起こっている可能性があるという事は、既にかなり蔓延しているかもしれないこと。猿痘の潜伏期は3週間程度とやや長いので、他の地域に持ち込まれたときに発見が遅れやすいこと。
 
 猿痘は天然痘と類似のウイルスで、天然痘ワクチンが有効であることが分かっていますが、天然痘はWHOによって1980年に絶滅が宣言されたように、そのワクチン接種も50年近く前から行われなくなっています。したがって、若い世代には全く免疫がない状態で接することになるため、急激に拡大する可能性も考えられます。

 猿痘は天然痘に比べて致死率はやや低く1~10%程度とされています。天然痘との類似性から、感染力や毒性に関して生物兵器としての利用の可能性が研究されてきたという指摘があります。

 因みに、天然痘は撲滅されて以降、そのウイルスは各国で廃棄が進められましたが、米国とロシア(旧ソ連)は現在も保管しているとされています。

 今回のケースでは今のところ、今回の猿痘の感染力や毒性にこれまでと特に変化はないとされています。

 これらの点を慎重に勘案して、各国は対応しているのではないかと思われます。

 では、当面国民は何をすればよいでしょうか。

 まずはコロナと同様に、日常の手指などの衛生管理ですが、コロナ対策と同様です。

 感染の疑いのある男性同性愛者との性的濃厚接触には、注意が必要です。

 そして早期発見が大切なので、発疹や発熱、リンパ節腫大などが見られた場合には速やかに医師の診察を受けましょう。 

 医師については、猿痘は我が国では経験がないものの、これに関する鑑別の知識が必要です。最終診断はPCR検査を行いますが、感染症法の4類に属しますから診断した医師は直ちに保健所に報告する必要があり、国立感染症研究所で検体を調べます。

 天然痘の仲間としては猿痘の他にも、牛痘、羊痘、馬痘、鶏痘などがあります。

 因みに、猿痘もサルから発見されたという経緯はあるものの、猿とはあまり関係なく、人への主な感染経路はネズミなどのげっ歯類やタオルなどを介しての発疹分泌物との接触です。

 天然痘ワクチンには、ジェンナー(1797年発表)によって牛痘(ウイルス)が用いられましたが、実はこれは馬痘が牛に移ったものであったことが最近明らかになっています。

 この天然痘ワクチンは猿痘にも有効で、国に備蓄もありますがバイオテロなどの非常事態用で、ワクチンの副作用も考えると現時点で広く猿痘のための予防接種という事にはなりそうもありません。

 他にも現在、原因不明の小児急性肝炎の流行などもあり、いずれにせよ医療技術の進歩に対応した健康危機管理の在り方を強化する必要があります。

 特に近年、医薬品産業の不祥事が目立つ中、新時代のワクチン製造を含む我が国の医薬産業基盤、健康危機管理体制をいかに充実していくかが重要な課題です。

 WHOや各国ともまだ症例やウイルスについて研究中ですが、しばらくは動向を注視する必要がありそうです。
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中島 正治(医師、医学博士、元厚労省局長)
1951年生。76年東大医学部卒。外科診療、医用工学研究を経て、86年厚生省入省。医政局医事課長、大臣官房審議官(医政局、保険局)、健康局長で06年退官。同年、社会保険診療報酬支払基金理事、12年3月まで同特別医療顧問。診療、研究ばかりか行政の経験がある医師はめずらしい。
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