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盆暮れには、ボンクレキン酸にご注意!

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【医学者の眼】長期の冷凍保存でも、食中毒の危険性

公開日: 2020/11/10 (ソサエティ)

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中島 正治 (医師、医学博士、元厚労省局長)

 2020年10月中国黒龍江省で、冷凍保存してあったトウモロコシの発酵麺である酸湯子(すっぱい麺)を解凍して食べた家族が食中毒となり、9人が死亡したという報道がありました。

 この麺は1年間にわたり冷凍保存してあったことから、シュードモナス菌の汚染により呼吸毒素のボンクレキン酸が生成し、中毒を起こしたと見られています。

 ボンクレキン酸は熱に強く、100度の湯でも毒性をなくすことはできません。また、有効な解毒剤はなく、死亡率は40%以上とも言われています。

 以前からトウモロコシ、ココナッツや小麦などのでんぷん質を使った食品やビール等に微生物が混入することにより、中国以外にインドネシアなどでも同様の中毒の報告があります。

 ボンクレキン酸自体は、細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)やオートファジー(自食)の阻害作用があり、薬理研究上有用性が高い物質で、近年合成の合理化に成功し研究進展が期待されています。

 私自身も先日、牡蠣フライを食べ腹痛と下痢に苦しみましたが、その際食中毒について再認識する必要を感じました。

 食中毒は多くはカンピロバクター等の細菌やノロウイルス等のウイルスが食品を通じて人に感染し、消化器症状などを生じるものと考えられていますが、原因としては他にもアニサキス等の寄生虫、化学物質やフグ毒等の動物性毒、トリカブトやスイセン等の植物性毒などの自然毒を摂取することによっても生じます。しかし、化学物質や自然毒によるものは全体の3%程度と比較的に少数です。

 季節的には、冬はウイルス性、夏は細菌性の食中毒が多く発生します。

 牡蠣については、2種類の原因があり、ノロウイルスによるものは十分な加熱により対応できますが、貝毒によるものは牡蠣フライなどで加熱しても消滅せず、私の場合のように当たってしまいます。

 今回のボンクレキン酸食中毒は、食品と微生物の相互作用の上に長期保存という条件が重なって生じたケースで、毒素性ではありますが独特な事例と言えます。冷凍とはいえ、あまり長期の保存は必ずしも安全とは言えません。

 食中毒の発生は、我が国では年間1万5千人ほどですが、死者は5人程度ですから一度に9人が死亡した今回は非常にまれなケースと言えます。食中毒の発生場所は、飲食店が半数以上を占めています。

 最近は、コロナ対策で手洗いなどの一般的な衛生状況は改善しており、また、外食自粛などで、集団食中毒は今年3月以降は激減しています。しかし、中身をよく見ると毒素性の食中毒は平年並みに発生しており、すべてが減少しているわけではありません。

 今年はインフルエンザがいまだに流行の兆しが見えないなど、多くの感染症は減っていますが、感染経路がコロナ対策から外れる(親子、家族等)乳児の突発性発疹等や、食品についてはそれ自体に毒素やアニサキスなどの寄生虫等を持つものなどによる食中毒は、依然発生しており、その因果関係を証明しているように思われます。

 外食自粛でのテイクアウトについても、作られてからの時間経過や保存状態など食中毒に対する注意は必要です。

 これから年末にかけて飲食の機会は、やはり増えるのではないかと思われます。

 コロナの食品による感染の報告はこれまでないとされていますが、コロナ対策ばかりに気をとられ、又はコロナ対策が充分だから他の点も安全と短絡的に過信することなく、ボンクレ(盆暮れ)キン酸も含めてその他の可能性にも用心を怠らないようにしましょう。
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中島 正治(医師、医学博士、元厚労省局長)
1951年生。76年東大医学部卒。外科診療、医用工学研究を経て、86年厚生省入省。医政局医事課長、大臣官房審議官(医政局、保険局)、健康局長で06年退官。同年、社会保険診療報酬支払基金理事、12年3月まで同特別医療顧問。診療、研究ばかりか行政の経験がある医師はめずらしい。
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