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脱コロナ、必要なのは高齢者対策

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【医学者の眼】#BoomerRemover(団塊世代を叩き出せ) がツィッターに相次ぐ、高齢者差別の勃興か

公開日: 2020/05/18 (ソサエティ)

コロナウィルス=cc0 コロナウィルス=cc0

中島 正治 (医師、医学博士、元厚労省局長)

 国の緊急事態宣言から1か月を過ぎ宣言が延長され、一部自治体では解除の動きが見ら
れます。

 国民、関係者の協力により新規感染者数は減少傾向にありますが、飲食など自営業者、観光、宿泊関係などでは損失の影響は大きく、関連の非正規従業員、学生などのアルバイトは収入を失い、学費納入だけでなく家賃や生活費にも困窮する人々が多発する事態となっています。

 政府は支援策を打ち出していますが、先行き不透明な中、これでどこまで耐えられるか、不安の解消には程遠い状況です。

 この間、ネット上には不満を募らせた若者などの間で#BoomerRemover(ベビーブーマー・老害除去剤)というハシュタグも生まれました。

 これは新型コロナ問題で健康上深刻な影響を受けるのは多くは高齢者(ベビーブーマー世代以上)であるのに、社会経済活動などが半ば強制的に停止され、若者までが深刻な影響を受けるのは不合理だということから、新型コロナウイルスをBoomerRemover(ベビーブーマー・高齢者除去剤)と呼んで鬱憤を晴らそうとする動きです。

 もっとも、若者の高齢者に対する不満は、他にも環境問題や富の分配問題などいくつもあるようです。我が国のマスコミにはあまり取り上げられませんが、ネット上では我が国においても一定の広がりになりました。

 一部自治体では解除の具体的条件を決めるなど国に先駆けて取り組みを始めており、住民にとっては一つの励みにもなると思われます。

 主な論点は解除条件としてのPCR等の検査の充実、感染者数の推移(実効再生産数など
)、病床準備状況などで、解除の業種や地域などの手順も検討されているようです。それらの議論で私が疑問に思う点があります。 

 それは、一つは健康影響の中心的被害者である高齢者への対策という観点が見えてこないこと、また、感染することと重症化や死亡などの重大影響が区別して議論されていないのではないかということです。

 もともと今回のコロナ問題では、武漢での都市封鎖という最も強硬な手段をとった時点から、果たしてそこまでせざるを得ない状況なのかという疑問がありました。エボラ出血熱などの数10%という高い致死率の病気であれば別ですが、死亡率数%という状況で地域の経済を止めてしまえば副作用の方が大きすぎるのではないかと考えたわけです。

 当初はまだ病気の実態が不明なことが多く、武漢では医療現場が混乱したこともあり、また中国という法制度の国なので特別のことと考えましたが、その後各国で同様な措置が相次いでとられるようになり、事実上世界の経済が止まったような状況になってしまいました。

 それもせいぜい1月位なら何とかなるかもしれませんが、2か月、3か月となりさすがに国民生活に大きな影響が出て、強制的な封鎖、休業措置をとらない国や地域も出てくるようになりました。一部では暴動のような動きも伝えられ、また、自粛、失業、閉じこもりからうつ、自殺の増加(コロナの死亡を上回る?)なども指摘されています。

 当初は患者、重症者が急増し、ICU等のベッドが不足し、医療関係者も感染、重症化し医療崩壊も叫ばれていたので、強硬手段もやむなしとされましたが、一段落を迎え、出口戦略が議論される段階になっています。

 しかし、世界的にも我が国の議論でもあまり注目されていないようにみえるのが高齢者に対する取り組みです。

 つまり、対策は年齢に関わらず行われており、せいぜい若者や子供の学校の再開などで違いがある程度です。

 既にこれまでの経験から明らかなように、感染自体は各年代に起こり、青壮年で多い(感染者全体の約76%が60歳未満)のは間違いないのですが、重症者や死亡者は明らかに高齢者に集中しています。(60代以上が死亡例の約94%、重症例の約70%を占める データは東洋経済ONLINE 2020年5月7日 不明者除く)

 これは、よく引き合いに出されるスペイン風邪が青壮年の死者を多く出した事や季節性のインフルエンザなどとも大きく異なっており、新型コロナウイルスに特徴的と思えます。つまり、新型コロナウイルスは高齢者にとってはSARSやMERSにも匹敵するかもしれない強毒という一方で、若者には(稀な症例を別にして)通常のインフルエンザと大きくは異ならないともいえる可能性があります。

 こうしたことから、出口戦略でも忘れてならないのは高齢者をどう守るかということだと思われますが、現在の専門家などの議論でもそのあたりが明確になっていないのはなぜでしょうか。

 今後の問題は経済活動再開の中で、もしかすると置いてきぼりになるかもしれない高齢者をどう守るのかということです。

 高齢者に焦点を当てて、医療では病院や診療所で高齢者の外来の日や時間帯を若者と分けることや、介護サービスでは介護職員などの感染チェックを定期的に徹底し安全確認する、電車などでは高齢者専用車両を設ける、飲食店では高齢者席を若者と分ける、遠隔診療やキャッシュレスなどの高齢者がITを活用できる環境を整えるなどなど、自宅に閉じこもるだけでなく様々な工夫が出来そうですから、是非政策的にも積極的に取り組んでほしいと思います。

 あるいは、高齢者は年金生活が多く、また若者に比べて貯蓄が多いので今回の経済的影響をあまり受けていないと思われ、議論の対象にもなっていないということでしょうか?

 また、重症化した時の高齢者の医療のあり方については、2020年3月30日、生命・医療倫理研究会の有志は「感染爆発時の人工呼吸器の配分プロセス」を提言しました。また、一方で救急や高度医療の必要性について高齢者が若者に「集中治療を譲る意志カード」を作る動きもあるようです。

 私は治療の採否は個人の意思と医学的な総合的判断によるべきだと思いますので、元気なうちにいわゆる「人生会議」を行って意思を明らかにし、あとは治療の有効性に基づいて治療の優先順位も含めて医師の判断に任せるのが良いと思います。もちろんその中で「譲る意志カード」という選択肢もあるかと思います。

 若者と高齢者の世代間分断にもつながりかねませんが、理由を明確にして若者中心に社会経済再開という必要な施策をとることの方が、なし崩し的にすべての世代を巻き込むよりも余程納得できるのではないでしょうか。

 (私は69歳で厳密にはベビーブーム後の世代に属しますが)まさか#BoomerRemoverを実践しようというわけではないでしょうね?
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中島 正治(医師、医学博士、元厚労省局長)
1951年生。76年東大医学部卒。外科診療、医用工学研究を経て、86年厚生省入省。医政局医事課長、大臣官房審議官(医政局、保険局)、健康局長で06年退官。同年、社会保険診療報酬支払基金理事、12年3月まで同特別医療顧問。診療、研究ばかりか行政の経験がある医師はめずらしい。
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