状況を把握ための重要なデータが東京都HPの「都内の最新感染動向」に載っている。
ともすれば、新規感染者数が気になって、一喜一憂しがちだが、私が注目しているのは、「#7119(救急安心センター事業)における発熱等相談件数」と「救急医療の東京ルールの適用件数」、「入院患者数」だ。これらは、新型コロナ第二波への備え=「医療崩壊を起こさない体制」を保つうえで重要な指標となる。
まず、発熱等相談件数には、感染症の流行状況がストレートに反映されている。救急安心センター事業とは、急な病気やケガで救急車を呼ぶかどうか迷ったとき、電話番号の#7119を押すと、電話口で医師や、看護師、トレーニングを受けたスタッフが相談にのってくれる制度。流行実態が直に数字につながっている。陽性者数はPCR検査数が増えるにつれて増えてしまい流行実態を必ずしも反映しないことを補正できる指標だ。
緊急事態宣言が解除された5月25日の発熱等相談件数は50件。これに対し、7月12日のそれは96件とほぼ倍増。7日間移動平均で66.3件と、第一波襲来中の3月22日の64.6件とほぼ同数になった。第一波では、このあと相談件数は上昇し続け、4月4日に149件とピークに達し、4月5日に7日間移動平均でも117.1と最高を記録する。これは後からわかった第一波の感染拡大の頂点とほぼ重なっている。
現在、大規模な食中毒流行などは報じられていない。100件ちかくまで発熱等相談件数が増えていることは、第一波の流行拡大前に似ている。先に発熱等相談件数が増加し、その後、PCR検査を受けた陽性者が増える。第一波では検査結果が出るまで日数がかかったので、感染者の増加はその分遅れた。無症状を含む日ごとの新規感染者数の増減よりも、発熱等相談件数のほうが直近の有症者の状況を表しているといえるのではないか。

東京ルールは、救急患者がたらい回しされて収容先の医療機関が決まらないのを防ぐための取り決めだ。都内には医療圏ごとに総数89の「地域救急医療センター」が整備されており、東京消防庁の「救急患者受け入れコーディネーター」が搬送先の定まらないケースでは医療圏をこえて「都内全域」調整を行うというもの。
東京ルールの適用件数は、年間で約6500件、一日当たり18件弱。救急医療のひっ迫感が伝わる数値だ。
東京ルールの件数は、7月12日時点の7日間移動平均で30.6件。緊急事態宣言が解除された5月25ごろからほぼ横ばい。ピークだった5月5日時点での同平均の100件に比べれば、3分の1以下で、いまのところ救急現場には大きな負荷はかかってなさそうに見える。
だが、「入院患者数」は、7月3日の324人から13日には651人まで増えた。10日で倍増しており、新型コロナ用に確保されている1000床の7割ちかくが埋まっている。
東京都が発表した「専門家によるモニタリングコメント・意見(7月8日)」は、「入院患者は、2週間連続で増加しており、今後患者数が増加する見込みであることを踏まえて、レベル2(3000床)の病床確保が必要である。稼働できる病床の準備には、人員確保を含め2週間程度かかることから、直ちに着手が必要である」。7月22日ごろまでに3000床確保されていれば、一応の備えは整ったといえるだろう。
一方で、頭の痛い問題が持ち上がった。7月14日付の読売新聞によれば、東京都は陽性者7927人のうち、479人を「入院・療養等調整中」としているが、「このうち多くと連絡が取れない状況になっている」と政府関係者が証言している。感染した若年層には無症状や軽症が多い。そうしたケースでは「ホテルや自宅での自主的な療養」を求めているが、要請に応じず、外出したり、別の場所で仕事を続けていたりする人が多いとみられる。
無症状なのに二週間も隔離されたくはない、と思ってのことだろうが、公衆衛生の観点からは是認できるものではない。都は、無症状・軽症者を受け入れるホテルとの契約を延長すべきだが、日刊ゲンダイの記事によると、6月末で5つあった契約先のうち3つを延長しなかった。いま、あわてて新たな受け入れ先と契約しつつあるらしい。
日本財団が船の科学館および日本財団パラアリーナに建設中の大型テント張り、あるいはプレハブハウス型の危機サポートセンター(計250床)のような受け皿を至急用意しなくてはなるまい。
並行して「療養強制と私権制限に伴う補償」に向けた法整備も必要だろう。国会は閉会中審査で、すぐに対応しなくてはならないし、法整備なくとも新型インフルエンザ特別措置法での休業要請に応じて補償はある程度できるのではないだろうか。沖縄の米軍感染も見逃せない。日米安保条約と地位協定が関係している以上、沖縄県に代わって変わって日本政府が交渉する必要があるように思えてならない。