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介護施設でクラスター、応援スタッフで助け合い

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【尊厳ある介護】応援側にも経験値というメリット

公開日: 2021/04/12 (ソサエティ)

【尊厳ある介護】応援側にも経験値というメリット

里村 佳子 (社会福祉法人呉ハレルヤ会呉ベタニアホーム理事長)

 私の施設のある広島県でも、ついに新型コロナウイルスのクラスター発生施設への応援スタッフが実現しました。昨年夏に導入されたスタッフ派遣の仕組みが生かされました。どのように活用されたのか、事例から取り上げてみたいと思います。

 以前のコラムにも書きましたが、この仕組みは広島県と私の所属する広島県老人福祉施設連盟(社会福祉法人が経営する高齢者施設が加盟する組織)が連携して、クラスター発生施設から支援要請があった場合、応援スタッフを派遣するものです。

 まず、事前に連盟の加盟施設が応援派遣スタッフを募り登録することになります。

 広島県老人福祉施設連盟では現在私を含めて、約100名が登録しています。

 2021年1月8日、利用者とスタッフを合わせて7名の陽性者が出た施設から、広島県を通じて応援派遣要請がありました。

 こちらの施設では併設のデイサービスを閉鎖し、そこのスタッフがクラスターの出た施設の応援に行っていました。それでもスタッフが不足し、2週間程度2名のスタッフを感染エリアでない施設に、派遣してほしいと依頼されました。

 そこで、登録しているスタッフの中から応募者を募り、2名の人が1月15日から22日までの期間応援に出かけたのです。

 派遣を要請した施設は1月12日にはPCR検査で、入居者とスタッフ全員の陰性確認が取れたそうです。

 お二人のスタッフは遠方だったので、広島県が用意したホテルに宿泊して派遣先施設に通勤することになりました。

 それまでに、派遣先施設には広島県感染症医療支援チームが派遣されており、ゾーニング(病原体によって汚染されている区域と汚染されていない区域を区分けすること)の確認や指導がされていました。

 その確認や指導の中で、良かった点として挙げられていたのは下記の項目です。

1.   入院していない陽性の利用者はすでにレットゾーン(汚染区域)に隔離し、決まったスタッフで対応していた。

2.   防護具のトレーニングができていた。

3.   ゾーニングのシミュレーションと詳細なマニュアルが作成されていた。

4.   スタッフの健康管理ができていた。

5.   レッドゾーン内で酸素飽和度などの観察が十分に行われていた。

などです。

課題としては、

1.   グレーゾーンの防護具の脱衣場所が狭い。狭い場所で脱ぐと、スタッフが感染する危険性があるので、広いスペースを確保した。

2.   法人内の他部門応援の指示が遅れ、クラスター発生部門のスタッフが連日長時間勤務になった。対策として勤務状況を見える化し、迅速に応援指示できるようと整えた。

3.   感染に対する不安と恐れが要因で、スタッフがストレスを抱えるようになった。こころのケア相談窓口を紹介するなどして対応。

4.   防護具や衛生用品の不足。他機関からの備蓄の配布や寄付などで補充。

5.   応援派遣スタッフの休憩室や更衣室の確保が不十分。

などです。

 他方、応援派遣スタッフは派遣先施設の一日の業務の流れを日課表などで確認していましたが、どこまで業務に関わればよいのか迷ったそうです。

 たとえば、離床介助。決められた時間に利用者を起こそうとした時、「起きたくない」と言われた場合、日課表とおりの時間に起きていただくのか、それとも自分の考えで様子をみても良いのかなどです。施設の方針や利用者ごとに対応が違うのがむしろ普通で、臨時派遣のスタッフはわかりません。介護の業務は人が相手なので、このように決められたとおりに行かないことが多くあり迷うのです。

 今後、応援派遣スタッフ用のマニュアルや指導スタッフの役割について話し合って準備しておく必要があるように思います。

 また、頭を悩ませたのは派遣先施設と応援派遣スタッフのマッチングです。

 事務局である広島県社会福祉協議会が日程調整を担ってくれましたが、派遣要請は急なので、派遣先施設の希望する期間と応援派遣スタッフの応援可能な日程を調整することに手間取ったそうです。

 そのためにも、一人でも多くの応援派遣登録者が必要です。

 応援に行かれたお二人は、有資格者で介護の経験が長く、派遣スタッフとしての要件は十分に備えられていますが、それだけではありません。我が身の感染リスクを恐れず、利他的な志のある人たちです。

 そのお二人に派遣体験の感想をお聞きすると、「自施設でクラスターが発生した時のことを考えると、役に立つことばかりでした。むしろ学ばせてもらいました」と、気負うことなく淡々と話されました。

 派遣先の施設の皆さんも応援派遣スタッフがいたことで、業務の軽減と安心感を得られたと感謝されていました。

 こちらの施設は日頃から感染症に対する意識が高かったので、1月20日デイサービスを含む全施設で通常のサービスを再開されました。

 もし、私の施設からクラスターが発生したら、こちらのように短期間で感染拡大を防止できたか、自信はありません。

 そして、何より感動したのは、日程が合えば応援に行きたいと希望したスタッフとそのスタッフを送り出そうとした施設が少なからずあったという事実です。

 世の中まだまだ捨てたものではありません。

(注)事例は個人が特定されないよう倫理的配慮をしています。
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里村 佳子(社会福祉法人呉ハレルヤ会呉ベタニアホーム理事長)
法政大学大学院イノベーションマネジメント(MBA)卒業、広島国際大学臨床教授、前法政大学大学院客員教授、広島県認知症介護指導者、広島県精神医療審査会委員、呉市介護認定審査会委員。ケアハウス、デイサービス、サービス付高齢者住宅、小規模多機能ホーム、グループホーム、居宅介護事業所などの複数施設運営。2017年10月に東京都杉並区の荻窪で訪問看護ステーション「ユアネーム」を開設。2019年ニュースソクラのコラムを加筆・修正して「尊厳ある介護」を岩波書店より出版。
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