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コロナ禍で施設支えたボランティアが解散

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【尊厳ある介護(110)】周辺の高齢者も参加のふれあいサロンもコロナで休止

公開日: 2020/10/07 (ソサエティ)

【尊厳ある介護(110)】周辺の高齢者も参加のふれあいサロンもコロナで休止

 「私たちも高齢なので、この機会にグループを解散したいと思います」。ボランティアグループの会長さんから告げられました。コロナ禍で施設の活動を控えていた最中での申し出でした。

 私は新型コロナウイルス感染症が収まれば、活動は再開されると思い込んでいたので、驚きと喪失感で返す言葉が見つかりませんでした。

 ですが冷静に考えると、ボランティアさんは75歳以上の人がほとんどです。お元気とはいえ体力的にも精神的にも無理をしていたのかもしれません。そのように自分に言い聞かせながら、グループの解散を受けとめることにしました。
 
 1998年施設開設と同時にボランティアグループは発足しました。メンバーは主にプロテスタントのキリスト教会関係者です。ボランティアさんは、入居者のために施設で定期的にお茶の会を開いてお話を聞いてくださったり、お部屋に閉じこもらないようコーラスや俳句などの趣味の会を開いて関わってくれました。

 入居者からの要望で、洋服のボタン付けやサイズ直し、ほころびの繕いまで行っていらっしゃいました。その細やかな活動を数えると切りがありません。

 しかし、初めからボランティアグループと施設の関係が、円滑にいっていたわけではありません。開設当時は今ほど個人情報が厳しくはなかったので、ボランティアさんと私たちはどうすれば入居者に喜んでもらえるか、立場を越えて協力していました。

 入居者もボランティアさんと親密になり、スタッフにも言えないような悩みを相談したり、個人的なお願い事をする人も出てきました。2005年個人情報保護法が全面施行されたことによって、改めてボランティアさんにも施設で得た入居者の個人情報を守るようお願いをし、スタッフも特別なことがない限り、入居者のことをボランティアさんにお話することを控えるようになりました。

 そのため、ボランティアさんに伝わる内容は、入居者の一方的な情報に偏るようになったのです。ある時、いつもは笑顔のボランティアさんが固い表情でおっしゃいました。「入居者が困っていても、施設は対応しないのですか」。

 どうやら、入居者の誰かが「スタッフに頼み事をしても、受け入れてもらえない」とボランティアさんに相談されたようでした。私は思い悩み、ボランティアメンバーと一緒に、「ボランティアとスタッフの役割について」勉強会や話し合いの場を設けることにしました。

 その席で、お互いの役割の違いやスタッフが常時意識している自立支援の考え方を伝えさせていただきました。スタッフは入居者の基本的な生活を重視したケアが中心になって、生活の質を向上させる関りにまで追いついていないのが現状です。そこをボランティアさんにサポートしていただきたいとお願いしたのです。

 さらに、入居者が求めたとしてもできることまで行うと、一時的には喜ばれたとしても、長期的にはできる能力を奪うこともあると説明したのです。その後ボランティアさんは入居者の相談や悩みを共感して傾聴はしても、ボランティアさんの役割の範囲を越えた場合は、スタッフに相談してくださるようになりました。

 2004年ボランティアグループは地区社会福祉協議会と協働で私たちの施設で「ふれあいサロン」を開催し、活動の幅を拡げました。ふれあいサロンは、月に1度65歳以上の人が集まって、講師を招いて勉強会・手工芸・体操・ゲームやおやつなどを楽しむ集会です。

 行き場の少なくなった地域の高齢者の受け皿となって、憩いの場を提供していました。多い時には40名以上集まり、席が足りないことさえありました。ところが、この16年続いたふれあいサロンもコロナ禍で中止となりました。

 このように地域からさまざまな活動がなくなると、閉じこもったり、精神的に不安定になったり、認知症が進んだり、足腰が弱って要介護状態になる高齢者が増えるのは必至です。だから、目の前の新型コロナウイルス感染症防止策だけでなく、それに伴う2次被害にも備えておかないと、介護の問題はますます社会を圧迫するように思えてなりません。

 喪失は一瞬ですが、創造には時間がかかるのです。

里村 佳子 (社会福祉法人呉ハレルヤ会呉ベタニアホーム理事長)

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里村 佳子(社会福祉法人呉ハレルヤ会呉ベタニアホーム理事長)
法政大学大学院イノベーションマネジメント(MBA)卒業、広島国際大学臨床教授、前法政大学大学院客員教授、広島県認知症介護指導者、広島県精神医療審査会委員、呉市介護認定審査会委員。ケアハウス、デイサービス、サービス付高齢者住宅、小規模多機能ホーム、グループホーム、居宅介護事業所などの複数施設運営。2017年10月に東京都杉並区の荻窪で訪問看護ステーション「ユアネーム」を開設。2019年ニュースソクラのコラムを加筆・修正して「尊厳ある介護」を岩波書店より出版。
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