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必需品のエレベーターだが、水害対策も必要

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【尊厳ある介護(108)】コロナ禍の真っただ中、念願のエレベーター改修

公開日: 2020/09/09 (ソサエティ)

CC BY CC BY /Jason Hargrove(cropped)

里村 佳子 (社会福祉法人呉ハレルヤ会呉ベタニアホーム理事長)

 改修工事が終わった新しいエレベーターを前にして、施設入居者と私たちは感無量でした。

 これまでのエレベーターは、部品を取り換えて修繕をしながら22年間使っていましたが、問題を抱えていたのです。

 その一つは機械室が1階にあることです。

 西日本豪雨災害時には、機械室が雨水で浸水し、エレベーターが使用できなくなるのではないかとはらはらしたものです。それだけではありません。
エレベーターが急に停止をして、入居者が閉じ込められたこともあったのです。

 その日のことは忘れようにも忘れられません。

 夕方、スタッフから「エレベーターの調子がいつもと違います」と、報告を受けました。あわてて行って見ると、丁度外出から帰った入居者の橋田保美さん(仮名86歳)がエレベーターに乗ろうとしていたところでした。

 すぐに「乗らないでください」とお声をかけたのですが、一足違いで橋田さんを乗せて動き始めました。胸騒ぎがしたので、エレベーターを追いかけ走って階段を上がりました。

 すると、ガタンと大きな音がして停止したのです。

 その音で一瞬頭が真っ白になりましたが、身体が反射的に動いてエレベーターの保守会社に連絡をするとともに、非常用の電話で橋田さんに安否の確認をしていました。

 橋田さんは落ち着いた声で、「大丈夫。飲み物もあるから」と、答えてくださいました。

 その声を聞いて少しは安堵したのですが、保守会社のスタッフが駆けつけてくれるまでの時間が長いこと。

 橋田さんの体調が急変した場合を考えて、消防署にも連絡をしました。

 変わったことがあれば救急隊員が来てくれることになりましたが、救出のためエレベーターのドアを無理にこじ開けると、その後使用できなくなる期間があると言われます。

 しかし、橋田さんの生命が優先です。何度も橋田さんを励ましながら、声が弱々しくなったら、救急車を要請しようと考えていました。

 1時間が過ぎた頃でしょうか。

 保守会社のスタッフが来ましたが、直ぐに救出できるのかと思いきや思いのほか時間がかかり、何と3時間近くエレベーターの中に閉じ込められたのです。

 やっとエレベーターから出で来た橋田さんを見て、私は思わず泣きじゃくりながら抱きついていました。

 ところが、そんな私を横目に橋田さんは一言、「お腹がすいた」とおっしゃったのです。

 さまざまな苦労を経て生きてきた高齢者の肝の据わり方に比べ、自分の未熟さを知らされた長い一日でした。

 そんなこともあって、数年前からエレベーターのリニューアルを計画していました。

 施設は9階建てなので、高齢者が生活する上で、エレベーターは必須です。もし、何らかのアクシデントでエレベーターが使えなくなれば、入居者の生活は成り立たなくなって、パニックに陥ります。

 入居者のことを考えると先手を打つ必要がありますが、最大の難題は改修期間の入居者の居場所の確保です。

 仮設住宅を建設したりホテルを借り上げたりするなどいろいろな案を検討しましたが、予算やスタッフの配置基準がクリアーできず、計画は困難を極めていました。

 そこで、入居者やご家族にアンケートを実施し、話し合いの場を設けることしました。

 そして、エレベーターを使用しなくても生活できる入居者は、これまで通り施設で過ごしていただくことになりました。

 ですが、入居者の身体の負担を考えて、階段を利用する回数を減らすため、スタッフが食事を居室に運んだり、買い物代行をしました。

 エレベーターを使用しないと生活できない入居者は、ショートステイを利用したりご家族の元で過ごされたりしました。

 この機会に、寝たきりになっても過ごせる施設に住み替えをした入居者もいらっしゃいました。

 計画時予想もしなかったコロナ禍での工事になりクラスターを心配しましたが、関係者全員守られて完了しました。

 新しいエレベーターは機械室レスです。そのため、水害に強くなりました。

 さらに、エレベーター内のスペースも広くなったので密を防ぎやすくなりました。しばらくはエレベーターから解放されそうです。


(注)事例は個人が特定されないよう倫理的配慮をしています。
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里村 佳子(社会福祉法人呉ハレルヤ会呉ベタニアホーム理事長)
法政大学大学院イノベーションマネジメント(MBA)卒業、広島国際大学臨床教授、前法政大学大学院客員教授、広島県認知症介護指導者、広島県精神医療審査会委員、呉市介護認定審査会委員。ケアハウス、デイサービス、サービス付高齢者住宅、小規模多機能ホーム、グループホーム、居宅介護事業所などの複数施設運営。2017年10月に東京都杉並区の荻窪で訪問看護ステーション「ユアネーム」を開設。2019年ニュースソクラのコラムを加筆・修正して「尊厳ある介護」を岩波書店より出版。
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