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マスク着用を拒否する利用者、どう対応

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【尊厳ある介護(117)】要求に応じ介護者にPCR検査したり、試行錯誤

公開日: 2021/01/13 (ソサエティ)

CC BY CC BY /focusonmore.com

里村 佳子 (社会福祉法人呉ハレルヤ会呉ベタニアホーム理事長)

 「馬木恒雄さん(仮名82歳)に何度お願いしても、マスクを外して大きな声で話されます」。介護スタッフは管理者に相談しました。

 その上、時には怒って「そんなにマスク、マスクと言うのなら家に帰る」と言って席を立つそうです。

 その繰り返しなので、ケアマネジャーやご家族にマスクを着用するよう説得してもらったのですが、効果はありませんでした。

 馬木さんは妻と死別し、独居生活を送っていました。昼間一人でいるのを心配したご家族の勧めで、長年デイサービスを利用していました。

 物忘れは少しありますが、理解力がないわけではありません。人懐っこい性格でお話が好きです。

 新型コロナウイルス感染防止ため、スタッフがマスクの着用を言わなければ、大きなトラブルもなくデイサービスを利用されていたのです。

 だから、私たちはどのように対応すれば良いのか迷いました。

 話し合った結果、機嫌を損ねたとしても根気よく感染の影響を説明し、マスクの着用をお願いすることにしたのです。

 もし「家に帰る」と言われたら、ご自宅まで送ることにしました。私たちはきちんとマスクを着用している利用者の安全と安心を優先したのです。

 そして、この決断は他の利用者やご家族の信頼を損なうものではないと、確信しました。

 そんなある日、いつものように馬木さんがマスクを外して、大きな声でお話していました。つかさず、介護スタッフがマスクの着用をお願いすると、案の定「家に帰る」と激怒されました。

 そこで、「それでは家にお連れしましょう」と誘うと、目を丸くして黙ってマスクを着用されたそうです。

 ですが、認知症なのでマスクを外してしまう利用者もいます。

 岩村早苗さん(仮名91歳)は重度の認知症です。マスクを外して大きな声で独り言を言われるので、このままだと他の利用者に迷惑をかけてしまうのではないと、介護スタッフは困っていました。

 あれこれ考えた末、パーテーションで部屋を仕切って飛沫が飛ばないような環境を整えることを思いつきました。

 加えて、伝わるかどうかは別として、あきらめないでマスクの必要性を話して、着用を促すようにしました。

 さらに、利用者にマスクの着用を求めるだけでなく、自ら進んでマスクを着けたくなるレクリエーションを考えました。

 利用者と一緒にアップリケやシールをマスクに貼って、オリジナルのマスクを作成するのです。

 自分で作った世界で一つのマスクなので、着けたくなるはずです。

 もう一方で、東京の訪問看護ステーションでは、木村月江さん(仮名81歳)から看護師にPCR検査を実施して欲しいという要望がありました。

 「看護師は毎日健康チェックをしています」と、説明しても納得されません。「どうしてもPCR検査を受けないのであれば利用を控えます」と、思いつめておっしゃいます。

 訪問看護を利用する高齢者は複数の基礎疾患を持っている人が多くいるので、感染への不安は理解できます。

 他の利用者はそこまで要望されてはいませんでしたが、管理者は担当の看護師にPCR検査を受けてもらいました。

 陰性でしたが、明日は感染するかもしれないので、木村さんの不安が完全に解消したわけではありません。

 求められるPCR検査の頻度によっては、利用をお断りする可能性も出てきます。看護師たちは木村さんの体調を考えて悩んでしまいました。

 ところが、PCR検査をしたことで安心されたのか、それとも看護師たちの気持ちが通じたのか、それ以上のことは求められなかったのです。

 コロナ禍で介護現場はこれまで体験しなかった難題に見舞われています。

 従来の価値観や方法で解決しようとしても、通用しないことが少なからずあるのです。

 実際、密になるので利用定員を削減したり、マスクを着用ができない重度の認知症利用者ばかりなので、事業を閉鎖したりする事業所もあると耳にします。

 そのため必要なのは、確固としたミッションを礎に、価値観や方法を再構築できる変化に強い組織風土です。

 しかし、直ぐにそんな組織風土はできるものではありません。

 だから、私たちは日頃から課題や問題を見つけては改善を繰り返し、どんな難題にぶつかっても対応できる能力を高めているのです。


(注)事例は個人が特定されないよう倫理的配慮をしています。
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里村 佳子(社会福祉法人呉ハレルヤ会呉ベタニアホーム理事長)
法政大学大学院イノベーションマネジメント(MBA)卒業、広島国際大学臨床教授、前法政大学大学院客員教授、広島県認知症介護指導者、広島県精神医療審査会委員、呉市介護認定審査会委員。ケアハウス、デイサービス、サービス付高齢者住宅、小規模多機能ホーム、グループホーム、居宅介護事業所などの複数施設運営。2017年10月に東京都杉並区の荻窪で訪問看護ステーション「ユアネーム」を開設。2019年ニュースソクラのコラムを加筆・修正して「尊厳ある介護」を岩波書店より出版。
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