東京都渋谷区は、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認め、証明書を発行するなどの条例案を、来月区議会に提出します。施行されれば自治体が同性同士をパートナーと認める全国初の制度になります。
条例にはパートナーシップ証明のほか、男女および性的少数者の人権の尊重、男女平等・多様性社会推進会議の設置が盛り込まれる見通しです。4月1日施行の予定です。条例に法的な強制力はありませんが、条例に反する事業社名の公表も条例案にはあり、実効性にも配慮した内容です。
同性カップルはどんな偏見に苦しんできたのでしょうか。たとえば、親族以外の立ち入りを断る集中治療室でパートナーに面会できない、賃貸住宅の選択肢が大幅に限られるなどの不都合に直面していたようです。
こうした事態を改善しようと、渋谷区区議会では長谷部健区議と岡田麻理区議が中心となってLGBT(性的マイノリティ)の人権尊重実現に向けて活動してきました。2012年6月には長谷部健区議が同性パートナーに対して証明書の発行を提案し、さらに2014年6月、「渋谷区多様性社会推進条例(仮称)」の検討会において、岡田麻理区議が再度パートナーシップ証明書を提案しています。
岡田区議は自身もLGBTの人々との交友があるといい、渋谷区内に多く暮らすLGBTの人が当たり前のことをできるよう、区議会として何ができるか考えていたといいます。岡田区議は「(東京)オリンピック・パラリンピック開催に向けてバリアフリーなどのインフラ整備が進められているが、多様性の認められる社会も実現したい。何としても条例案を成立させ、この動きが他の自治体や国にも広がってほしい」といいます。
渋谷区以外にも、既に複数の地方自治体が啓発活動やLGBTの人々のための交流イベントなどで独自に問題に取り組んでいます。大阪市淀川区では2013年9月に「LGBT支援宣言」を発表し、相談の電話やコミュニティスペースの開放、LGBTの人々と区職員の意見交換会などを行っています。東京都世田谷区では2011年から学生サークルによる「LGBT成人式」が開催され、区議会議員も出席しています。
2012年に電通が約7万人を対象に行った調査によれば、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)は回答者全体の5.2%にのぼります。生物的な性別と心の性別が一致しないトランスジェンダーが4.1%で最も多く、レズビアン(女性同性愛者)が0.1%、ゲイ(男性同性愛者)が0.3%、バイセクシュアル(両性愛者)が0.7%でした。