同性のカップルが行政から認定を受ける制度は、渋谷区に続いて全国で2例目である。しかし、この「認定」の仕組みにはいくつかの相違点も存在している。渋谷区と世田谷区、この2つの区の差は何であろうか。
両区の最大の違いは、条例化されているか否か。渋谷区の条例案は、今年3月の区議会において、議会の承認を受けている。「ダイバーシティ社会の構築」を全面に押し出した条例で、渋谷区・区議会の総意であるといえる。一方、世田谷区は「要綱」にとどまった。今回の要綱は、同性カップルの宣誓書を区として認めるといった文言をまとめたものだ。区議会にも、要綱案時点で「報告」したに過ぎない。
認証の効力で違いはあるだろうか。渋谷区は区として同性のカップルを認定するだけではなく、区の公営住宅などの入居の際、証明書があるカップルは、異性のカップルと同じような手続きで入居が可能としている。また、条例に違反する「レズ・ゲイはお断り」などをうたっている事業所に対しては、事業者名を公表するなど「差別」を抑制する制度になっている。
世田谷区の認証にはこのような「罰則」規定はない。議会を通過した条例ではないため、あくまで区長権限の範囲にとどまり、法的拘束力もない。今回の「宣言書」は、社会全体へのLGBT(性的マイノリティ)の啓発活動の一環といった域を出ない。
両区にこのような違いが出たのはなぜだろうか。世田谷区は、今回条例化をしなかった理由について、法解釈の問題があるとしている。現在、憲法24条では「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」とされている。
渋谷区の条例は同性パートナーの認定としているが、事実上の同性婚の認定と報じられていることもあって、自民党の議員などから疑問視する声もあがっている。世田谷区議会には、条例化に慎重な保守系議員もおり、迅速に制度を実現するため「要綱」という形を取った。将来の条例化などは現時点では検討されていない。
認証のための手続きはどうなるのだろうか。渋谷区は、早ければ10月、遅くても年内の発行を目指している。世田谷区の発行は11月ごろになるとみられている。両区とも手続きの場は区役所で、カップルがふたりそろって出向き、意思を表明する形をとるとみられる。渋谷区は双方が互いの後見人となる契約が必要で、そのための費用が発生する見込みだ。
2つの区には、全国の自治体・個人から、問い合わせが相次いでいる。世田谷区には、今回の動きについて賛否両論の電話が寄せられている。都内23区内の豊島区、文京区、杉並区などは興味を示しているという。
